212話 砂漠の中の神殿
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「ほら…見えてきたわよ、あれが私の家」
魔族のレイが指差す方向に目を向ければ、
砂漠の中にポツンと浮かび上がる集落があった。
煉瓦や砂を固めただけの粗末な家屋が並ぶ中…
中央には石造りで出来た、立派で巨大な建築物が際立っていた。
『砂漠の中に…神殿?
あれ?この建物…何か懐かしい感じだなぁ?』
周囲の景色は、シルフの知るものでは無かったのだが…
不思議な気分だと、シルフは頭を捻るのだった。
そして、レイと共に集落へ入る。
粗末な家屋の中から、人影が出て来る。
「お帰りなさいませ、ご主人様!」
人影は、レイに会釈する。
黒い肌が目を引く…日焼けの所為だろうか?
いや…闇色に染った肌は日焼け所為では無さそうだった。
黒い肌に色を失ったかのような、ボサボサの白髪…そして長い耳…
「彼らは、ダークエルフよ。
今は私に忠誠を誓っているの」
「ご主人様…これは何です?」
ダークエルフ達は、シルフを見て怪訝な顔をする。
「私の非常食よ、丁重に扱ってちょうだい」
レイの指示を受け、ダークエルフ達は御意と、頭を下げる。
レイは、シルフを引き連れ、そのまま中央の神殿へ入る。
神殿は外の暑さに比べ、快適な涼しさだった。
建物内部に少量の水が湧き出しているのも、
涼しさを齎す要因なのかもしれない。
この水のお陰で集落の、ダークエルフ達も生きる事ができるのかと、シルフは考えた。
『神殿の中は涼しいのね…あ、中央に玉座がある…!』
シルフは神殿中央にある、立派な玉座に目を向けた。
だが、すぐに玉座に何か、違和感を覚える。
玉座には禍々しい魔法陣のような…
難しい、何かの文字がその周囲を囲い、
物々しい雰囲気を放っていた。
『玉座の周りの…何だろう?
…何かの仕掛け?』
シルフが乗り出して見ようとすると…
レイの手が遮るようにスッと延びる。
「アンタはこっち!
私の食糧なんだから、玉座は関係ないでしょ」
そのまま、シルフを囲う結界ごと、連れて行かれる。
『そう言えば…ワタシは、
レイさんの非常食なんだった!』
自分の状況を思い出し、急に青ざめるシルフ。
『でも…非常食って、言うくらいだから…
すぐには食べないよね?
…そうだよね?』
懇願するように、シルフはレイを見上げる。
目を潤ませ、小刻みに震える様は
小動物を連想させた。
「ふふふ…気が向いたら食べちゃうかもだけどね?」
レイは、ニヤリと意地悪な笑みを作り、シルフの頬に触れる。
プニプニとされるがままのシルフは…
自分がどうなるのか、先が思い遣られた。
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