飛ぶ鳥を落とす勢い
快進撃
杏菜の所属している福山Phoenixは結成してまだ5年目の新興チームだが、2つ勝って初めて準々決勝進出を決めた。
毎年1回戦負けで、中々勝てずにいたが前の監督から当日、コーチをしていた水瀬監督に変わってチームの底力が上がったと他のご父兄からその話を聞いた。
準々決勝の相手は庄原NEXTリトルとの対戦が決まっている。こちらはチームが結成して数ヶ月で破竹の勢いで勝ち上がってきた。相手が全て4年生で実力以上に勢いに乗せたら手が付けられないと杏菜を含めて全員が怯える。
土曜日の試合まで残り数日、早め早めの継投が予想されると考えた杏菜はいつも河川敷にあるグラウンドに自転車で行っているがスタミナを付けるのもあってランニングしながら向かうことにした。
練習では、シートノックやシート打撃でこの場面になったら送りバントや進塁打にエンドランであったりどの打順であっても何でも熟せるために練習時間の多くを割いていた。
後の時間はブルペンで投げ込みをして、ピッチャー3人で只管走り込みをする。終わってもランニングで走り込みをする。ピッチャーとしてそれくらい大切にしていた。
土曜日、庄原NEXTリトルとの試合で後攻と決まった。この日朝からあまり体調がよくなかった杏菜は水瀬監督にあまり体調が優れない旨を伝えた。
初心者が試合に出してもらっているだけでもありがたいのに、体調不良くらいで譲るのはどうなのかと言われかねないがムリして試合に出場してもいつものパフォーマンスを出せないと感じるからだ。
水瀬監督には、体調が優れないものの1イニングであったり1打席ならどうにか試合に出れる用意はしますとは伝えておいた。
この日はベンチスタートの杏菜、練習や慣れないポジションでの疲労もあるのかなと思いつつ水瀬監督とコーチの間にて試合の戦況を見つめる。
初回、先発の宏斗君がいきなりつかまって4点入れられて劣勢で肩で息をしている。キャッチャーがタイムを要求してひと声をかけてお尻をポン叩いて戻った。その後は抑えた。
初回から4点入れられてベンチに戻ってみんな項垂れている。雰囲気が悪いと感じた杏菜が声をかけた。
「まだ4点取られただけ。練習でしてきたのを思い出して1人ずつ自分の出来るプレーをしよう。1点ずつ返していけばまたまだ諦める点数じゃないよ、さぁ頑張ろう」
そう発破をかけた。1番打者が打席に入る時に先頭大事だよ、粘って塁に出ていこうと声をかけた。
1番打者がフォアボールで塁に出て、エンドランにタイムリーと打線が繋がって3点を入れて1点差に縮めた。
先発の宏斗君も立ち直って、その後は6回まで1人のランナーも出さない尻上がりの投球を見せて最終回6回裏を迎えた。
この回の先頭打者がバットを短く持って粘ってフォアボールを塁に出て盗塁を決めて0アウトランナー2塁に進めて相手のパスボールで3塁で犠牲フライで同点に追いついて、連打連打でランナー1塁、2塁。送りバントを決めて1アウトランナー2塁、3塁にして、左中間に抜けるタイムリーを放ってサヨナラ勝ちをした。
この試合、杏菜は試合に出場しなかったものの福山Phoenixリトルの底力を感じた試合となった。




