210話 魔族の何かヤバい人【挿絵付き】
◇◇◇◇◇
シルフが引っかかっている、枯れ木の方向へ向かい、足音が近づいて来る。
シルフは首を捻り、
その足音の方へ顔を向けた。
『⁈ 』
獣…の魔物では無い。
だが…
…恐らく人間でも無いだろう。
シルフとて、その足音の存在を見た瞬間は、
人だと思ったのだ。
二足で歩く、全身を闇で染めた人影…
だが…だが、その人影は人間では抱えられない程、強大な負のエネルギーを纏わせていたのだ。
『あ…あ…』
人間では無いだろう…ならば何なのか?
人に似た姿の存在…それは、
『あ、悪魔…?』
しかも、下級では無いだろう。
足音の主が近づくにつれ、姿がはっきりと
見えてくる。
その姿は…
黒灰色の長い髪に、全身闇色の装束…
頭には鋭く、奇怪な角が禍々しく伸びていた。
そして、その双眸には…妖しく燃える、金色の瞳が揺らいでいる。
間違い無く、上位の部類の悪魔…魔族だろう。
「…ふぅん?
羽虫がこんなトコに…引っかかってるんだけど?」
魔族は、その風貌と低い声に反して、
軽い口調で言葉を発した。
「やぁね、小汚い!…でも食べたら美味しいのかしらぁ?」
『ひいぃっ⁈ 』
魔族はそのまま近づき、枯れ木からシルフを取り、手の中でまじまじと観察する。
やはり、食べる気なのか?
そうで無くとも、魔族にとって自分は、
敵対する存在なのだろう…と、シルフは戦慄する。
体が恐怖で震える。
「まぁ、滋養強壮には良さそうよね?」
魔族は、そう言ってシルフを小さく丸い
結界の中に入れる。
『ど、どこに連れて行くの?
出して!出してー!!』
恐怖から混乱し、思わず叫んでしまうシルフ。
「うるさいわねぇ?
私はこれから、家に帰るのよ!
アンタは私の非常食として持って帰るの!
…分かった?」
魔族のその言葉にシルフは目の前が真っ暗になる心地だった。
絶望し、へたり込む。
『リーン様…皆さん…ワタシの旅は終わったようです…ごめんなさい…さよなら…』
故郷の里が頭を過ぎる。
深く美しい森、エルフの皆…天へ聳える世界樹…
シルフは視界が霞み、そのまま意識を失っていった。
◇◇◇◇◇




