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ダーク・ホーリー 短編集 3、聖誕祭の奇跡(後編)  作者: LLX
1、北の黒い森の魔女の息子(全5話)
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4、悪魔召喚

 ビクビクと領主と妻が、寄り添いながら神父の後ろに隠れる。

神父は懐から十字架を取り出し、ホーリーに向けて差し出した。


「おのれ、悪魔め、神の名において去れ!」


ブルブルと、神父の手が震えている。

クスッと笑ってホーリーは、丁寧に胸に手を当てお辞儀した。


「北の魔女殿とお聞きして参りました。

我が名はホーリー。

美しき領主の奥方様、不躾ながらご挨拶申し上げまする。」


奥方が神父と顔を合わせ、頷き合って前に出る。

そして胸を張って手を差し出した。


「いかにも、私は北の森の魔女とも、北の果ての魔女とも呼ばれておる。

美しい少年よ、歓迎いたしましょう。」


ホーリーが奥方の手を取りキスをする。

そしてククッと笑った。


「なんとかぐわしい香り。

魔女よ、あなたの肌からは、みずみずしき処女の生き血の香りが立ちのぼっている。」


「ホホホ……ホーリー殿も、今宵楽しんで行かれるといい。

最も、まだうら若き少年の肌には必要ないかもしれぬが。

しかし若き女共との饗宴は、きっと楽しめましょう。」

  

ホーリーが、スッと一歩下がって頭を下げ、優雅に美しく微笑む。

そして残念そうにゆっくりと首を振った。


「私は、女性との営みに興味がございませぬ。

今はまだ、人の世の全てが興味の対象。しかしそれがまた、楽しく飽きませぬ。

人間は、なんと楽しい生き物でしょうか。」


「ホーリー殿は?では、人ではありませぬのか?」


神父の質問に、クッとホーリーが笑う。

美しく、不気味な姿の小さな少年に、3人はゾッとすくみ上がった。


「人であり、人でなし。それは対する者次第。

それもまた、面白かろう。」


「では、では我々の前に立つあなたは?」


神父がガタガタと下がる。

ホーリーは清々しく笑いながら、その神父を指さした。


「神に仕える姿をした魔物よ、魔の前では魔になろう。

信心深き人々の、心の拠り所である物を聖なる神というのなら、それを侮辱したお前は最も罪が重かろう。

お前の背後には、死した多くの女と、この世に生まれることの無かった子の姿が見える。」


ひいっと叫びを上げて、神父が背中をバタバタと叩き、領主夫婦が慌てて神父を離れる。

ドスンと尻餅を付いた神父から、ホーリーは領主に視線を移すと領主を指さした。


「わ、わしは何もしておらん!すべてこの男が……」


「アハハハハハ!!面白い、面白い!さあ、それから何と言う?何とでも言うてみるがよい。」


領主がカッと手元の燭台を握る。

火がついたロウソクをつけたまま、思い切りホーリーに向かって投げた。


「燃えろ、魔物め!燃えてしまえ!」


しかし燭台はホーリーの前で宙に浮き、そして粉々に砕け落ちる。

その時、神父がカバンから、たたんだ一枚の紙を取り出し、バサッと床に広げた。

何とそこには魔法陣が書いてある。

神父はニヤリと笑い、シュッとナイフで手の平をかき切って、数滴の血を魔法陣に落とした。


「汝、血より生まれたディアボロス!百の生け贄による契約を遂行せよ!小さき魔を倒せ!」


ボウボウと魔法陣の文字から炎が上がり、その炎が天井までを焦がしてゆく。


「ハハハハ!ホーリーとやらよ、本物の悪魔に食われるがいい!」


神父が急いで後ろに下がる。

やがてその炎から獣が腐ったような臭いがすると、大きな爪が、そして猛禽類のような黒い手が魔方陣から伸びてくる。

やがてそれは天井まで伸びると、ドズンと地響きを上げて、床に手をついた。


「ひいいいっ!」


「わああっ」


悲鳴を上げて、あたふたと逃げるのは領主夫妻。

ホーリーは冷たい目でそれを眺めて、クスッと笑った。


「何と、神の使いが悪魔を呼ぶとは、世も末よ。」


魔法陣からは障気があふれ出て、ホーリーの身体を覆う。

その障気に触れた床も壁も、全てが一瞬で黒く腐り果てる中で、ホーリーだけは美しさに微塵のかげりもなく輝いている。


「馬鹿なっ!お前は一体……何者だ!」


うろたえる神父に一瞥も与えず、ホーリーはまるで愛しい人に触れるように悪魔の手にスッと手を添えた。

フフッと微笑み、その手にしなだれる。


悪魔の指は、尖った爪でツッとホーリーのすんなりした足を舐めるように足を撫で上げ、足の間、そして腹から胸に首筋をたどると、惜しむようにもう一度足の間に爪を這わせた。


「ああ……」


ホーリーが頬を紅潮させ、うっとりと指に身体を任せる。

そして名残惜しそうに身体を離し、悪魔の手にその小さく白い手を差し伸べた。


「美しき大罪怠惰の王ベルフェゴール、百の生け贄では少なかろう。

7王の1人がそれで呼び出されるは、侮辱の証。

契約を破棄せよ!御身の崇高なる魂は永遠なり!」


ホーリーの言葉に答えるように、悪魔の手はわずかな障気を残して魔法陣へ消える。

そして、その魔法陣の炎も、一瞬で書かれた紙ごと燃え尽きた。

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