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Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます  作者: 銀翼のぞみ
第三章

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78話 新たなる力、そして変態

(ふむ、この都市の迷宮も久しぶりだな)


 ステラの胸に揺られること少し、タマは迷宮へとやってきた。

 迷宮に入ると、タマは彼女の胸の中から抜け出し、地面に着地する。


「むぅ、抱っこはここまでか。残念なのだ……」


 ステラは何とも残念そうな表情を浮かべるのだった。


 そんなステラを尻目に、タマは自己解析魔法スキル、《ステータス》を発動する。

 彼の視界の中に表示された項目は次の通りだ。


==============================

名前:タマ

種族:ベヒーモス(幼体)

固有スキル:《属性咆哮》《スキル喰奪》《属性剣尾》《獅子王ノ加護》《属性弾》

喰奪スキル:《収納》《ポイズンファング》《飛翔》《ファイアーボール》《アイシクルランス》《アイアンボディ》《触手召喚》《粘液無限射出》《異種交配》《ドラゴンファング》《ドラゴンクロー》

進化可能:▷ベヒーモス第三形態

==============================


(やはり増えているな、固有スキル《属性弾》、それに……進化の項目が)


 そう、タマのステータスには固有スキルの欄に新たなスキル《属性弾》、そして今までは消えていた進化の項目に〝ベヒーモス第三形態〟の文字が映し出されていた。

 恐らく先日の……グラッドストーンでのアンデッドドラゴンとの戦闘を経験したことにより、タマの技量(レベル)が上がったのがスキル発現の理由だろう。


(進化……第三形態ということは、以前と違う姿になるのだろうな。気になるところではあるが、第二形態の時のように元の姿に戻れる保証はないから試すわけにはいかぬ。これは万一の切り札として取っておくほかあるまいな。それよりも――)


 まずは新たに増えた固有スキル《属性弾》だ。

 名前から察するに属性に因んだエネルギー弾を射出する……といったところだろうか?


 タマが《属性弾》の項目に意識を向けてみる。

 新たにステータスが視界の中に展開した。


==============================

《属性弾》:《フレイムミサイル》《エーテルミサイル》《ウォーターミサイル》《ロックミサイル》

==============================


(ミサイル……。いったいどういう意味だろうか。まぁ良い、実際に使ってみれば分かるであろう)


 ミサイルという言葉に聞き覚えのなかったタマは、どんなスキルなのかモンスター相手に試すために迷宮に訪れたのだ。


「さっきから黙ってばかりでつまらないのだ。タマ、いったい何をしに来たのだ?」


 少しの間、思考を巡らせていたタマに、ステラが「我はヒマなのだ!」と言って話しかけてくる。

 タマは小さくため息を吐きながらも……。


 ――まぁ、見ていれば分かる。そら、雑魚のお出ましだ。


 ……と彼女に念話を送る。


『グギャッ!』


 耳障りな鳴き声とともに、一体の異形――下級モンスターのゴブリンが現れたのだ。


 ――ステラ、少し下がっていろ。お前に我が輩の新しいスキルを見せてやる。


「新しいスキル! いつの間に手に入れたのだ!?」


 タマから送られてきた念話を聞き、ステラは驚いた表情をしつつも、その美しい瞳を輝かせる。


 ただでさえ自分の愛するオスであるタマの強さに、ステラは感服していた。

 それが新たな力を手に入れたともなれば興奮して当然である。


「早く! 早く見たいのだ……!」


 待ちきれない! といった様子でスキルの発動を急かすステラ。

 彼女の子どものような反応に、タマは内心苦笑しながらもスキルの行使に移る。


(ゴブリンとの距離も大分ある。これであれば新たなスキルの威力がある程度高くても問題なかろう)


 タマはそう判断して、今だこちらに気づくことないゴブリンに向けてスキルを放つ。


「にゃん(《フレイムミサイル》ッ!)


 可愛いらしい声で鳴くと、目の前の空間に真っ赤に染まった長細いフォルムをした物体が現れる。

 大きさは人間の手のひらサイズ程度だろうか。


 それはこの世界には存在しない(ということになっている)代物――地球という世界で〝弾道兵器(ミサイル)〟と呼ばれているものと酷似していた。


 出現した刹那……《フレイムミサイル》は、轟ッッ! という音ともに勢いよく飛び出した。

 迫り来る《フレイムミサイル》にゴブリンは反応することさえできず、腹の中心に直撃を許してしまう。


 その次の瞬間だった……。


 ドゴォォォォォォォォン――ッッ!


