心配
間に合うのか
困っている女の子を助けただけなのに、どうしてパトカーに乗せられる杏菜。試合に出場するプレイヤーではなく観客としてリトルリーグの決勝に行くとずっと勘違いされていた。
それならユニフォームじゃなくて私服で行きますよと何度説明してもパトカーから降ろしてはくれなかった。そして警察署に着いた。周りを見渡すと、今試合が行われている試合会場が横断歩道を渡った所にある。それをみてちゃっちゃと済ませて早く球場に行こう。そう考えていた。
困っている女の子がいたから警察に電話して、第1発見者としてその時の時間と流れを説明してもまだ解放してくれない。これ以上、杏菜に何を喋れと言うのか全く分からない。
そして掛時計を見ると午前10時半になろうとしていた。別室に案内されて婦警さんがやって来た。そして、被害者の女子校生が何度も頭を下げてありがとうと何度も言ってくれた。正直、感謝しているのならば早く杏菜を解放して欲しい。試合が終わってしまうと思わず口に出してしまう。
婦警さんに事情を説明するとリトルリーグの試合なのに長い時間拘束しちゃってゴメンね。遅いかも知れないけれど、試合頑張ってねとやっと解放された。ひとまず、水瀬監督に連絡を入れて横断歩道を渡る。
小走りで球場に向かい、福山Phoenixリトルの選手ですと会場スタッフさんに聞いて1塁ベンチに向かう。この時間に球場入りって何してたの?そういう顔をされながらも気にせずにベンチへ行く。
遅くなってすみませんと水瀬監督に伝えスパイクを履き替えながら今の試合展開について聞こうとしていた。そして電工掲示板を見てと言わんばかりに指を差す水瀬監督。
とりあえずビンクのリストバンドをして電工掲示板に目をやるととんでもない展開だった。最終回6回裏で尾道瀬戸内リトルと1点差の7対6で2アウト3ボール2ストライクという絶体絶命の場面であった。
という訳だからヘルメット被って、バットを持って打席に向かってといきなり告げられる。審判にタイムを要求して代打に向かう杏菜。ここで打ったらサヨナラ勝ちだぞと水瀬監督をはじめ、ベンチでそういった声をかけられる。
球場に着いたと思えばこの場面で代打。それもフルカウントで相手ピッチャーのボールを1球も見ていない人間にサヨナラを期待するのもどうかと思う。とはいえ、ここで決めたら全国大会出場が決まる打席。フォアボールも許してくれないという恐ろしいベンチ。短く持ってファールで粘る。
2球目、甘く入ってきた高めのストレートを振り抜いた杏菜。打球はセンターの頭を超えてワンバウンドしてフェンスを越えた。世にも珍しいサヨナラエンタイトルツーベースで試合が決まる。
この瞬間、2人のランナーが返ってきて代打サヨナラ勝ちで福山Phoenixリトルの全国大会出場に貢献した杏菜。
試合が終わるサイレンが鳴り響いたと思ったら横断歩道の向こう側からアナウンスがあって「福山杏菜さん、至急警察署にお越しください。話はまだ終わっていませんよ」
そのアナウンスで球場全体が杏菜に向けられ、表彰式を欠席してコーチと共に警察署に行く羽目になってしまった。




