2話 とりあえず、俺にこの状況を説明してくれ!!
俺・天城 秋の趣味は家に帰ってゲームをすることである。
小さい頃、親父の実家でファミコンのマリ◯をして以来、ゲームにのめり込む様になった。
本当にいろいろなゲームをした…RPG、恋愛、弾幕、音ゲー、グロゲー、クソゲー、エロゲー
数年前から、ゲーム業界に革命が起きてから、あるジャンルのゲームしかしてない…
『VRの商用化成功』
VR…つまり、バーチャルリアリティーの世界を使ったゲームが世界で初めて発売されたのだ。ちなみに俺はこのとき10歳、衝撃を受け学校をサボった記憶がある。
最初に発売されたのは家庭用ゲームで、機器も庶民の俺では手がさせない程に高額だったし、VR特有の問題点が幾つも見つかった、病院に搬送された人なんかも居た、今思えばクソゲーの部類だった。しかし、売れた。馬鹿みたいに売れた。
それは、やはり、ユーザー皆が保つ『VRに対する憧れ』的なモノが多かったのだと思う。当時中学生だった俺には到底手が出る代物じゃなかったが、喉から手が出る程欲しかった。
そして、ソコから約5年…
劇的な進化を遂げた業界は、遂に『限りなく現実に近いVR世界』を作り出すことに成功する。
しかし、ここで大きな壁に打つかった。それは…
例え世界が素晴らしくとも、そこに住む住人、つまりNPCが人間らしくなかったのだ。
しかし、さらに4年後、また業界は震撼した。
今年の4月に『株式会社ALIVE』というオンラインゲーム運営企業が発表した、『より人間に近いNPC』が生活するVRMMO…『Another・Life・Online』(アナザー・ライフ・オンライン、略称はALO)の登場だ。
本当に人間のようなNPCに多くのユーザー…いや、世界の全ての人間が震撼したことだろう。
俺も初めてプレイしたとき、彼等NPCの人間らしい動きに感動を覚えた程だ。特に人気のあるNPCのキャラクターにはファンクラブや親衛隊なんかが出来ていたりする。
当然ながらALOは大ヒットを、NPC以外も、他の追随を許さない世界観とボリュームは圧倒的としか言いようが無い。俺はこのゲームが大好きだ。
今日も学校から逃げる様に帰宅し、部屋の鍵を閉め。これを買うだけの為にバイトして金を貯め、どうにかこうにか購入出来た、VR専用機器『ヘッドギア』を装着し、ALOの世界に飛び込む。
まるで、蒼い猫型ロボットがタイムマシーンに乗って移動するときに映る背景の様な場所に意識が飛ぶ、そこに当ても無く浮遊する。VR世界に入る為には、この空間に数分は居なければならない。慣れないときは、怖かったものだが今は比較的この空間でも楽しく暇を潰せてる方だ。
さて、前回ログアウトしたのが『キリエの酒場』だったから、今回はソコからか…
キリエちゃんは超人気キャラだからな、今入ったら、『キリエファンクラブ』の人達が一杯居るかもしれない。まぁ、いいか。キリエちゃん可愛いし、俺も一目見てから冒険に出よう。うん、そうしよう。
俺が今後の予定を立てると、徐々に視界が光に包まれて来た。
さぁて、今日も楽しみますかね…
…何処だココ?
ALOの人気スポットの1つ『キリエの酒場』にログインした筈の俺は、全く見覚えの無い場所に出ていた。視界に飛び込んで来るのは、薄汚れた見慣れない壁。辺りには埃が充満しており、思わず咳き込みそうになる。キリエの酒場はもっと小綺麗な場所だった筈だ…本当に見慣れない場所だった。
ドタ…
何かが倒れる音が聞こえた。
驚いて振り返るが、俺の視界を遮る者が現れる。
それは…まるで今、ログインしたかのようなプレイヤー達だった。
なんだ、コレ?
頭に『?』が無数に浮かぶ。
プレイヤー達は皆、困惑しているようだ。
「おい、確か俺、『キリエの酒場』で飲んでたよな?
なんでいきなり、こんな寂れた酒場に来てんだ?」
「なによ、もう!!
私、仲間とキリエちゃんの酒場で待ち合わせてたのに!!」
「おい、これまさか、酒場の限定イベントとかじゃ無いよな?」
口々に何事か呟くプレイヤー達。
その中の一人が喜々とした表情で、ある方向を指差し声を上げた。
「…あれ!!
キリエちゃんそこに居るじゃん、キリエちゃ〜ん」
キリエ…ALOにおける人気キャラの一人だ。男女問わず高い人気を誇り、幅広い年齢層に愛される、キリエの酒場の女店主…公式年齢18歳、だったか?
俺もその姿を見ようと思ったが、人がソコに押し寄せた為、見る事は出来なかった。
まぁ、いいや…とりあえず、変な所に出たみたいだから、一度ログアウトして入り直そう。
バグかなんかだったら、きっと、公式でなにかしらの発表があるだろう。
そう思い、いつもの様に『メニューウィンドウ』を開き、ログアウトのボタンを押そうとするが…
あれ? ログアウトボタンが無い?
なにか、他の連中は騒いでいるようだけど、ソレ所じゃないだろ!!
何故か溢れ出る冷や汗…
皆に声を掛ける、早く事態の深刻さを…
「おい…なんかログアウト出来ないんだけど…」
皆の視線が一斉に向けられ、俺に放たれた言葉は…
「「「「そんなことはどうでもいい!!!」」」」
だった…どうでもいいのかよ!!!
ただ、そんなぞんざいな対応を受け俺は怒るでも無く、驚きに唖然としていた。
何故なら…
周りをプレイヤー達に取り囲まれて椅子に座る、涙目の美少女…
あの娘は、幼さは有るもののどう見ても…キリエちゃんじゃん!!
やべぇ…凄く可愛いんですけど…元々、天使みたいな容姿だったんだ。それが、こんな、こんな…
確かに、ログアウト出来ないとか、そんなことで悩んでいる暇はなさそうだ。
「それも…そうだな…」
俺はそんな台詞を口走っていた。




