屈辱
記録
朝、大広間に行くと空気が重たかった。
朝御飯を食べ終わった後に杏菜が手を挙げて喝を入れなければと思い立ち上がった。
「昨日の浜田松蔭リトルの試合を見て、何ずっと項垂れているの。確かに相手は強敵かも知れないけど、戦う前からそんなんでどうするの?そんなんじゃあ、県大会に負けちゃったチームや準決勝で対戦する予定だった広島北リトルの選手達に失礼。やる前からそんなのでどうするの?気合い入れて」
杏菜の言葉に感化されたのか、キャプテンが円陣を組んで士気を高めてやっとやる気が漲っている姿を見て、後は試合に臨むだけだと感じていた。
旅館を後にした福山Phoenixリトルは球場入りをして、3塁ベンチに向かった。ジャンケンで先攻と決まり、この日の先発は3番に左のエース宏斗君、4番にファーストに将希君、6番ライトで杏菜とスタメン発表された。
相手ピッチャーのマウンドを見ると、ツインテールをしている女の子で、杏菜と同い年くらいでどんなボールを投げるのか非常に気になっていた。
1回表、先頭打者が3球三振に倒れて球速はそこまでないけど手元でノビのあるストレートだから全員短く持った方がいいとアドバイスをされた。
だが、3者連続三振てあっという間に攻撃が終わった。その裏に立ち上がりがあまり良くない、宏斗君がマウンドに上がった。
いきなり1番打者に2塁打を打たれ、その後も連打で気がついたら1回だけで打者1巡されて5点ビハインドとされる。まるでバッティングセンターやフリーバッティングみたくどこに投げても打たれる感じがしていた。
その後、セーフティーバントや盗塁にエンドランとやりたい放題されて1回裏が終わる時には電光掲示板に10点という数字が刻まれていた。
杏菜にも打席が回ってくるから気合いを入れようとベンチ、ネクストバッターサークルの中で準備をしていた。そして打席が回ってくるもののスリーバント失敗で記録が三振となった。
2回裏、将希君がマウンドに上がって投げるもののストレートも変化球も全く歯が立たない。左右のエースがマウンドに上がっても抑えられない恐ろしい打線だなとライトから見ていた。
打線はというと、バットに当たったのは杏菜のスリーバント失敗だけ。どうやったらバットに当たるのか?ベンチで嘆いていた。
3回裏、やっと杏菜がマウンドに上がる。県大会に1イニングだけ投げただけでこの打線をどうやったら抑えられるのか分からないものの、気持ちで負けずウデを振るだけとマウンドに上がっていた。
ストレート、チェンジアップ、ムービングファストボールと何を投げても打たれる。ならばとクイックでタイミングを変えたり、上から投げてみたり、下から投げてみてもダメ。ならばと審判にタイムを要求した。
右投げに変えて投げても変わらず、投球制限ギリギリに近づいていた。マウンドに泣きそうになりながらも投げ続ける。やっと投げきった杏菜。
3番の宏斗君が三振に倒れ、ホームベースを挟んで礼をした。終わってみれば30対0の完敗で終わる。相手ピッチャーに参考記録ながら完全試合と12者連続三振という大会記録のオマケ付き。
僅差で負けたなら悔しいと思えるが、ここまで点が取られると涙も出てこない。悔しさを払拭するためにホントに旅行して帰る運びになった福山Phoenixリトルの選手達であった。




