162話 え?絶対絶命かも?
◇◇◇◇◇
「さて…どうするか?」
イルは、ペンダントを意識しながら…使いどころを考える。
「イル、黒幕は…あの女では無さそうじゃぞ?」
「うん、彼女…ご主人様とか言ってたよね?
多分、そいつが…黒幕かな?」
町に、魔術による毒の雨を降らせたのも…恐らく黒幕の仕業なのだろう。
そして、アーティファクトを狙う悪魔を侍らせてるとなれば…
恐らく…その正体は…
イルとフィアロアが廃墟の奥を睨んでいると…
急に周辺の空気に冷たく寒気のする圧がかかり、
身体に重くのしかかる、威圧感を覚えた。
ビリビリと鼓膜が震える。
「…イル」
「ああ、たぶん…"コイツ"だね…
前に荒野で遭遇した上級悪魔より……強い!」
イルは奥を睨みながら、ニィと口角を上げる。
一方フィアロアはその瞬間、イルに警告する。
「イル!!ヤバい!退避しろ!」
「…え?」
「くっ…間に…合わない…か!…既に…術が……」
黒幕は未だ、現れてはいなかった…
だが…
その、気配を感じた瞬間には、既に…
「術」は成されていたのだ…!
「…儂らは…状態異常に…かかったようだ…」
もしも、フィアロアが完全体であったなら…
もう少し、早く対処はできてきたかもしれない。
更に、フィアロアもイルも、火力タイプだ
"この"タイプの敵への耐性は低く相性は悪い…
どのみち、仲間のサポートが無ければ苦戦していたかもしれなかったのだが…
「私の術に直前で気付いたのは見事だね?」
そう言いながら、その姿を遂に見せたのは…
頭に角を生やし、
蜥蜴の尻尾を持つ妖艶な女悪魔だった。
◇◇◇
目の前に悪魔がいる…!
だが、
イルとフィアロアは身動きが取れ無かった。
この目の前の悪魔の術中に嵌り、
強力な麻痺の術に陥っていたのだ。
「くそっ、麻痺か…もっと早くペンダント使うべきだったかな?」
「先に力を使ったとて…あのボス悪魔には逃げられていたと思うぞ?」
あの女悪魔…あれは恐らくサポートタイプの悪魔なのだろう。
火力は低いものの、ステルススキルを持ち、
己は隠れながら、敵を欺き…
状態異常術を使い、敵を陥れる戦術を得意とするタイプだ。
雨雲に毒術を施し…町全体に状態異常術を撒き散らしたのも…この悪魔の仕業なのだろう。
「ふん、あわやってところだったねぇ?」
女悪魔は冷たく処刑人の女を見下す。
「も、申し訳ございません…ご主人様…」
処刑人の女は震えながら平伏する。
「…まぁいい、この人間二人を囮に…
お前の言ってた怪力女を誘き出せばいい」
「はい…!」
「それより、お前達はアーティファクトの探索を始めな!町の人間達は弱りきっている。
今なら、脆弱なお前達でも町民を襲えるだろ?」
女悪魔が部下の悪魔共に放った言葉は、到底受け入れられないものだった。
やはり…あの雨はそれが目的だったのか!
イルとフィアロアは歯噛みする。
悪魔共を町へ遣る訳にはいかない…!
…とはいえ、
自身は体が動かせず…オセも倒れ伏している。
…リーンは…
もし、助けに来てくれたとて…この悪魔と戦えるのだろうか?
もし…同じく状態異常の術にかかってしまったら…⁈
「う〜ん?…これって絶対絶命ってやつ?」
イルの呟きに、女悪魔は二人へ淫靡な目を向ける。
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