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現代でスライムが発見されました~食べると若返るみたいですが、僕は変異種を食べて無双します~  作者: 信仙夜祭


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第2話 庭でポイズンスライムと遭遇しました

 退院許可が出たので、平屋の家に帰って来た。親が購入してくれた持ち家だ。一応、家主は僕になる。

 家政婦さんが、僕の手を取ってゆっくりと歩かせてくれた。


 庭付きの一戸建て。建売り住宅だ。値段は分からないけど、相当な額なのは理解している。アパートでも良かったと思うけど、親の考えは分からない。近隣住民とのトラブルを避けたかったのかな?


 父親と母親は来ない。仕事が忙しいんだろうな。

 弟と妹は、両親と共に都会で暮らしている。滅多に会う事もない。


「病気が移ったらどうすんだよ!?」


 それが、兄弟仲を引き裂く決定的な言葉になった。

 まあ、家は裕福だ。

 空気の澄んだ土地で生活させて貰えるのは、嬉しいかな。


「相馬さん。お食事は、どうなされますか?」


 家政婦さんが、今晩の晩御飯の相談をしてくれた。

 食事か……。


「脂分の少ないモノをお願いします」


「何時もの鳥のささ身ですか? たまには別なモノを食されても……」


「胃に優しいモノで」


「病院食も飽きたんじゃありませんか?」


 そう言われてもな……。

 病院食、老人介護食……。もう、何が美味しいのかも分からなかった。

 最終的に、『豆腐』を選んだ。


 家政婦さんは、「それでは、湯豆腐にしましょう」と言って台所に向かって行った。材料は……、買ってあるのかな?


「そんなに張り切ることもないと思うんだけど」


 家政婦さんの名前は、小鳥遊怜奈《たかなしれいな》さん。

 十九歳の綺麗な女性だ。看護師になりたかったらしいけど、家庭の事情で諦めたのだとか。

 僕の四歳年上。

 僕も本当なら来年から高校生だったけど、こんな体では無理だ。

 全国模試を受けさせられたけど、散々たる結果だったし。


「教科書だけ渡して、テストだけ受けろという教師と国の制度……。意味が分からないよ」


 他の病弱な人たちは、どうしているのか分からない。僕に同学年の知り合いはいないからだ。

 まあ、言い訳だよな。僕が、勉強をしたくないだけだ。



 庭に出て、テラスにある椅子に腰かける。

 椅子が、ちょっと埃っぽいけど、服は洗って貰おう。日光浴を行いつつ、風を感じる。やっと、病室から解放された実感がわいた。


「ふぅ~」


 気を抜いた時だった。


「きゅぅ~」


 なんだ? 鳴き声? 猫? 犬?

 慌てて上体を起こす。

 庭を見ると、紫色の何かが震えていた。


 ――プルルン、グニョグニョ……


「動いている?」


 見間違う訳もない。あれだけ、毎日放送されているスライムだ。だけど、色が違う?

 でも、その毒々しい色……。

 通常のスライムであれば、半透明か薄い水色だ。

 なのに、ここまで明度が低く彩度の高い個体は、見たことがない。毒々しい紫色だし。


 スライムの脱走は、稀にある。普通は見つけた人が、その場で食べてしまうので、全体の件数は分からないけど。

 売れば足がつくし、研究所に返却しても謝礼金も出ない。詐欺が、横行したからだ。

 競売でなら、兆円単位の値がつくのにね。


 最悪なのが、犬や猫、鼠に食べられてしまうことだ。巨大なモンスターが現れる度に、研究所が怒られている。管理体制が甘すぎるみたいだ。

 そして、逃げ出したスライムを研究所に返却する義務もなかった。これは、研究所の責任問題に起因する。


 本当のところは、実際に逃げ出しているのかも怪しいという話だ。自然発生しているのか、海から這い上がって来ているのか……。正式な見解は出ていない。だけど、海外では起きていない事象だった。


「仲間を助けに来ているって、話もあったんだよな」


 僕は、ビニール袋を探して、捕まえてみた。

 上から袋を被せたんだ。


 ――シュワ~


「プラスチックを溶かしている。炭素分解……。間違いない。スライムだ。色的に……、ポイズンスライム?」


 勝手に命名してみる。

 僕は、鞄の中身をぶちまけて、スライムを捕獲した。

 カバンは、革製だ。スライムは、革や皮を好んで食べないのは確認済み。周知の事実だ。


「何をしているんですか?」


 ここで、怜奈さんが来た。

 カバンの中身を見せる。


「ぎゃあ~~~!」


 そんなに気持ち悪いかな?



