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Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます  作者: 銀翼のぞみ
第三章

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77話 猫乳はさみ再び

 その日の深夜――


(ふむ、あまりの心地よさに寝てしまったか……)


 ベッドの中、タマの意識が覚醒していく。

 彼は今、温もりと柔らかさの中に包まれている。


 右からは――


「……やんっ、タマったら……そんなところペロペロしちゃダメです……♡」


 などというアリアの寝言が……。


 そして左からは――


「……んにゃあ……アリアちゃんと二人一緒ににゃんて……タマちゃんは欲張りにゃん……」


 そんなヴァルカンの寝言が……。


(ご、ご主人にヴァルカン嬢よ、いったいどんな夢を見ているというのだろうか……)


 二人の寝言を聞き、タマは引き攣った表情を浮かべるのだった。


 そんな二人は抱き合ったような状態で寝ている。

 なぜか酔っ払うとこの二人はこのポーズで眠るのだ。


 タマは二人に捕まり、その豊かなメロンとリンゴの間でサンドイッチ状態になっていたわけである。


 言うまでもなく、アリアからは母性さえ感じさせる甘い匂いが……。


 それだけでも幼体であるタマを眠りに誘うのは十分だというのに、さらにヴァルカンからも酒でかいた汗とともに女性特有のフェロモンのいい匂いが分泌され、タマは無事ノックアウトされ眠ってしまったわけである。


(このまま眠ってしまっていたい気もするがそうはいかん。誇りある騎士として、いつまでも女子(おなご)の肌の感触を味わうわけにもいかぬし、何より我が輩には〝やらねばならぬこと〟がある)


 タマはアリアとヴァルカンを起こさぬように、そっと彼女たちの胸の間から抜け出す……のだが、どうしてもムニュン、プルンっと胸が動く。


 その拍子にアリアが「あんっ……♡」と、ヴァルカンが「……にゃあ……♡」と艶かしい声を漏らすものだから、タマは変な気持ちを抱いてしまう。


(ふむ、三人もよく寝ているようだ)


 隣のベッドを見れば、ステラは大股を開いて眠っており、リリとフェリも、すぴーすぴーと、可愛らしい寝息を立てている。


 皆の寝顔を見て微笑ましい気分になりながら、タマは少し開いた窓から屋根伝いに外へと降りていく。


(よし、それでは行くとするか)


 華麗に着地し、伸びをする。

そのままとある場所へと向かおうとするタマ。

 そんな彼の背中に――


「こんな時間にどこへ行くのだ、タマ?」


 そんな声をかける者が一人。


 ――ステラ、起きていたのか?


 声をかけてきたのはステラだった。

 どうやらタマが外へ行くのに気づいて、同じくこっそり抜け出してきたらしい。


「眠っていたがタマが動く気配がして起きたのだ。ドラゴンは気配に敏感なのだ」


 念話で問うタマに、ステラはアクビをしながらそう答える。


 ――ならば寝ているが良い。我が輩はこれから迷宮に向かう。少し確かめたいことがあってな。


「それなら我も一緒に行くのだ。最近戦ってなかったから体が鈍っているのだ!」


 ――……まぁ、良いだろう。くれぐれも我が輩の邪魔をするなよ?


「分かったのだ!」


 タマと二人きりで行動できると分かると、眠たげだったステラの瞳が爛々と輝く。


 普段はアリアに色々と行動を制限されているので、今夜はステラにとってタマと絆を深める格好のチャンスだ。

 ステラ自身そこまで計算できているわけではないが、女としての本能で何となくそれを理解しているのだ。


 そして――


 むにゅんっ!


 ステラは早速、タマをその豊かなバストの中に抱きしめてしまう。


 ――おい、ステラ。我が輩を勝手に抱きしめるな!


「ふんっ、今はアリアが見てないから関係ないのだ! こういう時じゃないとタマを思いっきり抱っこできないのだ!」


 タマは念話で抗議するが、ステラはこのチャンスを逃す気はない。

 抱っこをやめるどころか、より深くタマを胸の中に沈めてしまう。


「そういえば……アリアは前にこんなこともやっていったのだ。確かこうやって……」


 言いながら、ステラはタマの体を一旦顔の前まで持ち上げ……たかと思えば、そのまま――すぽんっ!


 胸の谷間に挟んでしまった。


(なん……だと……っ!?)


