残暑
秋に向けて
夏休みが終わり、2学期が始まった。夏の大会が終わったとひと段落したいと考えていた杏菜。だが、そうはいかずに9月末には秋季大会が行われるというハードなスケジュールになっていた。
授業が終わり、部活がある時には科学部に行ってから近くの公園でグローブとボールを持ってパームボールの練習をする。部活がない日は公園で同様に練習する日々を過ごしていた。
いつもいつも宏斗君に声をかけて練習に付き合わせるのは何だか申し訳ない気がしていた。移動中や旅館での様子は歳上とは思えないくらい、無邪気でにお喋りしていたり枕投げをしているものの学年は1つ上の5年生。
いつもいつも歳上をあごで使うのも失礼だなと思っていた。左投げでも右投げでもどっちでもいいからまずパームボールを習得したいという気持ちで奔走していた杏菜だった。
そして土日はリトルの練習が河川敷でのグラウンドで行われる。ブルペンやシート打撃の練習では習得を試みるパームボールだけでなく、ストレートのノビやムービングファストボールの他に覚えたてのスローカーブやカットボールのキレや精度を上げようと取り組んでいる。
秋の大会が始まるので残り1ヶ月を切っている状況で果たしてピッチャー福山杏菜として、どこまで夏よりもひと回りもふた回りも成長出来るかがカギとなる。
ピッチャーとしてピッチングや投内連携の他に足腰を鍛えるためにランニングとそれだけすればいいと言われたらそうでもない。
複数ポジション、複数人ピッチャーを基本としている福山Phoenixリトルにおいてはマウンドにいない時は他のポジションに付く。そのため守備練習やバッティング練習も欠かさずに行わなくてはならない。
ケースバッティングでは、外野フライを打つ練習や送りバントにスクイズ、進塁打を打つ練習と夏での県大会や全国大会での試合を踏まえて練習が行われている。夏の屈辱は秋に晴らす。これが今、チームの掲げるモットーであってモチベーションになっている。
劣勢でも逆転勝ちしてきた経験を活かし、どうすれば同じ状況になった時に逆転出来るのか。大量得点の試合をスタンドで見たり、島根県の浜田松蔭リトルに味わった12者連続三振での完全試合の敗北。
各々《おのおの》が自分の役割りと何が足りないのかを考えながらそれを補うために練習をしている杏菜。スタミナ不足で、とても1試合1人で投げ切れるだけの体力はまだない。
ピッチャーとして、バッターとして全てのレベルアップを目指している杏菜だった。大会の1週間前、紅白戦をしようと決まってそこで結果を残して大会への弾みを付けたいと考えていた。
しかし、無情にもその紅白戦は大雨によって流れてしまってその上ボールを使った練習おろか練習は中止となってしまう運びになってしまった。