 ゴブリンの腹に直撃した《フレイムミサイル》が大きな音ともに小規模な爆発を起こした。


 ゴブリンの体が爆散し、四方八方に飛び散る。

 さすがは炎属性と言うべきか、飛び散った体の部位はそのどれもが炭化し煙を立ち上げていた。


「す、すごいのだ! 変な形した何かが飛び出したと思ったら、ゴブリンがバラバラに吹き飛んだのだ!」


 爆散したゴブリンを目の当たりにして、ステラが興奮した声を上げる。


(これは……なるほど、なかなか良いスキルではないか)


 興奮するステラを尻目に、タマは満足げに頷く。


 ワイドレンジな《属性咆哮》と違い、今回発動した《属性弾》は着弾とともに爆発を引き起こすスキルだ。


 タマが単独で多勢を相手取る時は《属性咆哮》の方が使い勝手が良いが、アリアたちと連携を取って戦うのであれば、効果範囲が狭く、それでいて威力は申し分ないこのスキルの方が使う場面が多そうだ。


 特に、グラッドストーンでは、アリアたちと連携を組む以外にも住民を守りながら戦わなければならなかった。

 タマは周りに被害が及ばぬように、近接系スキルのみで戦うことになり、苦戦を強いられた。

 そんな状況を味わったからこそ、新たな固有スキルが発現したのだろう。


 ――ステラよ、先に進むぞ。他にも試したいスキルがあるのでな。


「……っ! まだ他にもスキルに目覚めたのか!? さすがタマなのだ!」


 興奮気味のステラを連れ、タマは迷宮を進んでいく。

 

 迷宮二層目――


(むぅ、今日はあまりモンスターの動きが活発ではないようだな)


 タマが残念そうな表情を浮かべる。


 本来であれば、一層目でゴブリンなどの雑魚モンスターを相手に新たなスキルを試したいところであったのだが、ここに来るまで他のモンスターに遭遇しなかったからだ。


 もしかしたら、タマたちの知らぬ間に一層目で大攻略が行われたのかもしれない。

 迷宮はモンスターをどこからともなく生み出す性質を持つが、その量にかなりの振り幅がある。

 多くのモンスターが狩られた後に、生み出す量が少ない期間が当たると、こうしてモンスターとなかなか遭遇できないといった状況になることもあるのだ。


(さすがに二層目ともなれば、そろそろモンスターが出てきても良いのでは……おっ、丁度良い相手がいるではないか)


 さらに歩くこと少し――

 タマたちの視線の先に、豚人型のモンスター、オークの姿が見えてくる。


 向こうもタマたちに気づいたようだ。

 目を見開き、『ブヒョォォォォォォッ!』と耳障りな雄叫びとともに駆けてくる。


(よし、次に試すのはこのスキルだ!)


 ギンッッ! と鋭い瞳でオークを睨むと、タマは「にゃあッ!」鳴き声を上げる。

 選択したのは《属性弾》が一つ、《エーテルミサイル》だ。


《フレイムミサイル》の時と同じように、目の前の空間にミサイルが現れる。


 先ほどとは違い色は淡い緑色、周囲に風を纏っているようで、ゴウゴウと音を鳴らしている。


(いけッ!)


 タマが心の中で命じると、《エーテルミサイル》が勢い良く飛び出した。


 何か嫌な予感がしたのだろう。

 オークは弾道を見切ることはできないまでも勘で横に大きく飛び退いた。


 だが、それは無駄だった。

 何故なら、オークが飛び退いたその刹那、《エーテルミサイル》が軌道を変えたのだ。


「「ッッ!?」」


 タマとステラが驚愕に息を漏らす。

 まさか一度放ったスキルが敵に向かって軌道を変えるなど思いもよらない。


『ブギャァァァァァァァァァァッッ!?』


 オークの悲鳴が響く。


《エーテルミサイル》は着弾すると、《フレイムミサイル》の時とは違い、その身から真空の刃を放った。


 刃の切れ味はなかなかのもののようだ。

 オークは体のありとあらゆる箇所を切断され、バラバラになった死体が出来上がった。


「て、敵を追う能力だけでもすごいのに、威力まで……。タマはどこまで強くなるのだ!?」

 ――我が輩も正直驚いているが、あと二つ新たに手に入れたスキルがある。それも試すぞ。


「なっ!?」


 まだ他にもスキルがあるとは……。

 ステラはとうとう絶句してしまう。


 そんなタマとステラの前に、戦闘の音を聞きつけたのか新たなオークが現れる。

 今度は二体だ。


(丁度良い、あと二つの《属性弾》もこいつらで試してやるとしよう)


