連鎖
悪循環
まさかの肉離れをしてしまった杏菜。今までに大怪我をして来なかったため、野球も出来なければ歩くのもお風呂に入るのも大変だった。野球を始めてもうすぐ1年が経とうとしているが、逆に怪我をしなかったのが不思議なくらい。突き指やデッドボールで怪我をしてもおかしくない状況であったのに。そう考えていた。
車椅子に乗って移動しようかと考えたが、学校では階段やデコボコしている場所もあって悩んだ末に松葉杖で生活をしようと決めた。とはいえ、松葉杖の生活は決して楽ではない。
急いでいても早く移動出来ないし、牛歩ではないが1歩ずつゆっくり進むしか出来ないのはもどかしい。学校では理科室や音楽室の移動、給食当番の時は教室に持ってきて配膳をして、給食室に返すといった日常生活に支障をきたしている。杏菜ママ、杏菜パパは気にしなくていいと言うものの、少なからず迷惑がかかっている。
学校にいる時は虹恋ちゃんやクラスメイトの男の子達が松葉杖を使って歩いている杏菜を見かけると給食当番を代わると担任の先生に打診をしたり、漢字ノートや提出物の当番であっても代わりにやってくれたりと人の優しさを感じていた。ずっとこのクラスにいたいと感じていた。
そして3学期の修了式の日を迎えた。5年生になったら林間学校があるから参加したいと思って教室から下駄箱に向かって松葉杖を付いて向かっていた。その時、1つずつゆっくり降りていたが杖を付く瞬間に誰かとぶつかって階段から落下した杏菜。痛くて動けず、担任の先生から保健室の先生と挙ってやって来て大騒ぎになった。
そしてまた救急車に乗って病院に運ばれた。この数週間、数ヶ月でまさか2回も救急車に乗るとは考えてもいなかった杏菜。病院に着くなり、その場で入院を通達された。ため息の声と落胆以外何も出てこない。
水瀬監督、そしてチームメイトの福山PhoenixリトルのグループLINEにも、こういう経緯で入院したけど、ムリに時間を作ってお見舞いに来なくても大丈夫だよ。春休みを満喫してねと伝えた。
そうLINEを送りつつも、肉離れしなかったら虹恋ちゃんとお花見したかったな。どこかお出かけしたかったなと嘆いていた。仮に入院してなくても肉離れしてるからどこにも行けないのは変わらないけどと落ち込む。
杏菜が連絡を入れて約1時間、病室の扉が音をして誰かが入ってきた。そこには水瀬監督がいて、フルーツ盛りを持ってきてくれてよかったらと共に食べていた。
そして杏菜に声をかけてくれた。
「野球初心者だった杏菜ちゃんが1年も経たないうちにチームの柱になるとは正直考えてなかった。嬉しい反面、色々なポジションを守らせて負担かけちゃっていたらゴメンね。野球でも、日常生活でも困ったら何でも相談してね。解決出来るかは分からないけど、話は聞けるからさ」
ここぞとばかりに急にやった事のないポジションをしてって言われても心の準備が出来てない。それならばメインでやっている子にチャンスを与えた方がいいのではないかと起用面について話した。
水瀬監督からは、杏菜ちゃんは器用でスグに順応出来るからと答えになっていない答えが返ってきた。




