前哨戦
短い期間
ゴールデンウィークに入って夏の大会前最後の長期休み期間。この間にチームのレベルアップのために毎年、練習試合が多く組まれている福山Phoenixリトル。
入団1ヶ月ながら戦力として公式戦に出られるとかもと水瀬監督に評価されれば4年生も背番号をもらって試合に出場するし、6年生だから。キャプテンや副キャプテンだからと必ずしも夏の大会に出られるとも毛頭考えていない杏菜。きっとキャプテンの虹恋ちゃんもそうだろうと考えていた。
温情で背番号をもらって試合に出るのはなく、実力で背番号を勝ち取らなければならない。そこはフラットに考えて欲しいと常々、水瀬監督に話をしているキャプテンの虹恋ちゃんと副キャプテンの杏菜。
ゴールデンウィークの前半では県内の広島北リトルや尾道南リトルという普段、顔馴染みのある相手と行われる。自分達の手の内を見せたくないから遠方に行くチームもあるらしいが、水瀬監督もキャプテン虹恋ちゃん、副キャプテンの杏菜と手の内を見せたてもサインがバレようが、負けるつもりはないと考えていたから。
初日、尾道南リトル戦では入団したばかりの4年生は先輩達の姿を見て勉強してねと言わんばかりに誰1人とスタメンには起用されなかった。1番ピッチャー杏菜で3番にキャッチャー虹恋ちゃんと決まった。
まさかの1番に驚いた杏菜だったもののバッターとしては切り込み隊長として塁をかき回す。ピッチャーとしては、ストレートのノビと変化球のキレでどれくらい通用するのか確かめたかった。そして退院して初のマウンドに嬉しさと緊張が入り交じる。
後攻に決まった福山Phoenixリトル。真っさらなマウンドに杏菜。何点取られてもいいから投げられる変化球を全部投げようとまずはサウスポーとして投げる。初球にストレートを投げてカットボール、スローカーブ、ムービングファストボール、パームの虹恋ちゃんのミットをめがけて投げ込む。
わざとボール球を投げるのは杏菜の本意ではないが、虹恋ちゃん許して欲しいと思いでいた。しかし、虹恋ちゃんに見透かされたのか球審にタイムを要求してマウンドにやって来る。ヤバい、怒られると怯えていた。
「杏菜ちゃん、久しぶりのマウンドだけど緊張してる?何か試している?それなら予め言ってね。いつもランナーいない時もセットポジションで投げているけど、ワインドアップで投げてみたら?今のフォームがもっと大きく見えると思うよ」
そう言い残して再びキャッチャーボックスに戻る虹恋ちゃん。ひとまずグローブを左から右に付け替えて言われた通りにワインドアップで投げる杏菜。相手バッターが次々と面白い様に打ち取れる。こんな感覚初めてかもしれない。




