武術の授業
あの日から数日が経ち、僕は穏やかな学園生活を送っている。
授業の内容はまだ簡単なものばかりだけど、友達と過ごす学園生活はとても楽しくとても充実している。
今日は新たに武術の授業が始まる。この学園では男子なら武術、女子なら裁縫が必修である。
他にもマナーの授業やダンスの授業など貴族の生徒が多いこの学園では社交界デビューに向けて必要な技能の向上もカリキュラムに組み込まれている。
武術の授業に関しては学園を卒業後に軍に入隊する生徒も多いのに加え最低限の防衛能力獲得のためでもある。
貴族家の次男以降は家を長男が継ぐ場合がほとんどのため、軍や文官に進むものが多い。
そのため、この学園では様々な競争が起こる。
将来、文官になりたいものは学力テストの上位は必須事項であるし、学年首席で卒業となったら出世街道間違いなしと言われている。オズ先生は俺は入学してから卒業するまでずっと首席だったぜとよく自慢されていた。
武術に関しても定期的に模擬試合が行われ、長期休みの後には学園内で武術大会も行われる。1、2、3年生の低学年部門と4、5、6年生の高学年の部門がある。やはり軍の名のある方々は皆、歴代の優勝者が多いらしい。僕の武術の師であるウィル先生はなんと学生時代に2年生から5連覇を達成したと言っていた。6連覇目指して頑張ってくれと発破をかけられてしまった。
あの時は無理ですよとはぐらかしたけど、今では目指してみようかなっていう自分がいる。
そして今日がその始まりになる。
武術の授業は学園にある練武場で行われる。
「俺が武術の講師を務めるガイウスだ。よろしく頼む。君たちにはまずは基礎を教える事になるんだが、この中でこれまで武術の訓練を受けたことがある者はいるか?」
先生の質問に何人かの生徒が手を挙げた。僕もその一人だ。
「結構いるなぁ。手始めに武術はこういうものなんだということを知ってもらいたい。それには見てもらうのが一番早い。さすがに俺と君たちの誰かとの模擬試合を見ても意味がないから誰か経験者同士で模擬試合をやってほしい。もちろん当てるのは無しだ。寸止めで頼む。誰か立候補者はいるか」
先生の言葉に勢いよく一人の生徒が名乗りを挙げた。
「はい先生! 俺やりたいです」
彼は自信満々に先生に訴えた。
「確かアレックスだったか。よしわかった。一人目は君だ」
アレックス? 確か自己紹介の時、最初にした人で確か家は武門の名家だった。彼は武術で一番になるって言っていた。
「もう一人誰か立候補はいないか?」
先生の声に周りの生徒たちは『相手はアレックスだろ』『あいつむちゃくちゃ強いんだよ』『みんなの前で恥かくの嫌だ』とか話していた。
どうやらアレックスは同世代の中では抜けているようだった。
それを知った僕は急に闘ってみたくなった。ウィル先生との鍛練である程度上達している事は分かっているが今の僕がどれくらいの位置にいるのかわからない。これはいい機会かもしれない。
僕はそう考え付くと自然と手を挙げていた。
「やってくれるか。えーっと、確かトーラスだったな。それでは模擬試合はアレックスとトーラスにやってもらう。二人は準備してくれ」
先生がそう言うと僕とアレックスは準備運動がてら軽く打ち合った。準備運動の最中もアレックスはやる気に満ち溢れていて勝つ気満々って感じだった。体も暖まったところで模擬試合が開始された。
「もちろん剣には当てていいが体には絶対に当てるなよ。それでは始め!」
開始早々にアレックスの猛攻が始まった。練武室に剣と剣の打ち合う音が木霊する。
アレックスの剣さばきはなかなかではあったけど、ウィル先生に教わっていた僕にしてみたらさばくのは簡単だった。アレックスはなかなか僕を崩せなくて段々攻撃が荒く大振りになってきた。
その隙を見逃さず僕は思いっきり剣を振った。すると、アレックスの手から剣が弾き飛ばされた。アレックスは呆然と剣の行方を目で追っていた。
「そこまで。勝負あり。勝者はトーラスだな。見事に隙を見逃さなかったな。なかなかの使い手だな。びっくりだよ。アレックスもすごくよかったぞ。さすがだな」
僕は先生の言葉にこれまでやってきた成果を感じ嬉しかった。反面、アレックスは先生の言葉も聞こえないくらい呆然としていた。
その後、授業に戻り武術の基礎をしっかりと学んだ。授業後にはたくさんのクラスメイトから賛辞をもらいすごく嬉しかった。
しかし、アレックスに声をかけると無視されてしまった。こうして初めての武術の授業が終わった。




