理想の夫婦
約1ヶ月ぶりの更新となりました。すみません。少し書く気力がなくなっていました。次の話がいつになるかは今はまだわかりませんが、少しでも早くに投稿するつもりです。よろしくお願いします。
102話の最後を少し変更しました。ロザールさんが今はウェールズと名乗っている事。
レナとぶつかった時にちゃんと名前を名乗った事です。
「いらっしゃいませお客様。ベルウェール商会へようこそ!」
店に入ると、笑顔の店員さんに迎えられた。
「凄く良い雰囲気ね。店内を見て回るのが楽しみだわ」
「ありがとうございます。何かございましたらすぐにお呼びくださいませ」
「そう。それは助かるわ。でもその前にウェールズさんに挨拶をしたいのだけど」
「申し訳ございません。店長のお知り合いの方でございましたか」
「そんなにかしこまらなくていいわよ。ウェールズさんとは先程、中心街で会っただけだから」
「もしかして店長が中心街でぶっかってしまったレナ様でございますか?」
「あら。店員さんもその事知ってるの!」
「はい。店長から事情を聞き、レナ様が店に来られたらすぐに私に連絡してほしいと従業員全員が頼まれましたので」
「そうなの。それじゃあ呼んでもらえるかしら」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
店員さんはそう言うと、店の奥に下がっていった。そして、少しすると、奥から男性が歩いてきた。
「お待たせしてすまないね。まさかこんなに早くお嬢さん達が訪れてくれるなんて思わなかったよ。ありがとう。もしよかったらなんだが、奥の部屋で少しを話をしないかい? 実は私の妻が是非話をしたいみたいでね。しかし、少し足が悪くてね。長時間の立ち話はつらいんだ」
「あら。嬉しいわ。私も是非ウェールズさんとじっくり話をしたかったの。皆はいいかしら?」
レナの問いに僕らは頷いたが、アレックスだけは何か言いたそうだった。
「アレックスどうしたの?」
「俺は他の店にいるアイツの所に行ってもいいか?」
アイツとはイザベルの事である。
「そうね。どれくらいここに滞在するかわからないし、あの子は寂しがり屋だからね。それじゃあロイスとリディアナも一緒に行ってくれないかしら?」
「「いいよ!」」
きっとアレックスは外でヤキモキしているイザベルの事が心配になったんだろう。あと、奥の部屋に入った事を外にいるライラさん達に伝えないといけないしね。
「ごめんなさいウェールズさん。そういう事だから」
「構いませんよ。それでは奥にどうぞ」
僕らはそのままアレックス達と離れ、奥の部屋に向かった。奥にある扉に入ると、更に先に二つの扉があった。そして、僕らは奥の方の部屋に入った。
「はじめまして皆さん。私はレミアと申します。ウェールズの妻であり、この商会の会長をやらしていただいております。主人にレナさん達の話を聞いて、是非会ってお話がしたいと思っておりましたの」
「それは光栄ですわ。それじゃあ失礼しますね」
僕らはレミアさんの前にあるソファーに腰かけた。ウェールズさんはレミアさんの横に座った。
「それじゃあ先ずはあの時、居なかった面子もいるから自己紹介からよね。私はレナールトよ。右からカルロス、アンジェリカ、トーラスよ。皆、私の大切な友人達よ」
レナが普通に自己紹介をすると、なぜかお二人は驚愕の顔を見せた。
「レナールトとはレナさんの本名ですか?」
「そうよ。ごめんなさいね。素性の完全にはっきりしない方には愛称であるレナって名乗る事が多いの」
ウェールズさん達はレナの名前に反応したみたいだ。
「間違っていたら申し訳ありませんが、もしかして隣国のザフィード王国第一王女レナールト殿下でございますか?」
「そうよ」
その情報を聞き、更にお二人は驚愕の顔を見せた。そりゃあそうだよね。いきなり目の前にいるのが隣国の王女だとわかったもんな。誰だって驚くよね。でもいいのかな? ばらしちゃって。今のテンペスター公爵夫人であるサフィーヤさんは元ザフィード王国王女だというのは領民なら知ってるだろうに。
「これは大変失礼いたしました。レナールト様をこんな所に来させてしまうなんて」
ほら! お二人に気を使わしちゃったよ。どうするのかな?
