さよならは言わない
ついにマアサが王宮を去る日がやってきた。
僕は行かないで欲しいという思いをマアサに悟らせないために毅然とした態度でいようと決めていた。
そしてマアサが別れの挨拶にやってきた。
「トーラス様、1年間という短い間でしたが本当にトーラス側にいられて私は幸せ者でした。これからトーラス様は様々な事を経験なさると思います。楽しい事や辛い事もたくさんあるでしょう。しかし私は心配していません。今のトーラス様でしたどんな事が起きようとも乗り越えられると私は信じています。私が言いたい事は一つです。トーラス様は素晴らしい御方だということです。努力を厭わず何事にも一生懸命で笑顔を絶やさず臣下にもお心を尽くされています。そして殿下はあの絶望的な状況を自らの力で乗り越えられるお心の強さがあります。トーラス様、お体に気をつけてください。私はトーラス様のお側を離れますがトーラス様の未来が明るく照らされていく事を祈っております」
マアサの言葉に行かないでくれという言葉が出そうになったがそれをのみこみ
「マアサの献身一生忘れない。マアサがいなかったら今の僕は存在しない.僕にとってマアサはもう一人の母上も同然だ.次に会うときまで僕は立派な人間になってみせる.王子として民を敬い、民から敬われるような人間になってみせるよ」
僕の言葉にマアサのめから涙が流れてきていた。僕もつられて泣いてしまった。
「すまない。マアサ。絶対に泣かないと決めていたのに。笑顔で送り出そうと思っていたんだけどね。でもマアサ、さよならは言わない。だってこれが今生の別れではないからね。またいつか会う日まで健康に気をつけてね。最後に我が儘を言っていいかな。抱き締めてくれないか?」
「不敬になりますが、私もトーラス様の事を実の息子のように思っています。本当は王宮を離れたくない気持ちもあります。でも私には待ってくれている家族がいます。そして殿下は私がいなくても大丈夫だと。とてもお強くなられました。決して一人で抱え込まないでください。トーラスはもう一人ではありません。12歳になられたらトーラス様は学園に入学なさいます。そこでは様々な人との出会いがあります。一つ一つの出会いを大切になさってください。その一つ一つがいつかトーラス様の助けになると思います。学園はそういう場所だと思います。長くなりましたがこれにて失礼させていただきます。」
そういうとマアサは僕に深々と頭を下げて部屋を出て王宮を出て家に帰っていったのだった。
次回はマアサ視点になります。




