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気持ちで負けない

最後の夏

決勝戦、先攻が広島北ひろしまきたリトルで、後攻、福山ふくやまPhoenixリトルと球場の電光掲示板に表示された。


水瀬みなせ監督から1番ショートで杏菜あんな、3番ピッチャーで虹恋にこちゃんと続々とスタメンが発表されていく。唐突もなくやった事のないポジションで起用されるのは慣れっこではあるが、内野の花形といえるショートをなんの前触れもなしに言われると驚く。エラーしてもいきなり起用する方が悪い。そう考えてひとまず何も考えないで溌剌はつらつとプレーをするだけだと切り替えた杏菜あんなだった。


試合前、円陣を組んでキャプテンの虹恋にこちゃんが述べた。


「何故かスーパーシードで決勝からの登場でみんな驚いたと思うけど、1回戦の気持ちでやろう。相手は勢いがあるから負けずにいこう。特に1番の杏菜あんなちゃんは切り込み隊長としてどんな形でも塁に出る気持ちで打席に立つように。よっしゃ、いくぞー」


時間になり、整列をして試合が始まってサイレンがグラウンドに鳴り響いた。グローブを持った福山ふくやまPhoenixリトルの選手はそれぞれのポジションに散らばって行く。


初回、虹恋にこちゃんは球数を少なくしようと心掛けているのか低めにストレートも変化球も決まっていてどちらかというと三振を狙うよりも相手を打ち取ってアウトをしていこうと見えた。


1回を10球で3者凡退で打ち取っていて、このチームのエースはやはり虹恋にこちゃんだなと感じていた杏菜あんなであった。ベンチに戻るなり、グローブからバットに持ち替えて打席に向かう。


久しぶりに読心術を使うか。そう打席に立つ前に何も考えていないフリをして素振りして右打席に立った。先頭打者ホームランを狙うよりもここは長打で得点圏に進んだ方がいいと考えていつもよりも短くバットを持って来たボールを打ち返した。打球は1塁線を抜けて3塁に到達した。後は頼むよと言わんばかりに打席に向かって声を出す。


2番打者がスクイズで杏菜あんながホームインして1点を先制した。3番打者の虹恋にこちゃんがセンターオーバーの2塁打を放つものの後続が打ち取られて1回裏は1点でおわった。


2回、3回両者共に3者連続三振で決勝戦に来るだけの実力のチームだなと誰もが感じていた。これが、去年だったらと思うとゾッとする気持ちでいる杏菜あんなだった。


4回表、虹恋にこちゃんがコーナーに変化球を見逃されるケースが増えつつもフォアボールを出しつつもピッチャーフライ、ファーストゴロ、ライトフライで抑えた。ここまで球数は25球になる。


4回裏、再び杏菜あんなに打席が回ってきたが際どいコースに投げ込まれてフォアボールを選ぶが2番打者が低めの変化球を引っかけてダブルブレーに打ち取られた。3番打者の虹恋にこちゃんは三振に打ち取られてしまった。


5回表、相手バッターがホームベース付近に立って2つのデッドボールを与えつつも次のバッターをファーストフライ。セカンドフライ。ピッチャーフライに抑えた。ここまでで球数は39球になっていた。


5回裏は先頭打者がフォアボールで塁に出るもその後は3人連続でピッチャーフライに打ち取られた。


6回表、マウンドに上がったのは虹恋にこちゃんではなくて杏菜あんながいた。1点差を守り切らなければという緊張感がある中でストレート、パームボール、スローカーブと1球ずつ投げて3人で胴上げ投手となった。胴上げ投手で嬉しい気持ちよりも全国大会出場を決めれた安堵あんどの気持ちの方が大きかった。

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