「頭を上げてください。今の私は只の街を楽しむレナです。王女の身分は忘れてください。じゃないと話をしても楽しくありません」
レナがそう言うと、お二人は顔を上げた。だがまだ少し困惑の顔をしていた。
「レナールト様、少し質問よろしいですか?」
「ええ」
「他のお三方もザフィード王国の方ですか?」
「違うわ。この国の人よ。偶然友達同士で各地を旅している皆に会って仲良くなったの」
「左様ですか。もしかして貴族のご子息・ご令嬢だったりしますか?」
「流石に人を見る目がありますね。カルロスはマークウェル公爵家子息、アンジェリカはローゼンフェルト伯爵家令嬢、トーラスはロンベスター子爵家子息よ!」
あらら。ウェールズさんとレミアさんが固まっちゃったよ。もう何がしたいんだよレナは!
「そんなに睨まないでよトーラス!」
「睨みたくなるよ。誰だっていきなり目の前に隣国の王女が現れたら驚くでしょ。しかも自国の貴族の子息・令嬢付き」
「だって身分を偽りながら話をしたくなかったんですもの。お二人は凄くイイ人そうだし、私の身分を使って悪巧みなんて絶対にしないって思ったんだもの。こう見えて私、人を見る目は凄いんだから」
「はいはい分かりました」
「怖い! ダークプリンス降臨だわ!」
その単語が出た瞬間、僕はアンジェリカの方を見ていた。
「何よトーラス。私の顔に何かついてる?」
アンジェリカはとぼけたように言った。ほう。知らないふりですか。そうですか。
「いや何でもないよ。ダークプリンスって何だろうなぁって思っただけだよ」
「何だろうね。ザフィード王国で流行ってるんじゃない」
アンジェリカは見るからに動揺している。やはり犯人はアンジェリカか。万が一にも違う可能性があったけどそんな訳はなかった。
「アンジェリカ!」
「はい」
「僕、もう知ってるんだよ」
「何をよ!」
「アンジェリカがレナに学園で呼ばれている恥ずかしすぎる異名を喋った事だよ」
「レナ!」
「だってアンジェリカがトーラスが気に入っているっていうから言ったら喜ぶと思って」
「…」
「アンジェリカ!」
「はい」
「貸し消滅ね」
「はい」
アンジェリカには理不尽な貸しを作っていたからね。この機会に精算出来たのはデカいね。
「それにしてもそんな異名あったなんて驚いたよ。トーラスは沢山異名があるね」
カルロスが笑顔で言ってきた。嬉しくないよ。
「何を言ってるのよ。カルロスにも素敵な異名があるじゃない」
「駄目!!!」
アンジェリカがレナの口を塞ぎにレナに飛びかかろうとする。しかし、少し遅かった。
「黄昏の貴公子。ひとたび見せる子供とは思えない大人びた表情に学園のお姉様方は心を奪われる。この子は一体どんな素敵な大人に育つのかしらという見守ってる方々がいっぱいいるらしいわよ」
レナの言葉にカルロスが固まる。カルロスにもきっと僕の痛い気持ちがわかっただろう。そうだよ。それだけ恥ずかしいんだよ。でも向き合うしかないんだよ。そして、そこでレナの体を掴んでいるあなた、反省しようね。
でも黄昏ってどんな意味だったっけ?
