新戦力
あの姿
2月のバレンタインデーだというのも忘れるくらいに野球と勉強に奔走する杏菜と虹恋ちゃん。お互いに今日くらいは勉強をせずに休もうよ。そう嘆きたい気持ちを奮い立たていたのはたんぽぽ女子高校の制服を着る自分達の姿。
「何のために受験をするのか?今らなきゃいつやるの?今でしょ?」テレビのCMでやっていた塾講師の言葉を引用しながら学校の勉強と中学受験の勉強をしつつ、野球の練習もしている。
3連休や長期休みに周りのクラスメイトはどこかお出かけしたよ。親戚が遊びに来てくれて楽しかったという声が聞こえる度に羨ましくも感じていた杏菜
《あんな》。それを聞いて、正直羨ましいとは思ったものの遊びに行きたい。オシャレもしたい。全てを犠牲にして目指すのは何なのかと自問自答をしていた。
そう思いながら毎日を過ごしていたら3学期が終わって修了式で、春休みを迎える。残された長期休みはこの春休みと夏休みだけで、冬休みはないものだと考えていた杏菜。勉強でも野球も疎かにせず最後までやり切ると決めていた。
4月になって福山Phoenixリトルにも4年生になる男の子達が入団すると練習前に水瀬監督から紹介されてキャプテンでもある虹恋ちゃんから簡単な挨拶をして怪我をせずにチーム全員で頑張ろうと話をして練習に移った。
野球が好きなで身体能力が高い子もいれば、野球は小さい頃から見ているけど実際にグラウンドで練習をするのは初めてと言う子がいた。
どうしても野球の練習は厳しくて初めてグラウンドで野球をする子が弱音を吐こうとすると、キャプテンの虹恋ちゃんや副キャプテンの杏菜が声をかける。それでも泣き出しそうな子には何て声をかけてあげればいいのかなと考えていた杏菜。
練習か1週間経ち、始業式で学年が上がって野球の練習が大変な子に何て声をかけるのが最適なのかを虹恋ちゃんに相談をしていた杏菜。後は任せてと言わんばかりに親指を立ててサムズアップをする虹恋ちゃん。
次の土曜日、いつも通りの練習をしていた杏菜と虹恋ちゃんに練習後に1人の男の子がやって来て声をかけてきた。
「ボク、虹恋さんや杏菜さんみたいに野球か上手じゃないし、昔から何もするのにも不器用で練習だけでなくて家で素振りとかしてても中々上達しないし、野球の実力がないからリトルリーグ辞めた方がいいですか……?」
そう涙目で訴えてきて頭を撫でる虹恋ちゃん。続けて声をかけた。
「最初から野球が上手い人いないから気にしないで。虹恋も最初から野球が上手だった訳じゃないし、隣にいる杏菜ちゃんもそうだよ。偶々《たまたま》バッティングセンターに立ち寄って降ったらいいスイングだからって水瀬監督にスカウトされて入団したけど、フライは取れない。まともにキャッチボールは出来ない。足は遅い選手だったけどそれでも頑張って練習した結果が今の杏菜ちゃんがあるよ。ね?」
勝手に読心術を使って話しているなと思いつつも、図星でもあった。杏菜も続けて野球をしたいって思ってくれているなら頑張ろうと声をかけた。その男の子は元気が出たのか、お辞儀をして走って去って行った。
この時、杏菜は虹恋ちゃんにその時いなかったでしょとは敢えて言わなかった。




