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知らされた悪行

途中に視点が変わります

 ロザールさんとラクアさんが落ち着くのを待ち、会話を再開した。イザベル達もソファーに座っている。


「それにしてもレナ、アンジェリカ、ひどいですわ! 言いたい放題言ってましたわよね」


「しょうがないじゃない。ロザールさん達にイザベルとの関係を知られる訳にはいかなかったし、そんなに怒る事ないじゃない。ねぇレナ」


「そうねアンジェリカ。私がどれだけ断腸の思いでイザベルの事を悪く言ったと思うの。私がどれだけイザベルの事大好きか知ってるでしょ。ひどいわ」


 二人は各々そう言うと、うつむいて泣いたふりを見せた。念のためにもう一度、泣いたふりです。レナやアンジェリカがこんな事で泣かないのはイザベル、ロザールさん、ラクアさん以外は皆が理解してる。イザベルをおちょっくってるのだろう。二人は本当に似た者同士だよね。


「二人とも、ごめんなさい。いい過ぎましたわ。そうですわよね。私達のために嘘ついてくださいましたものね。私が軽率でしたわ」


「私達も何とも思っていないよ。なぁラクア」


「そうですとも。私はイザベルちゃんにこんなに沢山の友達が出来て本当に嬉しいわ。ありがとう」


 三人は何とか泣き止んでもらおうと声をかける。


「レナ、アンジェ、ふざけすぎ。本気で心配してるよ」


「「「えっ!」」」


 リディアナの言葉に三人は二人の方を見つめる。


「流石我が大親友のアナね。この演技を見破るなんて見事としか言えないわ」


「そうねアンジェリカ。私にも未来の大親友リディアナを欺く事は出来なかったみたいだわ。しょうがないわね。さぁ本題に入りましょう。ここからが私達がここに来た理由なんですから」

 

 二人とも完全に流そうとしてるよ。レナの方はいきなり本題に入ろうとしてるし、やりたい放題だな。


「二人とも……」


 イザベルはふたりに何か言おうとしたが、途中で止めてしまった。良かった。追求しても時間の無駄だってわかってくれたみたいだ。イザベルには悪いけど、このままじゃ無限ループに突入していつになっても本題に入れなくなってしまう。


「それでは改めまして私達がこのお店に来た本当の理由を話させてもらいます」


 レナの表情が先程までと違い、凄く真剣な顔をしている。それを見てロザールさん、ラクアさんに緊張感が走ったように見えた。


「私達がこの店に来たのはダマス商会について詳しく事情を聞くためです」


「はい」


「単刀直入に聞きます。あなた方はダマス商会に脅され、店を奪い取られましたか?」


 レナの言葉にロザールさんは顔を曇らせる。


「はい」


「どういった経緯があったか聞いてもいいかしら?」


「はい。ある時、我が商会に男二人組のお客様がご来店されました。一人は今、ダマス商会会長をしている男、もう一人は身体中に豪華な装飾品を沢山着けているいかにも金持ちそうな太った男。彼らは最初は普通に店の中を見て回っていました。私はいつも通りに声をかけさせていただきました。最初はいろいろ褒めていただいたりもしたんですが、最後の最後に驚きの言葉が返ってきたのです」


