出会えることが出来た幸運
朝、ノックの音で目が覚める。
「トーラス様、時間でございます。起きていらっしゃいますか?」
「起きてるよ。入って」
「おはようございます。よくお眠りになられましたか?」
「あぁよく眠れたよ。万全の態勢で挑めそうだよ」
「それはようございました。お弁当は用意しております。着替えられたらすぐ出発できますのでお手伝いさせていただきます」
「よろしく頼む」
僕は言うとマアサはてきぱきと準備を始め僕の出かける準備を整えてくれた。
「お着替え終了しました。出発なさいますか?」
いよいよ始まるんだ。胃までは僕はとてもうきうきしていた。
「すまないが、近衛隊舎まで案内お願いできるかな?」
僕は今になって近衛隊舎の場所がわかっていないことに気付きマアサにお願いした。
「もちろんでございます。私も武術の先生に挨拶をしたいと思っておりました。よろしいですか? お弁当も二人分用意させて頂いております」
本当にマアサはとてもよく気が利いて素晴らしい人だなぁと思った。
「もちろんだよ。それでは案内頼むよ!」
そしてマアサと共に部屋を出て近衛隊舎に向かった。訓練所に着くと、すでにウィルフリート先生の姿があった。額に汗がにじんでいた。先に鍛練されていたのだろうか?
「おはようございます! 今日からよろしくお願いします。連れのものが挨拶させていただきたいのですがよろしいですか?」
僕がそういうとウィルフリート先生はとても驚いた顔をしていた。ウィルフリート先生の視線の先のマアサを見るとこちらも驚いた顔をしていた。
二人は知り合いなのだろうか? 僕が疑問に思っているとマアサが口を開いた。
「ウィル、あなたがトーラス様の武術の先生なの?」
マアサはウィルフリート先生の事を愛称で呼ぶくらいの知り合いみたいだ。続いてウィルフリート先生が口を開いた。
「マアサ、どうして君がトーラス君と一緒にいるんだい。もしかして君が武術を教えてあげてほしい人がいるって言っていたのはトーラスくんの事かい?」
ウィルフリート先生の言葉で僕はやっと理解出来た。マアサの断られたっていう人がウィルフリート先生の事だったのか。
「そうよ。まさか殿下の言っていた先生がウィルだったなんて本当びっくりよ。どこで知り合ったの?」
マアサはびっくりしすぎたのか殿下呼びに戻ってるよ。その殿下という言葉に先生が反応した。
「殿下って何だい? そういえばマアサが王宮にいるのは第三王子の侍女をするためだったね。ということはトーラス君はその第三王子かい?」
僕は先生に正体がばれてしまって正直焦っていた。面倒くさいと思われないだろうか?
「そのとおりですよ。トーラス様は第三王子でリディアの息子よ」
マアサの口から母の名前が出て僕はびっくりした。マアサと母は知り合いなのだろうか?
「リディアかぁ。懐かしいね。今は妃様になって遠い存在になっちゃってけど。そうかぁ。彼女の息子かぁ。時の経つのは早いなぁ」
僕は何が何だかわからなくなっていた。
「殿下黙っていて申し訳ございません。実はトーラス様の母君のリディア様と私は学園時代からの親友でしてここにいるウィルともすごく仲がよかったんです」
マアサの言葉に僕は言葉を失った。
母とマアサが親友……ということはマアサが僕の侍女をしているのは母が何か言ったからだろうか? でもそんなはずない。あの母がそんな事するはすがない。今は忘れよう。
「マアサ、今日の夜に少し話をしたいんだけどいいかな?」
やっぱりマアサがなぜ僕の元にいるのか聞きたい。
「かしこまりました。夕食の後にお時間を取らせていただきます」
僕とマアサが話をしているとウィルフリート先生が話に入ってきた。
「お話し中悪いんだけどこうしている間にも時間は過ぎているんだよ。始めないのかい?」
「僕は第三王子ですが、それでも指導してくださるんですか?」
「もちろんトーラス君が王子様だとわかって驚いているよ。もちろん王宮で君が何て呼ばれているかも知っているよ。でも僕が最初に出会ったトーラス君は王子のトーラス君じゃない。大切な人を守りたい。守れる力が欲しいと言っていたやる気に満ち溢れた少年だったはずだよ。君が王子だというなら命令するかい? 王子である君に武術を教えろと」
ウィルフリート先生の言葉に僕の目から自然と涙が落ちていた。あぁマアサといいウィルフリート先生といいどうしてこんなに素晴らしい人たちと出会える事ができたんだろう。前世では治らない病の中、神様に何度も頼んだ。でも叶わなかった。神様なんていないってずっと思っていた。
でもこの出会いは神様のお導きなのかもしれない。だから僕は初めて思ったよ。神様ありがとうございますと感謝しますと。
「僕はウィルフリート先生と出会えた幸運を手放したくなんてありません。王子なんて関係ない。僕が例え貴族だろうが平民だろうが先生に教えを請いたいという気持ちは変わりません。改めてお願いします!」
「よく言った! それでこそトーラス君だよ。僕もまだまだ未熟者だ。一緒に頑張ろう!」
「頑張ります。努力し続けていつか先生を超える男になります!」
僕の言葉にマアサは涙をこらえながら先生の耳元で囁いた。
「ウィル、トーラス様は素晴らしい方でしょ。あなたの教えでより良い未来に導いてほしいの。この方は将来この国に無くてはならない存在になられるわ。私はそう思うの」
僕には聞こえなかったけど二人はずっとうなずいていた。
その後、訓練がスタートし、くたくたになるまで、体力作りに勤しんだのだった。
マアサとトーラスの母リディアの関係をどういう感じにトーラスに話すか少し悩みましたがこういう形になりました。




