賑やかで騒がしい
お見舞いのはずが
4人部屋の隅のベッドで寝ている杏菜。そこまでの重症じゃないからなのか1人部屋ではなくて4人部屋にいる。だが、周りは誰もおらず1人ポツンといて、虚しい気持ちでいる。誰かいればお喋りしたりして仲良く出来るのになと感じていた。
春休みに入って3日目、病室の外からコンコンと音が鳴る。誰か杏菜のお見舞いに来てくれたかなと内心ワクワクしながらもどうぞと告げる。
そこにいたのは虹恋ちゃんだった。読心術でバレるかも知れないが、とりあえず笑顔で気丈に振舞って元気そうなアピールをする。春休みでリトルの練習あって忙しい中、態々《わざわざ》お見舞いに来てくれてありがとうと頭を下げる杏菜。
実はね……。そう言って何かを躊躇っている虹恋ちゃん。読心術を使えば何を考えているかはスグに分かるが、言いたくない話もあるだろうから言いたくなければムリには聞かないよ。そう前置きをした。
「杏菜ちゃん、聞いて驚かないでね。昨日の練習で宏斗君と将希君が挟殺プレーの練習をしている時に2人の足が絡まって転んでそれぞれの利き足を骨折しちゃったみたい。この病院にいて、杏菜ちゃんのお見舞いが終わったらそっちにも行こうかなと……」
練習中や試合中に怪我は避けられないよね。虹恋ちゃんも気をつけてねと伝えると病室を後にする虹恋ちゃん。怪我人が増えてチームも大変だなと思っていた。
数時間後、虹恋ちゃんが杏菜のいる病室に入ってきた。今度は足に包帯を巻かれた状態の姿になっている虹恋ちゃんに驚く。
お見舞いに来たはずの虹恋ちゃんがなんで足に包帯を巻かれて杏菜の隣にあるベッドにいるの?そう思わず聞いてしまった。
「杏菜ちゃん、数時間ぶり。宏斗君と将希君のお見舞いが終わって帰ろうとしたら階段に躓いて転んじゃった。痛いなと思って検査してもらったら剥離骨折してるみたい。だから病室でも宜しくね」
怪我をして落ち込むどころか、隣のベッドにいる杏菜に宜しくと言える虹恋ちゃんはまさに強心臓そのものだ。
これにて、福山Phoenixリトルの誇るピッチャー陣4本柱、最強クリーンアップのカルテットが揃って離脱した。仮に抜けても大会を勝ち抜くだけの力はチーム力はあると自負をする杏菜。とはいえ、4人が同じタイミングで揃って離脱というのは水瀬監督やコーチ含めても誰も想定していなかっただろう。
特に宏斗君と将希君にとっては最後の夏になる。そこまでに退院して試合に出れたらないいなと勝手に思っていた。
そしてその日の夕方、今度は杏菜と虹恋ちゃんのいる病室に宏斗君と将希君がやって来た。理由を聞くと、他の患者さんの都合で押し出される形でやって来たという流れみたい。
まさか病院で福山Phoenixリトルカルテットが病室で再開するとは思いもしなかった。心の知れた中とはいえど、複雑な気持ちでとりあえず全員で挨拶をする。




