楽しみ
短い間に
紅白戦ながらピッチャーとしての初登板を終えた杏菜。先発でもリリーフでもいつでも投げられる準備をしておかないといけないと感じていた。日を増してチームから新入団選手の立ち位置から戦力として認められてきた気がして嬉しい。
左のエース宏斗君、右のエース将希君に並ぶ3本柱として水瀬監督からも期待をかけられていた。投内連携とブルペンで投げ込みをする時以外は基本的に3人で下半身強化で只管走り込みをしている。
1にも2にも長いイニングを投げるにはスタミナがないとダメだからと宏斗君や将希君から耳にタコが出来るくらい言われていた。ピッチャーにとって投げ込みと同じくらいスタミナが大事だと知った杏菜。
ブルペンでは基本的にはストレートを中心に投げる杏菜。ムービングファストボールやチェンジアップといった決め球を持っているものの、それよりもストレートに拘る。理由としてはプロ野球の中継でピッチャー出身の方がピッチャーは変化球を活かすにもストレートが大切だと話をしていたのを聞いたからである。
素人がプロの真似事するなと言われたとしても、的外れでなければ参考にしようとするのが杏菜流である。
7月入る前に最後の練習試合、ここで初の対外試合で自分の実力が対戦相手にどこまで通用するのかを確認するラストチャンスだと考えていた。それは、バッターとしてもピッチャーとしてもどちらでも通用するのかが不安は拭えない。
気分をアゲアゲにしている杏菜とは裏腹に時期は梅雨。梅雨前線がイジワルをしているのか、紅白戦をして以降全然晴れない。近所の体育館を借りて基礎トレーニングをする日々。それも大切だけどやはりボールを使った練習をしたいなと感じているのは杏菜だけではない。
このままではスタミナが足りないと感じていた杏菜は警報が発令されるレベルの雨でなければカッパを着て近所を走り込む。スタミナも技術もないならば、補うしかない。そう考えていた杏菜。
すると見覚えのある人がカッパを着て走っている。それは宏斗君と将希君だった。走りながら話を聞いてみた。
すると試合でも雨で投げなきゃいけない状況があるからその時にも対応出来るためにもこれくらいの雨ならば走ろうと前から決めていると話してくれた。2人とも意識が高いな、チームを引っ張る大黒柱はこうでなくちゃと思いつつも自分もそこに追いつけ追い越せの気持ちでいた。
良くも悪くも杏菜にとって戦う相手はほぼ初対面。データもなければ性格も知らない。先発でもリリーフでも任せてと宏斗君と将希君に言えるくらいにならないと。
そう思いつつ走っていたら俺らが打たれた時は頼んだよ。「サヨナラの女神こと福山杏菜さん」
そうイジってきたのでそうならないピッチングをするのが貴方たちの役目でしょと逆に言い返した杏菜であった。まさかこんなにも打ち解けるとは思いもしなかった。