「カルロス、恥ずかしいのはわかるけど、大丈夫だよ。僕よりはマシだよ」
僕がそう言うと、カルロスは顔を上げた。
「ごめんトーラス。安易に異名がいっぱいあるなんて言って。異名があるのがどれだけ恥ずかしいかわかったよ」
「うんうん。学園に戻ったらアンジェリカの恥ずかしい異名を広げようね」
「僕も全力で手を貸すよ!」
「私も! 私も全力出すわよ」
「レナは学園違うでしょ」
「そうだった。まだ違ったわ」
「まだ?」
「何でもないわ」
どういう事? レナの今の言葉、凄く引っかかる。なぜだろう? 僕がそんな事を考えていると、前方から笑い声が聞こえてきた。
「すみません。ウェールズさんとレミアさんの前なのに」
「いいんですよトーラスさん。凄く安心しましたから。あなた方の身分を聞き、私達は少し怖かった。実は昔、貴族の関係者に嫌な目に合わされましてね。あなた方がそんな方達とは思っていませんが、少し抵抗感が出てしまいました」
貴族の関係者ってダマス商会の事だよな。
「お辛い目に合われたんですね。でも今はしっかり商会を経営されていて凄いですね」
「ありがとうございます。それもこれも従業員の皆のお陰です。ねぇあなた」
「その通りだな」
いいご夫婦だなぁ。いつか僕もお二人のような夫婦関係になりたいなぁ。
「そういえば皆さんの口から学園という言葉が出ておりましたが、もしかして王都のセルベリース学園ですか?」
「そうですよウェールズさん。レナ以外の僕ら全員セルベリース学園の生徒です」
「やはり。何学年でしょうか?」
「二学年です。どうしたんですか?」
「いやすみません。皆さんは各地を旅されてると聞いたのでどうしてこちらに寄られたのかと思いまして」
僕はウェールズさんの質問を聞き、考えた。学園名だけでなく学年を聞いた。学園にウェールズさんの知っている人が通っている。あっ! なるほど! イザベルか。
「実は学園の長期休みを利用して僕らの実家巡りをしているんです。最初はロンベスター子爵領、次はマークウェル公爵領で次はシュナウザー侯爵領に行く予定でこの街はとても良い街だと聞いて立ち寄ったんです」
僕はイザベルの実家だということは言わずに説明した。すると、お二人は凄く悲しそうな顔をした。
「そうなのですか。旅の途中に立ち寄っただけなんですね」
「どうしたのですか?」
「いえ。なんでもありませんよ。我が領のご令嬢も確かセルベリース学園に通っていた記憶がございましたのでもしかしたらご友人なのかと思いまして」
やっぱりイザベルの事を心配してたんだな。きっとお二人にはイザベルはいろんな事を話していたんだろうなぁ。本当の友達が居なかった事とか。
「あぁそういえばテンペスター公爵令嬢イザベル様は同じクラスですよ」
アンジェリカ、復活早いな。しかもちゃんと話を合わせてくれている。流石だな。
「そうなんですか。お話はされた事あるんですか?」
「ないわね。私、あまりあの方の事、好きではないのよね。我が儘だし、自分勝手だし」
昔のイザベルはそうだったね。
「「そんな事ありません!」」
お二人はすぐに否定する。
「お二人はイザベル様を知ってるのですか?」
アンジェリカの言葉にお二人は動揺を見せる。
「いえ。直接会った事はありませんが、知り合いから凄くいい方だと聞いた事がありまして」
「そうなんだ。意外ね。そういえばレナって確かイザベル様といとこ同士よね?」
アンジェリカの言葉にお二人は希望の目でレナを見つめる。
「そうよ。イザベルねぇ。私はあまり知らないわ。数年に一回しか会わないし、会ってもいい思い出はないわね」
レナの言葉にお二人は落胆の表情を見せた。本当にイザベルの事が好きなんだな。
「そうなのですか。残念です」
ごめんなさいウェールズさん、ラクアさん。今は僕たちの関係を知られる訳には行かないのです。
僕がそんな事を考えていると、部屋の扉がバッっと開いた。
「皆さん、ロザールさんとラクアさんをからかわないでくださいな!」
そこにはイザベルが仁王立ちしていた。後ろにはアレックス、リディアナ、ロイス、先程の店員さんの姿があった。もしかして扉越しに聞いてたのかな?
「「イザベルちゃん!」」
見事に二人がハモった。
「ロザールさん、ラクアさん、お久しぶりです。そこにいる友人達が失礼いたしました」
「友人……」
ラクアさんが呟く。お二人共、今のこの状況を理解できていないみたいだ。
「すみません。実は僕達、イザベルの友達です。お二人との関係も知ってました。からかっていた訳ではなく、話せない事情がありまして」
僕の言葉に最初は驚いた顔を見せたが、すぐに優しい笑顔になった。
「頭を上げてください。その事情には私達にも想像出来ます。今はそんな事はいいのです。皆さんは本当にイザベルちゃんのお友達なんですね? イザベルちゃんの本当は凄く優しくていい子だって分かってくださったんですね」
ラクアさんの言葉に僕らは「はい!」と返事をした。すると、ロザールさんとラクアさんは涙を流して、「ありがとうございます」と言っていた。
この街にロザールさんとラクアさんが居てくれて本当に良かったと思った瞬間だった。




