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212話 砂漠の中の神殿

◇◇◇◇◇



「ほら…見えてきたわよ、あれが私の家」



魔族のレイが指差す方向に目を向ければ、

砂漠の中にポツンと浮かび上がる集落があった。


煉瓦や砂を固めただけの粗末な家屋が並ぶ中…


中央には石造りで出来た、立派で巨大な建築物が際立っていた。



『砂漠の中に…神殿?

あれ?この建物…何か懐かしい感じだなぁ?』



周囲の景色は、シルフの知るものでは無かったのだが…


不思議な気分だと、シルフは頭を捻るのだった。



そして、レイと共に集落へ入る。



粗末な家屋の中から、人影が出て来る。



「お帰りなさいませ、ご主人様!」



人影は、レイに会釈する。


黒い肌が目を引く…日焼けの所為だろうか?


いや…闇色に染った肌は日焼け所為では無さそうだった。


黒い肌に色を失ったかのような、ボサボサの白髪…そして長い耳…



「彼らは、ダークエルフよ。

今は私に忠誠を誓っているの」


「ご主人様…これは何です?」



ダークエルフ達は、シルフを見て怪訝な顔をする。



「私の非常食よ、丁重に扱ってちょうだい」



レイの指示を受け、ダークエルフ達は御意と、頭を下げる。


レイは、シルフを引き連れ、そのまま中央の神殿へ入る。


神殿は外の暑さに比べ、快適な涼しさだった。


建物内部に少量の水が湧き出しているのも、

涼しさを齎す要因なのかもしれない。


この水のお陰で集落の、ダークエルフ達も生きる事ができるのかと、シルフは考えた。



『神殿の中は涼しいのね…あ、中央に玉座がある…!』



シルフは神殿中央にある、立派な玉座に目を向けた。


だが、すぐに玉座に何か、違和感を覚える。


玉座には禍々しい魔法陣のような…

難しい、何かの文字がその周囲を囲い、

物々しい雰囲気を放っていた。



『玉座の周りの…何だろう?

…何かの仕掛け?』



シルフが乗り出して見ようとすると…

レイの手が遮るようにスッと延びる。



「アンタはこっち!

私の食糧なんだから、玉座は関係ないでしょ」



そのまま、シルフを囲う結界ごと、連れて行かれる。



『そう言えば…ワタシは、

レイさんの非常食なんだった!』



自分の状況を思い出し、急に青ざめるシルフ。



『でも…非常食って、言うくらいだから…

すぐには食べないよね?

…そうだよね?』



懇願するように、シルフはレイを見上げる。


目を潤ませ、小刻みに震える様は

小動物を連想させた。



「ふふふ…気が向いたら食べちゃうかもだけどね?」



レイは、ニヤリと意地悪な笑みを作り、シルフの頬に触れる。


プニプニとされるがままのシルフは…

自分がどうなるのか、先が思い遣られた。



◇◇◇◇◇

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