 タマが大きく息を吸い込む。


 そしてそのまま――


「にゃん(《ウォーターミサイル》ッ!」


 またもや可愛らしく鳴くことでスキルを発動する。


《ウォーターミサイル》は淡い青色に輝きを放ち、右のオークに向かって飛び出した。


「ッ……!? オークが、オークが水に包まれたのだ!」


 先ほど以上に興奮した声をあげるステラ。


《ウォーターミサイル》が着弾すると爆発し、とてつもない量の水を生み出した。

 水は球体状になり、オークの体全体を包み込むと形をそのまま固定した。


 もがき苦しむオーク、さながら水の牢獄だ。

 そして遂に、オークは白眼を剥き水の牢獄の中で息絶えた。

 そしてその瞬間、水は跡形もなく消え失せた。


(これは……凶悪なスキルだな。これであれば頑丈な敵が相手でも呼吸を奪うという方法で倒すことができるだろう。まぁ、冷静な判断が下せる敵であれば何らかのスキルで対処されるかもしれぬが……)


 前二つのスキルに比べ、かなり地味に見えるが、タマは見た目でスキルの性能を見間違えたりはしない。

 このスキル……《ウォーターミサイル》がいかに優秀なスキルか、瞬時に見抜くのだった。


『ブ、ブヒ……ッ!』

「あ! オークが逃げたのだ!」


 ステラが指差して叫ぶ。

 仲間がやられて、タマの強さを理解したようだ。

 もう一体のオークが回れ右して脱兎の如く逃げ出した。


「にゃあ(《ロックミサイル》)ッ!」


 そう簡単に逃すと思うか?


 タマを冷たい瞳で見据え、最後に残った《属性弾》、《ロックミサイル》を発動した。


 色は鈍色だ。

 今までの《属性弾》とは違い、鋭い螺旋状の刃のようなものが付いている。

《ロックミサイル》はその場で高速回転し、飛び出した。


 ギュイィィィィィィィン――ッッ!


《ロックミサイル》がオークの背中にヒットする。

 高速回転した螺旋状の刃がドリルのように、その背中を抉り進む。


『グギャァァァァァァァァァァ――ッ!?』


 激痛のあまり、オークが大声量の悲鳴を上げる。

 そんなオークなどお構いなしに《ロックミサイル》は体内を抉り進み、そのまま腹まで貫通するのだった。


 ドシャッ!


 大量の血液とともに、オークが前のめりに倒れこむ。

 輝きを失った瞳から、激痛のあまり血の涙が流れ落ちていた。


「これは……なかなかえげつないスキルなのだ……」

 ――うむ……。非常に強力なスキルではあるが……。


 あまりに凄惨な光景に、ステラもタマも言い澱む。


 だが、タマの言う通り強力なスキルだ。

 オークの厚い腹を、いとも簡単に貫通したこのスキルであれば、ゴーレムの体さえも貫くことができるかもしれない。


 ――よし、スキルも試し終わったし帰るぞ、ステラ。進化も気になるところだが、それは試すわけにはいかぬからな。

「進化……だと……ッ? タマ、お前は今、進化と言ったのか?」

 ――……? そうだ、ベヒーモス第三形態とやらに進化できるようになったようだ。お前と戦った時は第二形態であったから、それよりも強力なはずだ。

「進化……今よりもおっきく、強くなる……タマは赤ちゃんだから交尾はできない……だが、大人になれば……進化すれば……ッ」

 ――お、おいステラ。何をブツブツ言って……。


 タマは何か背筋に冷たいものを感じ、恐る恐る後退しながらステラに聞く。


 そんな彼にステラは――


「さぁ、タマよ! 今すぐ進化して成体になるのだ! そして我を〝孕ませる〟のだぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!」


 声高らかに叫ぶ。


「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(うわぁぁぁぁぁぁ! やっぱり変態だぁぁぁぁぁぁぁ)ッッ!」


 頬を染め、息を荒くして飛びかかってくるステラから、タマは悲鳴を上げながら逃げ出すのだった。


【お知らせ】

二巻の発売が決まりました。

詳細とキャラデザの一部を活動報告にUPしましたので、ぜひご確認ください。

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