救われた少年(ウィルフリート視点)
ウィルフリート視点です
私の名前はウィルフリート・ルッテンベルクという。
ルッテンベルク侯爵家の長男として生を受けた。
家は代々武門に秀でた家系で一族の者は皆将来軍に入って上を目指す。今の当主である父もこの国の将軍にして軍務大臣を務めている。
私もそんな父をずっと見てきたので小さい頃から武術の鍛練を欠かすことはなかった。周りの同世代の子供の中では頭一つ抜けている自信があった。今思えば私は天狗になっていた。
その状態のまま学園に入学した僕は同級生を見下していた。僕に敵うものはいない。逆らうものがいれば黙らせればいいと思っていた。
今思い返しても本当に嫌なやつだったなぁと思う。
そんな時、僕は一人の少女に出会った。いつものようにクラスの平民の子どもに不遜な態度を取っていたら少女が僕に対して怒鳴りつけてきた。
「あなた何様のつもりなの! 入学してからずっとデカイ顔してみんなを見下してクラスメイトをなんだと思っているの! ただ少し力が強くて体力があるだけのあなたが私たちと何が違うっていうのよ」
僕は彼女が言ってる事の意味がわからず怒鳴り散らした。
「違うさ。俺は武門の名家ルッテンベルク侯爵家の跡取りだぜ。将来は将軍になる男だ。お前らと一緒にされるなんて屈辱だ。訂正しろ!」
「あなたバカなの? 今のあなたは何の功績もあげてないただの子供でしょ。何もしていない貴方はただ家の力を傘に来てわめき散らしているだけのお子様よ。恥ずかしくないの? 今のあなたが将来、将軍になれるなんて思わないわ。違うでしょ。将軍っていうのは誰からも認められる素晴らしい人がなるものなの。あなたのように人を蔑み誰からも敬われない人がなれるものではないわ。あなたが本当に将軍になりたいなら誰からも慕われる人間にならない駄目よ。今ならまだ間に合うわ。私たちはまだ子どもなのだから。あなたにその気があるなら皆に謝ってやり直そうよ」
僕は彼女の言葉に唖然としていた。
ずっと僕は力で人を黙らせればいいと思っていた。人は強い者についてくると思っていた。しかし、彼女に言われて周りを見渡すとみんな私の事を冷たい目で見ていた。その瞬間やっと私は気付く事が出来た。自分は間違っていた事を。気付いてしまうと今まで自分がやってきた事を思い出し恥ずかしくなってきた。僕は彼女の方を見て言った。
「僕は変われるかな? 皆、こんな僕を許してくれるかな?」
「それはこれからの行動次第よ。あなたが変わった所を見せ続けて皆の信頼を回復するしかないわ」
「皆、たくさんの迷惑をかけてごめんなさい。これから僕は君達の信頼を回復出来るように努力する。だから少しだけでいい。僕を見ていてほしい」
僕の言葉にクラスメイトは皆頷いた。そんな僕を見ていた彼女が言った。
「まぁぎりぎり合格点なんじゃない」
彼女の言葉にクラス中で笑いが起こった。
私はやり直す事が出来そうだ。それもこれも彼女のおかげでだ。
この時、私は彼女に恋をした。私を諌めてくれて正しい道に戻してくれた彼女の事を。
その後、彼女に名前も覚えていなかったので聞いたら呆れられた。
「マアサよ。まずはクラスメイトの名前を覚えるのが先みたいね」
マアサかぁ。いつか僕は君に相応しい男になってみせる。そう心に誓った。
それから努力を重ね続くたが、結果的には恋は叶わなかった。
でも彼女のおかげで最高の学園生活を送る事が出来た。時間はかかったけどクラスメイトとも仲良くなれた。そして今、近衛隊に入り日々精進している。
学園での時間は人生にとってとても貴重だ。
今、僕の前にいる少年と話をしながら昔の思い出が思い出された。
彼はこの国の第三王子である。
彼との出会いは偶然であった。縁あって今、僕は彼に武術を指南している。彼はなぜ武術を覚えたいのかとという問いに大切な人を助ける力が欲しいと言ってきた。私は本当にびっくりしたんだ。あの愚かだった自分より若い10歳の少年が言った言葉に心打たれた。彼と共に鍛練したら僕自身も成長できると思った。日々成長していく彼をみながら自分の考えが正しかったと実感出来ている。彼は将来すごい人間になると思う。その手助けを出来ているだけ私にとって素晴らしい経験になっていると思う。彼が学園に入学するまであと少し私の出来うる限りの事を教えたい。そして彼に言いたい。学園生活を楽しんで欲しいって。必ず運命の出会いが待っているはずだから。僕がマアサに会ったように、僕は願っているんだ。




