127話 幻の焼き鳥屋
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…とはいえ、あの処刑人の女は厄介だ。
小悪魔を付け回したり、イルに色目を使ったり…
面倒な奴に目をつけられてしまったものだと、
一堂はドッと疲れを感じることになったが…
小悪魔の為にも探索を続けねばなるまい。
少し落ち着いたところで再び探索を開始する。
「やはり、先ほどの道にもう一度戻ってみるか」
「そうですね、見落としがあるかもですし…」
リーンの提案にオセも頷く。
女処刑人のせいで、時間をかなり割かれてしまったようで、陽は傾きあっという間に夕刻に差し掛かっていた。
焼き鳥屋の看板を探すべく、元来た道へ向かうと…
辺りから風に乗り、食欲を誘う匂いがしてくる。
「…あぁ〜〜!肉の匂いだぁぁ…」
イルは、クンクンと鼻をひくつかせ、
うっとりとした表情になる。
「この道に焼肉屋なんて、あったかのぅ?」
フィアロアは首を傾げる。
すると、オセは驚いたように指をさす。
「皆さん、見て下さい!あそこ…」
指したの方角には、焼き鳥屋の看板が…
そして、店先で焼き鳥を焼き、良い匂いを上げていた。
「…もしかして…」
リーンは前世の記憶を手繰り寄せる。
前世で様々にあった店屋の中には、昼間と夜では業種を変えて営業する店があった。
昼間通った時には、確かにここはパン屋だった筈なのだ。
「昼間と夜で切り替えて店を営んでいるのかもしれないな」
この刻限に通れた事が幸いだったと言えよう。
イルは後ろ髪を引かれる心地で、焼き鳥屋の角を曲がって行く。
「ねぇ、リーン様〜?帰りにあの焼き鳥屋で買って帰りましょう〜?」
「ああ、そうだな。
早く目的地に着いて用が済んだらな?」
リーンは苦笑いして頷くが…
フィアロアはイルの背中の上から、頬をつねる。
「ヨダレを拭けイル!
やはり豚だな?豚って肉食べるのじゃな?」
「誰が豚だよ!僕は人間だから肉が食べたいの!」
「あ!コラ!儂の腕に噛み付くでないわ!」
「むぐ〜!」
イルとフィアロアが戯れでいるのを他所に、
リーン達は先へ進むのだった。
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