230話 思うどち い群れてをれば 嬉しくもあるか
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「昔は賑やかだったんですがね…お恥ずかしながら…今はこの通り、妻と二人だけなんです」
ドワーフ夫は、自笑気味にポツリと呟く。
この過酷な地から同族は去って行ったのか?
はたまた、事故か何かで死別したのか?
ドワーフ夫の顔に落ちる影に…
リーンは気安く理由を尋ね難く、沈黙でやり過ごす。
「さぁさぁ!料理が出来ましたよー!
お客様のお口に合うか…本当に分かりませんが」
そう言って、ドワーフ奥方は明るい声で料理を次々と運んで来た。
「うわぁ!美味しそうだぁ〜!」
イルもまた、先ほどの重々しい空気を払拭するかのように、明るい声で答える。
「こんなに沢山…食べ応えがありますね」
オーフェンも尻尾をパタパタと振り、態度以上の喜びを表している。
兎肉と地下野菜の炒め物、キノコと光苔のソテー、蛇の煮込みスープに、蛇卵の燻製…
兎肉ハムと野菜のサラダ、芋粉のクレープ、サボテンの実のハチミツ掛け…
そこに地下ベリーの果実酒まで用意されていた。
「凄いな…こんな馳走を、用意頂けるとは」
「急ごしらえですがね…もっと時間があれば、
手の込んだ物を作れましたが」
リーンの感嘆に、奥方は恥ずかしそうに苦笑いする。
「充分ですよ〜!本当に美味しそう!」
「さぁさ!料理が冷めないうちに、お召し上がり下さい!」
イルが既にソワソワしてるのを見て、ドワーフ夫も食事を促す。
「いただきまぁす〜!」
イルは、野菜炒めを頬張りつつ、蛇スープの蛇の身を解してフィアロアに食べさせる。
「うむ、蛇も臭みが無くて柔らかいのぅ」
骨まで溶ける煮込みと、出汁が滲み出て…好き嫌いの多いフィアロアでさえ、舌を鳴らす程だ。
一方、オーフェンは蛇の燻製を口一杯に頬張り、手にはクレープとサボテンの実までスタンバイしていた。
オセは皆へ、水の手配や小皿を用意し、合間にサラダを口にしている。
「皆さま、良い食べっぷりで安心しました」
ニコニコと、果実酒をリーンのグラスに注ぎ入れ、ドワーフ夫は久々の賑やかな食卓を嬉しそうに眺めていた。
奥方は、皆の食べっぷりに歓喜し、
次の料理の仕込みに忙しい。
「ウチの連中が…遠慮無しに済まない…
数週間振りの料理で、タガが外れてしまっているようだ」
リーンは恥いるように、頭を下げる。
「とんでも無い!勇者様方を歓迎するのは一族の使命ですし…
何より…大勢で囲む食卓が本当に嬉しいのです」
ドワーフ夫の目尻には薄らと涙が光っていた。
この砂漠地下で、一体どれ程の時間をたった二人で過ごしてきたのだろう。
「おお!そうでした!
ドューイ様からお預かりしている…アーティファクトの話をしなければ…」
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