◇



 自分の部屋に戻り、入れ物を探した。部屋にカバンを置いて、家にある戸棚を片っ端から開けて行く。

 大き目の金属性の鍋……、寸胴鍋が台所にあったので、部屋に持ち帰り、スライムを入れてみた。


「ちょっと狭いかな? ゴメンね。明日は小屋になりそうなモノを探してみるから、今日だけ我慢しておくれ」


 僕は、ペットボトルを与えてみた。

 ポイズンスライムは、嬉しそうに溶かしている。

 最後に固まった炭素の個体が出る……、はずだった。


「コークスもどきが、排泄されるはずだったけど……。出ないな?」


 日本は、スライムの排泄物でエネルギーを賄うようになっていた。

 石油の輸入は、最盛期の百分の一らしい。

 そして、二酸化炭素排出量が多過ぎるので、世界中から非難されてもいる。

 だけど、世界中のプラスチックごみを輸入してもいる。


 スライムが発見される前からの、終わりの見えない問題だった。


 ――カラン


 金属の底板に、何かが落ちた音がした。

 それを拾ってみる。


「これ……、小さいけどダイヤモンド?」



◇◇◇


 僕は、ポイズンスライムに触れてみた。つんつんと突いてみる。

 スライムに毒性はない筈だからだ。猫の口の中の方が、よっぽど怖いとネットに出てたな。


 ――プルルン


「ゼリーみたいにプルプルしてて可愛いな」


 つんつんと突くと、プルプルと震える。暴れることもない。


「ああ、そうだった。水をあげないとね」


 僕は、いつも飲んでいるスポーツドリンクをポイズンスライムにかけてあげた。

 ポイズンスライムの体積が、増える。

 気持ち良さそうだな。

 ペットボトルをあげると、食べ出した。


 何時までも見ていられる。可愛いペットを捕まえた気分だ。

 政府に知られると、取り上げられてしまうかもしれないけど、知られなければいいだけだ。

 怜奈さんには、口止めをお願いしよう。と言うか、気がついてなさそうだし。


 つんつんと突いていると、変化があった。


「つっ……、痛た?」


 人差し指から血が出ていた。


「えっ? 噛まれた? スライムに歯なんてないのに?」


 指先を見ると、スライムのゼリーが付いていた。スライムを突き破るほど、強く触った覚えはない。軽く撫でた程度のはずだ。

 それにスライムに、指を切るほどの硬い組織なんて、あるわけがない。全身が柔らかいんだし。そうなると……。


「ポイズンが、僕の指を食べようとした? 有機物は捕食しないはずなのに?」


 このポイズンスライムは、何かが違うのかもしれない。

 変異種?


 まあいいや、とりあえず絆創膏だな。

 僕は、人差し指を舐めて、リビングに移動した。



◇



「相馬さん。ご飯の用意が、できましたよ」


「ありがとうございます。怜奈さん」


 僕は、人差し指に絆創膏を巻いた。そして、テーブルに着く。

 鍋と、ご飯、みそ汁。そしてサラダだ。とてもいい匂いだな。


「それで……、先ほどの昆虫の卵は捨てたのですか? 外に置いておいたカバンに、卵を産む昆虫がいたなんて……。カバンごと捨ててくださいね」


 怜奈さんは、ポイズンを昆虫の卵と勘違いしていたのか。まあ、スライムだと認識していないなら、それでいいか。

 それと、寸胴鍋を持って行ったのには、気が付いていないらしい。まあ、二人で暮らしているんだし、滅多に使わない調理道具なんてそんなもんか。

 まあいいや、訂正はしない。僕も取り上げられたくないしね。ポイズンは、黙っていよう。


「カバンは、燃えるゴミの袋に入れておきますね」


「おねがいします。それでは、食べましょう」


「「頂きます」」



 湯豆腐は、美味しかった。

 なんだろう? 味覚が戻ってきた感じだ。

 僕にとって、食事は栄養補給でしかないんだけど。


「うふふ。相馬さん。随分と食べましたね。嬉しいです」


「美味しかったので、必要以上に食べてしまいました」



 その後、自室に戻る。

 ポイズンは、逃げずにいてくれた。ペットとして、飼いやすいかもしれない。


「えーと、プラスチックやアクリル以外の飼育小屋……」


 ネット検索で、ガラスの水槽が、目に留まった。小さいけど、重そうだ。だけど、寸胴鍋と同じくらいの大きさだな。

 後必要なモノ……。一応エアーポンプも購入しよう。

 ネット決済で購入を行う。

 明日には、到着するみたいだ。


「ふう~。いいモノが見つかって良かったな。これで、ポイズンを飼えるかもしれない」


 安心したのかな?

 そして、眠気が襲って来た……。久しぶりの満腹感……。


「僕の体内時計は、滅茶苦茶なんだよな……」


 寝たいときに寝る。それだけは、許して貰えていた。

 食べたくなくても、時間が来たら食べる。それだけ守れば、医者は何も言わない。僕が食べると、怜奈さんが喜んでくれる。

 リハビリを兼ねた運動は、それほど苦にはしていない。まだ、手足は動くんだ。来年には、どうなっているのか分からないけどね。


 僕は、寸胴鍋に蓋をして横になった。

 すぐに強烈な眠気が襲って来て、意識を失う……。



◇



 なんだろう……。まどろみの中、人の声が聞こえる。


「血圧上昇中。心拍数も180を超えています。フルマラソンしている状況です! 心臓が持つかどうか!」


「相馬さん! 相馬さん、しっかりしてください! 目を覚まして!」


 怜奈さんの声が聞こえる。

 ああ……、そうか。

 生体モニタリングしている装置が、僕の異常を病院に知らせてくれたのか。

 今は……、多分救急車に乗せられていると思う。


 つうか、お腹痛い。それと、体中が熱い。


 薄れ行く意識の中。

 怜奈さんの手の温もりだけは、はっきりと分かった。


(怜奈さん、好きでした。今までありがとうございました。感謝しています)


 数ヵ月の付き合いだったけど、今までで一番いい家政婦さんだった。

 料理も上手くて、綺麗な人だったしね。



 僕は最後の力で、怜奈さんの手を握り返した。


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