偵察
明日は我が身
準決勝進出が決まり、ここまできたら是が非でも全国大会出場を決めたいと思っていた福山Phoenixリトルのチームメイト。対戦相手はというと全国大会に何度も出場して、準優勝にもなった実績のある広島北リトルとの対戦が決まった。
試合前日の金曜日、水瀬監督から明日の先発は福山で行くと通達された。この大会初めての先発に嬉しさと緊張があった。打たれてもこのチームは守備がいいし、何点取られても取り返せるくらいの力量があるからマウンドに上がったら強気で投げると意気込んでいた。
そして土曜日当日、軽く投げ込みをして観光バスで移動しようとしていたその時に水瀬監督の元に電話がかかってきた。
淡々と電話を聞いている水瀬監督。バスに乗っていいのか?それとも乗らない方がいいのか?混乱していた杏菜達。
電話を切って、暗い表情をしている水瀬監督から告げられた。
「今日、対戦する予定だった広島北リトルの選手が特定の感染症が出たから今日の試合はなしで、不戦勝という形で決勝進出になった。それで繰り上がりでもう1試合の準決勝が本来試合する時間に行われる予定みたいだから見に行くから、全員バスに乗るように」
その話を聞いて試合を戦わずして決勝進出に喜んでいるチームメイトは1人もいなかった。いつ自分達が同じ境遇になるのか分からないし、トーナメントである以上負けたら終わりとなるもののそれは相手に勝って初めて言える台詞になる。
そして準決勝の舞台にバスが向かう。準決勝と決勝はプロ野球でも使用される球場で行われる予定となっている。バスを降りてスタンドで試合の戦況を見て、どっちが勝ってもいいようにコーチがスコアブックを持って試合時間を待つ。
そして準決勝が始まった。準決勝まで勝ち上がるチームだからきっと接戦で、状況によっては延長戦にまでもつれるのではと考えていた杏菜。
だが、試合が始まってみると杏菜の予想は外れる。先攻の尾道瀬戸内リトルが初球からフルスイングをしていた。まるでフリーバッティングをしているみたいに常に塁上を賑わせていた。
初回から10点を取り、試合が終わってみれば15対0というホントに野球の試合を見ていたのかと思うくらいのスコアになっていた。この尾道瀬戸内リトルとの試合をするのが怖い。
ピッチャー福山杏菜の目線から試合を見ていると、自分のピッチングスタイルならどうすれば抑えられるのか、そう考えていた。本来ならこの日投げる予定だったが、決勝でスライド登板については聞いていない。
0点で抑えるのはまず難しい。だから杏菜もどこかしらで投げなきゃいけないと感じていて、試合後に宏斗君に声をかけてブルペンで投げ込みをしたいとお願いをした。
お互いに50球ずつ投げ合って、翌日行われる決勝に向けて準備をしていた。




