ギモン
聞き間違いなのか
夏の大会が始まり、グラウンドに広島県のリトルリーグに加盟するチームが整列をして選手宣誓が行われて熱い大会の幕が開いた。
全国大会に向けての戦いがここから始まるのかと思うと冷静にと自分に言い聞かせる杏菜。そして開会式が行われたグラウンドは今度、戦いの舞台に移り変っていった。
杏菜の所属する福山Phoenixリトルは1回戦の尾道南リトルとの試合の準備が進めれていた。
1類ベンチに陣取って水瀬監督から試合が始まるにあたり、スターティングメンバーが発表された。1番から順に呼ばれていき、大きく返事をしていく。そして6番キャッチャー福山とコールをされる。
驚きのあまり、はいと返事をしなきゃいけない場面で思わずえ?ピッチャーじゃなくて、キャッチャーですか?ミットも持っていないしどうしてですか?
そう聞いてしまう。急造ピッチャーはあっても急造キャッチャーは初めて聞いた。
そのままスタメン発表が続いてこの日の先発は宏斗君と決まった。公式戦初出場がまさかの練習試合おろか、練習ですら守っていない場所での起用は想像していなかった。
腑に落ちない杏菜は水瀬監督にキャッチャー起用の理由を聞いた。メインの子は身内の不幸で申し訳ない気持ちで家族と共に朝から出かけている。ならばサブの子もいるのではと言ったら手首を痛めているみたく、そこで器用な杏菜が選ばれた。
これでチームを勝ちに導いてくれ。頼むと黄色のキャッチャーミットを渡されて肩を叩かれた。初めてこんなにも身震いしたのは初めてで、負けても杏菜のせいにしないでくださいよ。それだけを伝えた。
サブキャッチャーの子に宏斗君に出す時のサインや配給割合、そして内野に出すサイン等を短い時間で必要な情報を整理する。恥ずかしいが、その段階から始める初心者キャッチャーの杏菜。
ブルペンに行って宏斗君のボールを受ける。ボールが走っていていつもブルペンの横で投げている姿を目の当たりにしているが、まさかキャッチャーとして宏斗君のボールを受ける日が来るとは考えもしなかった。
杏菜個人としては、どんなピッチングが出来てどんなバッティングが出来るのか。それでチームに貢献する。それしか考えていなかったが、初めて神頼みをしようと思った。
キャッチャーはピッチャーと同じくらい重責で試合の勝ち負けに影響する。どうして初心者なのにこんなにも期待をされているのか未だに分からない。
とはいえ、いつまでもビビっていたら先発の宏斗君も不安がるしチームの士気も下がる。チームメイトには申し訳ないけど、負けたらゴメンねという気持ちで強気のリードでいこうと決めた。
15歳の杏菜へ
リトルリーグの公式戦がまさかのキャッチャーっていうポジションで、練習試合おろか練習でもやっていないのにぶっつけ本番で怖いけど頑張るね。勝ちに導けるためにも気持ちだけでも強気でいくね。




