忠誠を誓うものたち(リネット視点)
リネット視点です。
私の名前はリネットという。
実家はカルベリー男爵家の使用人の一族の次女として生まれた。
小さい頃から私の未来は決まっていた。侍女としてのスキルを学び、将来、カルベリー男爵家に仕えること。
疑問に思うこともなかったし、私は一生懸命頑張った。執事や侍女を養成する学校にも通わせていただき技術を高めていった。
学校でも優秀な成績を修める事ができた。
そして、卒業が迫ったある日、私は学校の先生に呼ばれた。そこで私に王宮で侍女として働かないかと誘われた。私はすごく光栄な事だと思ったが保留させていただくて事になった。その間に父に手紙を出し報告した。するとリネットが行きたい道に進みなさいと言ってくれた。
私は悩みに悩みに悩みぬいて王宮でお世話になることにした。王宮で学んで将来的に男爵家に戻り生かそうと思った。
働き始めた私に待っていたのは苦労の連続だった。行儀見習いで来ている貴族の娘は仕事をさぼったり、仕事を押し付けたり、有力貴族の使用人の一族出の女性は威張り散らしていたり、いじめは日常茶飯事だった。
私はこの頃、王宮にきた事を後悔していた。私は最初第二妃付き侍女に配属されたが、主に第二妃様のお子様の第二王女様のお世話をするのが仕事だった。王女様は周りからちやほやされて育ちとても我が儘な女の子だった。私も無理難題を何度も言われた。
そして、ついに私は耐えられなくなり侍女長に転属を申し出た。
最初は渋られたが最終的には第三妃付きに移動となった。私は今回の妃様はどんな方だろうか? お子様どんな方だろうか? と不安になりながらお部屋に向かった。部屋に着くと私以外の侍女は一人いるだけでとても静かだった。
「本日より第三妃付き侍女になりましたリネットと申します。よろしくお願いいたします」
私は不敬を買わないように丁寧に挨拶をおこなった。すると
「リネットね。よろしくね。私の事は名前で読んでちょうだい」
すごく優しい声だった。笑顔も素敵で、すごく安心したのを覚えている。
それから日々、前とは比べ物にならない侍女生活を送れている。リディア様の侍女は私含めて二人しかいなかった。しかし先輩侍女のレナさんはとても優秀な方で私にとってとても勉強になった。
ある日、私はずっと疑問に思っていた事をリディア様に聞いてみた。
「リディア様にはお子様がいらっしゃるとお聞きしています。私はまだお顔を拝見していないのですがどちらにいらっしゃるのでしょうか?」
そうなのだ。前回のこともあり妃様だけではなくお子様についても私はとても警戒していた。
しかし、私がリディア様付かき侍女になってから1度も顔を合わせていないのだ。確か男の子で第三王子である。
私の言葉にリディア様は顔を下に向けた。そんなリディア様を見てレナさんが言った。
「リディア様とお子様のトーラス様は一緒に住んでおりません。これ以上はあなたの知るところではありません。控えなさいリネット」
レナさんの怒気をはらんだ声が部屋に響いた。
「出過ぎた事をお聞きしました申し訳ございません」
私は頭を下げ部屋を後にした。
その後もいつも通りの生活が続いていたある日、侍女長に呼び出された。
何事かと思い、緊張した面持ちで部屋に向かうと中に私の知っている方が座っていた。
「リネット、久しぶりね。元気にしてるかしら。ここに座ってちょうだい。あなたに話があるの?」
そこにいたのはマアサ様だった。マアサ様はカルベリー男爵家のご息女で今は伯爵家に嫁がれ伯爵夫人のはずだ。なぜ王宮におられるのだろうか? しかも姿を拝見すると、侍女服をお召しになっている。
私はいろいろ疑問に思いながら挨拶をした
「マアサ様、お久しぶりでございます。王宮では日々精進させていただいております。マアサ様もご健勝のようで嬉しく思います。それで私にどういったご用件でしょうか?」
「私が王宮にいるのに驚いていると思うのだけど、私は今第三王子付き侍女をしているの」
マアサ様の言葉に私はびっくりした。
伯爵夫人であるマアサ様が王宮で侍女。貴族の夫人が王宮に上がり王子・王女の教育係りになることはあるけど、侍女になる事はほぼ前例がないだろう。私のびっくりした顔を見ながらマアサ様は話を進めた。
「本題なんだけど、私はあと少ししたら、家に帰らないといけないの。だから私の代わりにリネットに第三王子であるトーラス様付きの侍女になってほしいの。どうかしら?」
私が第三王子の侍女? 私は考えた。第三王子に会った事がない。どんな人だろうか? 第二王女の事があり私は少し警戒していた。即決することが出来ず保留させてもらいリディア様の元に戻った。
考える時間を一週間もらい、普段通りリディア様の元で働いていた。
するとある日、リディア様に問われた。
「リネット、何が悩みでもあるの? 最近仕事に身が入ってないように見えるわ。相談なら聞くわよ」
もうリディア様に直接、トーラス様の事について聞くしかない。
「少し前に侍女長に呼ばれてそこにいらしたマアサ様から第三王子付き侍女になってほしいと頼まれました。どうするべきか悩んでおりました」
私の言葉にリディア様は私に近づき、肩を掴まれた。その手は震えておられた。
「お願いリネット、その話受けて欲しいの。トーラスを側で支えてほしいの。私にはレナいるから大丈夫。だからあなたにはトーラスの元に行ってほしいの」
リディア様の悲痛な叫びにリディア様の第三王子に対する愛情がふつふつと感じられた。
本当はリディア様は王子と暮らしたいんだ。でも出来ない状況にあるんだと私は感じた。
私はリディア様の侍女になって救われた。なら今度は私がリディア様を助ける番だと思った。
「かしこまりました。王子殿下に誠心誠意お仕えさせていただきます」
私の言葉にリディア様は泣き崩れて喜んでいた。
そして、私はマアサ様に了承の返事をしてリディア様とレナさんに別れの挨拶をして第三王子付き侍女となった。
初めてトーラス様と会った時、真っ先に感じたのはただただ素晴らしいお方だということだった。まだ10歳の男の子とは思えないほど落ち着いていて、かけられた言葉はとても感動した。流石はリディア様のお子様だと思った。
私はいつか男爵家に帰るつもりだった。でもトーラス様に出会い、この方に全てを捧げようと心に誓った。王宮にきて良かったと本当に思った瞬間だった。
次から学園編に突入します
1月23日、1~24話の行間や無駄な言葉を修正。




