4話 蜘蛛の繋ぐ糸《シュウ編》
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さて、何故にこうなった?
目の前に座るのは、世界中で大ヒットしたVRMMORPG『Another・Life・Online』(アナザー・ライフ・オンライン)の超人気キャラ、《キリエ・クロスビー》によく似た異世界人の美少女。
俺、天城 秋は…プレイヤーネーム《シュウ》は…そんな女の子と《冒険者ギルド》の建物の中にある食事スペースの二人がけ用のテーブルの1つに向かい合って座っている。
ああ、やべぇ、なんで俺こんな可愛い娘とお食事する事になった?
こんな所、《キリエファンクラブ》の連中に見られたら殺されるぞ…
何故、こうなったかを思いだす。
冒険者ギルドで彼女を見つけ声を掛けた所。彼女は俺の事を覚えていてくれたらしく、『最近、姿を見ませんでしたけど…その、大丈夫でしたか?』と、言ってくれたのだ。
そのことに、なんでだろうな、凄く嬉しくなって、舞い上がって…あれだよ、俺は悪く無いんだよ、だって、大人気のキャラクターがマジで生きててソコに居るんだぜ?
ノリと勢いでお食事に誘ちゃった俺を誰が責められよう?
しかし、ながら…
「…」
「…」
お互いに無言なのだ。
ああ、やべぇ、どうしよう…
女の子と二人きりで食事した事なんて無いぞ?
なにを…何を喋ればいい?
つーか、キリエちゃんも、そんなじっと見ないでくれ…無言がつらい。
「あの、聞いていいですか?」
じーと俺を眺めていたキリエちゃんは、唐突に俺に質問して来てくれた。
「なんだ、なんでも聞いてくれ!!」
身を乗り出しながら俺は答える。
しまった…キリエちゃんが軽く引いている…
それでも苦笑してから、優しげな笑みを浮かべキリエちゃんは口を開く。
「あの…なんで、アレから来なかったんですか?
また来る…て、言って来ないから少し心配したんですよ?」
俺はその言葉を聞いて少しの間固まった。
なん、だと…心配してくれていた、だと?
何故だろう? そんなことだけなのに、とても感動している自分が居る。
仕方ないのだ、だって、この世界に来てからみんな自分の事だけで精一杯で、他人の事なんて心配している暇なんてなくて。だから、この世界に来てから心配してもらったのコレが初めてで…だから、俺がキリエちゃんの言葉で感動するのも仕方ない事で…
あああー、やべぇ、抱きしめ…いやいやいや、それ犯罪だから!! 俺も何、勘違いしてるんだ。キリエちゃんは、あの時《酒場》に居たプレイヤー達全員を心配してくれているんだ。だのに、勘違いにも程が有るだろ…
極力、平然を装い。キリエちゃんに応える。
「それは多分みんな、酒場が開いてなかったから行かなかったんだと思う」
俺の言葉にキリエちゃんは驚いた様な顔をした。
そんなに意外だっただろうか?
店が開いてないのに酒場に行くなんて非常識、《キリエファンクラブ》の連中はしないだろう。
あの時、帰ったのだって何時もだったらサーバーのメンテナンスで、店に入れなくなる時間帯だったからだ。
「そんな理由ですか?
ワタシはてっきり、あのテンションで街中でも囲まれるのかな…と思ってました」
ああー、なるほど、キリエちゃんの心配ももっともだ。
しかし、《キリエファンクラブ》に限ってそんなことはしないだろう。
彼等は、ファンクラブ内で定めた《血の掟》を重んじるからな。
ファンクラブの連中にとって《血の掟》は絶対だ。
それを破るものが居れば、ファンクラブの内外問わず制裁が下される。
《血の掟》とは、『より人間に近いNPC』が住むALOの世界で、プレイヤーが定める一定のモラルのことだと思ってもいい。
例えば昔、こんな事件が起きた。
ALOのプレイヤーの一人が、あるNPCに恋慕を抱き、ストーカー行為を繰り返すと言う事件だ。
あまりにも行き過ぎたプレイヤーの行為に、運営側から処罰が下される程の事件だった。
ソレ以後、プレイヤーの間でNPCに対する暗黙の了解といいますか、一定のモラルが求められる様になった。とは言っても、現実世界の人間に対する普通の対応をしていれば特段問題の無い話なのだが。しかし、それにも関わらず、人気のNPCに対して迷惑な行為を行うプレイヤーは後を絶たず。とうとう、それぞれのNPCのファンクラブが定める《決まり》が、運営側から採用される事となった。
それが、《血の掟》である。
この世界ではどうなるのか解らないが、《血の掟》を破ったプレイヤーにはそれ相応のペナルティーが課せられていた。
《血の掟》の内容は、所謂、アイドルに対するファン達の間での決まりに酷似している。
たとえば、仕事では無いプライベートな時間の時は無闇に囲んだりしない…とかだ。
当たり前だが、覗かない、家に押し入ろうとしない、襲わない…などもある。
いや、まぁ、今更思えば、こんな決まりが必要になるような馬鹿げた世界だったのだ。
だけど、一応、アイツ等の事は弁護しておいてやろう。
「まぁ、アイツ等に限ってソレは無いよ。
律儀に決まりは守る…そんなヤツ等だからな」
キリエちゃんは頭の上に《?》マークを浮かべている。
可愛いな、おい…
そして、数分して思いだしたかの様に切り出した。
「あの…転移者のお兄さん? お兄さんって強いですか?
もし、よかったらお願いしたい事が…!?
どうしたんですか!!
大丈夫ですか!!」
心配そうな顔で見つめて来るキリエちゃん。
ヤバい、ヤバい、ヤバ過ぎる…
シュウは悶えていた、美少女に『お兄さん』と呼ばれて悶えていた…
…駄目だ変な人だと思われる。
それだけは…それだけは、どうしても避けたい!!
内なる理性を総動員し、野獣を落ち着かせる。
「な…なんでも言ってくれ!!
『お兄ちゃん』がなんでも解決してやる!!」
「お兄、ちゃん?…」
訝しげな表情で俺を見るキリエちゃん。
しまった…理性よ負けてるではないか…
シュウ君はもっとクールなキャラにする筈だったのに…
今後の活躍に乞うご期待です!




