なんてこった
予想外
練習試合の第1試合、それも1回表で足を痛めてしまい試合から退く結果になった杏菜。コーチに足を左右に曲げられると激痛が走る。調べるとグラウンドの近くにレンタカーを借りられるお店があるからそれで行こう。そう聞かれたもののとても立って歩ける状況ではなかった。
仕方なく救急車を呼んでもらい、近くの整形外科に搬送された。コーチが救急車に付き添ってくれている道中もすみませんと只管謝り続けた杏菜。軽症でスグに治してまたグラウンドに戻りたい。それ以外の言葉が出てこない。
整形外科に着くなりCT検査とMRI検査の両方が実施されて診断に怯えながら自分の名前を呼ばれるのを待っていた杏菜。コーチの肩を借りて歩くのでも激痛で今にも涙が出てきそうなレベル。
しばらくすると、福山杏菜さんと名前が呼ばれる。軽症でありますようにと何度も願いながら入る。そして先生から足にあるこの筋繊維が完全に断裂している。病名は肉離れと診断された。それと1番グレードの高い重度だった。
それを聞いて意識を失いかけた杏菜。そうですか、じゃあ治るまで安静にして治ってからはストレッチや軽いウォーキングから始めますね。というくらいにスグには受け入れられなかった。
先生からは淡々とこの様子だと3ヶ月から半年くらいは時間がかかります。近くの整形外科さんで改めて診てもらって痛み止めとギブスをするか車椅子にするか検討してください。そう言われ、足に包帯を巻かれて病院を後にする。
コーチから水瀬監督、そして杏菜パパと杏菜ママに連絡が入って迎えに来てもらう形になった。とはいえ、ずっと病院の前で何時間もいる訳にもいかずに近くにあったファミレスで待った。
コーチに試合に戻らなくていいのか尋ねた杏菜。すると選手を監督する、選手を見守るのが大人の役目だからと水瀬監督に連絡をして許可をもらっていると話してくれた。
片道約5時間かけて病院近くのファミレスに来てくれた杏菜パパと杏菜ママ。着くなりコーチが頭を下げる。
「今回はコーチの私、監督である水瀬が大事なお子様を預けさせてもらっているにも関わらずこのような大怪我をさせてしまって大変申し訳ございませんでした。完全な指導力不足による結果だと思います」
そう何度も深々と頭を下げるコーチに頭を上げる様に促して、杏菜パパが逆走運転や止まっていても追突事故起きる可能性もあるので。今回も試合中の出来事なので不可抗力なのでと宥めていた。
杏菜としては、こういう困った時に自分の味方になってくれる人がいるって言うのは有難いし、そういう大人になりたいなと感じた1日であった。
野球をするのはムリだとしても、日常生活をどこまで送られるのかと不安な杏菜であった。