 タマは驚愕で黙り込んでしまう。


 両手が荷物で塞がってしまう時など、アリアは胸の谷間にタマを挟みそのまま移動することがある。

 ステラはそれを見ていて羨ましがっていた。

そしてこのチャンスに、アリアの〝猫乳はさみ〟を見よう見まねで実行に移したのだ。


少しの沈黙の後、タマはハッとした様子で慌てて乳の間から抜け出そうとする――のだが……。


「タ、タマは我のことが嫌いなのか……?」


 ……と、ステラが泣きそうな顔で聞いてくる。


 ――む、むぅ、そういうわけでは……。分かった、このまま行くとしよう。


 騎士として、何より男として、乙女を泣かせるわけにはいかない。

 タマは仕方なしに柔らかな胸の谷間に挟まれたままになるのだった。


「やったのだ! タマの方から抱っこを許してくれたのだ!」


 ステラはパッと表情を輝かせて喜びを露わにする。

 その瞳は喜びのあまり潤んでいた。


 ステラの無垢な表情を見て、タマは (まぁ、良いか……)と、心の中で呟くのだった。

 


 むにゅん、むにゅん!

 ぽよん、ぽよん!

 ステラが歩くたびに、タマの体全体に柔らかな感触が襲いかかる。

 もはやこれでは暴力である。


 ステラは少しばかり筋肉質な体をしているが、胸自体は程よく張りがあり何とも柔らかい。

 心なしか、出会った頃よりも少し成長しているような気もする双丘は、歩いてもタマがずり落ちるようなことはなかった。


「お、ステラちゃんじゃねーか。こんな夜中に――なん……だと……!?」

「す、凄まじい光景なのである……」


 迷宮へと向かう途中、都市の見回りをしていた思われる騎士隊の副隊長ダニーと、その部下であるリザードマンのハワードが驚愕した表情で固まる。

 無論、ステラの胸の中に収まるタマを見ての反応だ。


 ステラの格好は超ローライズのホットパンツに、胸の谷間と下乳がこれでもかと露出された過激ファッションだ。

 それだけでも通り過ぎる男たちの視線を釘付けにするのは必至だというのに、今はタマを挟んでいることで、その双丘が柔らかそうに形を歪めている。


 ダニーたちが夢中になるのも無理はない。


「む、ダニーとハワードなのだ。こんばんはなのだ」


 ここしばらくで、だいぶ人間社会に馴染んできたステラは、二人に向かって挨拶する。

 グラッドストーンでアンデッドの軍勢を相手に共闘したことによって、いくらか仲間意識が芽生えたというのも理由の一つだ。


 ステラは無自覚だ。

 胸を凝視されているというのに、ダニーたちはタマを見ていると勘違いしている。


(む、ダニー殿にハワード殿、ステラの胸を凝視しておるな。騎士としてこれは見過ごせん。よし――)


 無自覚なステラが卑猥な視線に晒されていることに、タマの騎士道精神が揺り動かされる。


 ステラの胸の谷間から少しだけ首を伸ばすと、二人に向かって――

 ギンッッ! と、鋭い視線で睨みを利かせる。


 ビク……ッ――


 ダニーとハワードの体が僅かに竦む。


 可愛いらしい見た目をしていてもタマはSランクモンスターのベヒーモスだ。

 その気になればこれくらいは朝飯前である。

 いや、むしろタマの睨みにこれだけの反応で耐え切った二人の胆力がすごいと評価すべきだろうか。


「ス、ステラちゃん、こんな夜中にどうしたんだ?」


 ダニーがステラの胸元から視線を外しながら聞いてくる。

 さすがに胸を無遠慮に見ていたことにバツの悪さを覚えたのか、些か申し訳なさそうに頭を掻いている。

 ハワードも「うぬぅ」と唸り、自慢の尻尾が垂れ下がっている。


 ――夜の散歩をしていたとでも言っておくが良い。


 どう答えたものか悩んでいるステラに、タマが念話を飛ばす。

 ステラは小さく頷くと「夜の散歩がしたかったのだ」と答える。


「そうか、けどあんまり夜は出歩かない方が良いぜ?」

「うむ、ステラ嬢ほどの美しい娘であれば、良からぬ輩が絡んでくるやもしれんからな」


 ステラをいやらしい目で見ていたとはいえ、二人とも都市の平和を守る騎士だ。

 彼女の身を気遣い、そんな忠告をする。


「大丈夫なのだ。我は強いし、いざとなったらタマが守ってくれるのだ!」

「ハハッ、そういえばそうだったな」

「うむ、タマは正義感もあるうえにとてつもない強者であるからな」


 ステラの言葉に、ダニーもハワードも笑って頷くのだった。


 適当に会話を済ませると、タマはステラの乳に挟まれたまま、ぽよぽよという感触に揺られながら迷宮へと向かう。


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