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209話 シルフの受難

◇◇◇◇◇


 


話はひと月程、遡る。




リーン一行が、リーダーと呼ばれる

冒険者の少女を保護し、

故郷の村へ送り届けていた頃…



一行が、すっかりその存在を忘れている

シルフは…


どうしていたかと、いうと…



『誰かあぁぁ!助けてくださぁいー!』



ダルム地方の荒野にある枯れ木に、

引っかかっていた。



魔物も闊歩する、危険な荒野だ。



滅多に人など、通る事は無く…

シルフは一週間ほど、枯れ木に縛り付けられたままだったのだ。


シルフとは、精霊に近い存在だ…


魂魄の根源が潰えない限り、栄養を外部から補わなくても存在し続けていけるのだが…



『このままじゃ…永遠に枯れ木と一緒になっちゃうか、いつか魔物に食べられちゃうですよぅ』



人間には聞こえない、

精霊の言語で泣き言を叫ぶ。


シルフにとっては、後者…魔物に食べられるのが最も恐ろしい事態だ。



『うぅぅ…リーン様に良い所を見せて、

迷子になった失態を帳消ししようと思ってたのにぃ…何でこうなっちゃったんだろ?』



いつも、ドジだとか、頭が緩いとか言われていたが…自分でも本当にそうなのだと、

シルフは自己嫌悪に陥っていた。



『リーン様…今頃、心配してくれてるのかな?

ワタシが魔物に食べられちゃったら…

泣いてくれるかな?』



そう思うと、シルフは悲しくて涙が止まらなくなっていた。


さめざめと涙を流していた、そんな時だった。


ザッ…と、近くで地を踏む音が聞こえた。



『…⁈ 』



人間か?…いや、

もう夜が来て、辺りも暗い。


こんな時刻に人など通るだろうか?


なら、可能性のもう一つは…?


考えたく無い事態が、シルフの頭を過ぎる…



『まさか…ま、ま、魔物…?』



ザッ、ザッ…



地を踏みしめ、歩く音が近づいて来る。


シルフは、音が近づくにつれ、震えが止まらなくなっていく。


本当に魔物なら…



『ワタシの旅もここ迄なんだ…!

リーン様あぁ…ランシェ様あぁぁ…!!』



恐怖で目に涙を溜め、

戦慄く唇で大好きな人達の名を呟き…



シルフは、足音のする方に目を向けた。



◇◇◇◇◇

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