歩き始めた王子(マアサ視点)
引き続きマアサの視点です
リディアの部屋を出るとそこには侍女が待っていた。
「それでは第三王子の元に案内します。」
そう言うと、侍女長は歩き始めた。
私は少しドキドキしていた。リディアとの話を聞かれてしまっただろうか? 侍女長が王妃か第二妃の仲間だったら。自分の軽率さを実感してしまった。
そう思いながら歩いていると見透かしたように私に侍女長が言ってきた
「心配しなくても私は王妃様や二妃様の間者ではありませんよ。国王から強くいいつかっております。侍女長というのは平等でなければならないと」
その言葉に私は怒りを覚えた。
「それではなぜ第三王子だけひどい立場にあるのですか?」
侍女長はすぐに返してきた。
「私は平等に接しております。しかし王宮内には様々な人間が働いております。その全ての人間を抑えることは出来ないのです」
わたしは我に返った。その通りだ。侍女長がいくら一人で頑張ろうとも数には勝てない。
「申し訳こざいません。出来すぎ事を言いました」
「気にしていません。なので今からあなが第三王子に対して行うことは一切感知いたしません。お好きになさってください。一人で出来ることなどたかがしれておりますし、一人くらい味方がいたっていいと思いますし、まぁ頑張ってくださいね」
私は安心した。侍女長は味方ではないが敵ではない。私が何をして見逃すと言っているし、あとは王子次第ね。
話をしているうちに王子の部屋に着いた。
「それでは私は失礼します。王子の食事は朝話した通りの時間ですのでお忘れなく」
そう言うと、去って行った。
その後、私は扉をノックして中に入った。中に入るとベットの上に人がいるのが見えたので、そちらの方に行き挨拶をした。
「トーラス殿下、私は本日より殿下付きの侍女になりましたマアサと申します。何かご用がございましたらお申し付けください」
挨拶をしたはいいが言葉は返ってこない。
どうしたのかと覗いてみるとそこには生気を感じられない子供がぽつんと座っていた。
私の中に悲しみが溢れてきた。王子が王宮で誰からも見向きをされないのを知っていた。他の侍女から忘れられた王子と呼ばれていることも聞いていた。
だがこの状況はなんだ。まだ10際にもならない子供にこの仕打ちはひどすぎる。私は悲しみを通りこして怒りが込み上げてきた。
私がこの子をリディアの子供を助けるんだと改めて心に誓った。
その日から侍女生活が始まった。
何日か経ったあとなんとか名前は覚えてもらい会話も少しは出きるようになっていた。
しかし、これではダメだ。殿下自身がもうすべて諦めている様子だった。
それもそのはずだ。たまに部屋から出ても殿下に話しかけるものはいないのだ。皆殿下はいないかのように振る舞うのだ。この状況で殿下はずっと暮らしてきたんだ。
私はどうしたらいいのか途方に暮れていた。リディアにあれだけ啖呵をきっておいて何も出来ないままただ時が過ぎていった。
しかし、その時は急に訪れたのだ。私が働き初めての4ヶ月経っていた時だった。
私は未だに何も出来ていなかった。
その日も朝の食事と共に部屋に向かった。
ノックして部屋に入って殿下の顔を見ると何か違和感を感じたのだ。
今まで生気を感じられなかったお顔に何か力のようなものを感じた。私はそれが何か分からずに殿下にこう言ってみた。
「トーラス様、本日はとても良い顔をされておりますね。何か良いことでもございましたか?」
私がそういうと殿下の目からぽつぽつと涙が流れ始めました。
私はどうしたのかと心配になりきいた。
「トーラス様どうなさいましたか? 体調でもお悪いのですか?」
「違うんだマアサ。嬉しくて泣いてしまったんだ。今の今まで気付かなかったんだ。マアサが僕の事を見ていてくれたことを。忘れられた王子の僕の事をずっと見ていてくれた事をだ」
殿下の言葉は嬉しさと悲しみが溢れてきたそしていつの間にか殿下の体を抱き締めていた。
「ご不敬申し訳こざいません。しかし言わせていただきます。寂しかったら泣いていいんです。殿下はこの過酷な環境の中一人でずっと耐えていらっしゃいました。まだ10歳の小さい男の子が文句1つ言わず。侍女にあたることもなく。だから私は思うのです。殿下はとても強い方です。これからどんどん成長されて素晴らしい御方になります」
私はこの瞬間確信したんだ。殿下はこの過酷な状況を自分の力で乗り越えたんだ。絶対に素晴らしい方になるわ。
「マアサ、ありがとう。マアサの言葉とても嬉しかった。だからこそもう僕は泣かない。これからはいっぱい努力して努力していろんな人に自分を見てもらえるように頑張るよ。だから最後に少し泣かせてほしい」
そういうと10歳の子どもらしく私の胸の中で泣き。やがて泣きつかれて眠りにつかれた。
リディア、トーラス殿下はもう大丈夫よ。あなたの愛している息子は素晴らしい人間になられるわ。そのための手助けには力を惜しまない。最高の環境を整えて見せるわ。
目が覚めた殿下はとても生き生きした顔をされていた。
殿下から武術と勉学の先生を紹介してほしいと頼まれた。
私は少し考えた後、適任がいるじゃないと二人の男性の姿が浮かんだ。二人とも学園時代の同期で1人は武術の腕は並ぶものなしと言われていたし、もう1人は毎年学年首席を取るくらいの人だった。二人ともと凄く仲良かったしきっと二つ返事で引き受けてくれるわ。
その時の私はすごく楽観的に考えていた。このあとその事を後悔する事になるなんて夢にも思わなかった。
次から主人公トーラス視点に戻ります