《ロザール視点》


「いらっしゃいませお客様。私はこの商会の会長を務めておりますロザールと申します。何かお気に召す物はございましたでしょうか?」


「ほう。あなたがこの商会の会長ですか。そうですね。この店は素晴らしいな。品揃えもなかなか。店内のデザインや雰囲気も凄くいい。そして、一番は立地が最高だな」


 見た感じはあまり好ましい印象を持たなかったお客様だったが、素直に店の事を褒めていただいて凄く嬉しい気持ちになった。


「お褒めいただきありがとうございます。何かご所望の物などございましたらお持ちいたしますが」


 私はいつも通りお客様に何を求めているのか聞いてみた。すると、二人で何やらコソコソ話をした後、太った男が口を開く。


「何でもいいのかな?」


 商人として出来うる限りお客様の希望には答えたい。私は今までこの気持ちを持って商売を行ってきた。様々な要求にも答えられる自信があった。


「用意出来る物でしたら」


「そうかそうか。なら私はこの店を買いたいのだが」


 私は太った男の言葉を最初は理解出来なかった。何を言ってるのだろうか? そんな感じだった。


「何を呆けている。私は店を買うから店の証書を持ってこいと言っているんだ」


 次の言葉で私はやっと正気に戻り、言葉を返す。


「お客様、ご冗談はよしてください。そんな事が出来ないのはご聡明なお客様ならお分かりでしょう」


「冗談で言っている訳ではない。もちろんタダで寄越せと脅している訳ではないぞ。ここの土地の適正の倍の値段で買い取らせてくれと言っているんだ。悪い話ではないだろう」


 本気なのか。どうすればいい? 無論私にこの商会を手放す選択肢はない。この商会は私の宝だ。従業員は家族同然だ。手放すなんてありえない。


「申し訳ありません。私はいくら積まれてもこの商会を手放すつもりはございません。お引き取りください」


 私はきっぱり断った。しかし、男二人はその場を動こうとはしない。


「そうですか。あなたがもう少し物分かりが良い人でしたら私も助かったんですがね。ダマス、やれ!」


「かしこまりました。お前ら入ってこい!」


 太った男が連れの男に命令し、その男は外に向かって叫んだ。すると、外から三人の屈強な大男が店に入ってきた。


「お前ら、このアホに世の中の恐ろしさをわからせてやれ!」


 男がそう言うと、大男達はいきなり店内の商品を破壊し始めた。


「止めろ! 何をしているんだ!」


 私は一目散に大男に飛び付き止めさせようとした。しかし、すぐに弾き飛ばされる。


「おい。まだ理解出来てないみたいだぞ。そこにいるお客を連れてこい」


 私は太った男の言葉に背筋が凍る思いがした。お客様だけにはお客様だけには手を出される訳には……。


「分かった。この店をあなたに差し上げます。だからお客様だけには手を出さないでぐださい」


「やっとわかってくれたみたいで嬉しいよ。では証書を持ってこい」


「わかりました。しかし、証書があってもすぐに変更は出来ません。しかも商業ギルドが認める訳がありません」


 そうだ。こんな横暴許される訳がない。証書を渡すが、きっと商業ギルドが何とかしてくれる。


 その時はまだそんな淡い期待を私は抱いていた。しかし、次の太った男の言葉でその淡い期待が木っ端微塵に崩れ去った。


「私がそんな事も考えていない男に見えたのか。商業ギルド職員は買収済みだ。この店はすぐに私の物になるんだよ」


 私は最後の望みもこの瞬間打ち砕かれたのだった。


 その後はあっという間だった。次の日に男が買収したギルド職員を連れてやって来て全ての権利を奪われた。


 出ていく時に言われたのが外には他にも男達の仲間がいたらしくあの時、店内にいたお客様を脅し、情報を封鎖したと。だから騒いでも無駄だと言われた。


 男から金だと言われて袋を渡される。私は本当は受けとりたくなかった。しかし、生きていくにはお金がいる。しかも従業員全員、私に付いてきてくれるという。私は悔しい気持ちを圧し殺し、袋を懐にしまった。


《ロザール視点終了》


「これが我々に起こった一部始終です」


 ロザールさんの話が終わり、殺伐とした空気がこの場に流れる。怒りがこみ上げてくる。もうひどいなんて言葉ですら生ぬるいくらいだ。


 周りを見渡すと、皆、凄く複雑な表情を浮かべている。イザベルは涙を浮かべ、ロザールさんとラクアさんに抱きつき、『その時に何の力になれなくてごめんなさい』と言っていた。


 ロザールさんはそんな僕らを見て、『もう終わった事だから大丈夫です。今も凄く楽しくやっていますから』と言っていた。


 そんな時、僕はあることを思いだし、横にいるリディアナに小さな声で尋ねた。


「リディアナ、ちょっといいかな?」

 

「どうしたの?」


「ラクアさん達は一緒に店の中に入って来なかったの?」


「入ってきたよ。そういえば一緒に部屋に入ってこなかったね。多分、今も扉のすぐ側にいるんじゃないかな?」


「ありがとう。リディアナ」


 リディアナから情報を聞き、僕はロザールさんに尋ねた。


「ロザールさん、一ついいですか?」


「何でしょうか?」


「今、部屋の外に商業ギルドのギルド長が来ています。部屋の中に入ってもらってもいいですか?」


「ギルド長ですか! 私は構いませんが……」


「私も構いません」


 二人の承諾を得て、僕は外で待機してるであろうラクアさんに声をかけた。


「わかりました。ラクアさん、入ってきてください」



 



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