マニア
操る
それから土日まで授業が終わって、科学部で実験をして片付けをしてから宏斗君と河川敷のグラウンドでの練習は続いた。
ブルペンやマウンドで何となく感覚を掴んだ杏菜。運動能力に関してはそこまで劣っているとは昔から感じていた。
ある日、キャッチボールをしながら宏斗君から尋ねられた。
「福山はどういうピッチャーを目指したい?ストレートでガンガン押して三振を取るのか?それとも打たせて取る感じなのか?」
その問いは早かれ遅かれ聞かれると思っていたが、迷いもなく杏菜はこう答える。
「杏菜の理想は1人を1球で抑えて、ノーヒットで試合を締めるのが理想かな。下調べした時にリトルリーグって球数制限があるでしょ?ならば三振狙ったらその分球数が増える。球数が増えれば疲労も溜まるし、何かあって投げなきゃいけなくなっても投げられなくなるから」
宏斗としては、その考えはなかった。マウンドに立てばその試合1人で投げ切るのがエースの役割だと考えていたからだ。
キャッチボールを終えて、ブルペンに向かう。
ブルペンのプレートをならしていると宏斗君がそういうならチェンジアッブという変化球を覚えたらどうだと言って握りを見せてくれた。
チェンジアップの握りは、親指を人差し指で縫い目にそう形で握って投げるボール。
試しに投げてみるといきなり上手くいくほど甘くない。まずはストレートとチェンジアップを投げれれば打者のタイミングをずらせる。まずはこのチェンジアップという変化球をモノにしたいと考えた。
帰りに河川敷と家の間にある書店に立ち寄って自分の投球スタイルに合う変化球というのはないのか調べたいと考えた。
店内を歩いているとスポーツコーナーを見つけて、変化球について詳しく書いてある本はないかと見渡していると「変化球のススメ」という本を見つけた。ペラペラめくっていると分かりやすく解説してあってお小遣いで買おうと決めた。
とりあえず家に帰ったらまず宿題を終わらせて、翌日の用意を済ませて晩御飯を食べる。自分でいうのもどうかと思うが、杏菜の手は小さい。そして握力もそこまである訳ではないとなると、フォークボールやスプリットフィンガード・ファストボールと呼ばれる変化球は習得出来ないだろうなと考えていた。
お風呂に入りながらも遅いストレートでどうやったら抑えられるだろうか。可能ならば、遅いこのストレートを打者の手元でズラして内野ゴロに打ち取れたらいいのになと考えていた。
寝る前に買った「変化球のススメ」をじっくり読むとムービングファストボールというページに目が止まった。人指し指と中指をそろえてボールの縫い目を外して握るのがポイントと書いてある。
その瞬間、コレだとストレートも投げつつチェンジアップやこのムービングファストボールを投げられれば杏菜の求めるピッチングが出来るかも知れないという気持ちになった。
コレを投げられたら宏斗君も驚くだろうなと想像するとニヤニヤしていた。




