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僕は殺されれば殺されるほど、強くなる  作者: 三毛猫乃観魂


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第七章 邪怪魔界へ

 今回は短めです。


 扉の向こうは薄く七色に輝く空間、決心した以上、迷いは無い。翔とエデは薄く七色に輝く空間に飛び込む。


 一瞬、光で視界が閉ざされ、再び視界が開いた時、見えたのは広い草原。

 始め、翔とエデは外へ出たのかと思い背後を見てみれば、そこにあったのは扉がある岩場。明らかにダマン・ラーサのいた洞窟とは違う。

 洞窟に入る前に比べれば気温が高く、少し汗ばみ、空気の臭いも違う。

 自覚する、ここが邪怪魔界だと。

 てっきり、翔は常夜な世界かと思っていたけど、ちゃんと太陽がある。

「むっ!」

 最初にエデが気が付き、視線を追うことで翔も気が付いた。

 こちら向かって歩いてくる一団。先頭にいるのは逞しい筋肉を持つ女性、その頭には2本の角がある。女性のオーガ、人間の感性で言えば美人。

 着いてくる一団も、みんな2本か1本の角を生やしている。

 オーガの一団だ。

「早速、きやがったな」

 魔導剣を抜いて構えるエデ、続いて翔も魔導剣を抜く。

 女性のオーガが近づいてくる。

 これから戦闘が始まるかと思われた矢先、女性のオーガが跪き、続いて一団全員が跪き頭を下げた。

 翔とエデが戸惑っていると、女性のオーガが顔を上げ、

「私はレジスタンスのリーダー、シデルーグ・オッサバ。あなたたちの到着を待っていた」

 と名乗った。

「えっ?」

 何なのこの状況に、今にも戦おうとしていたエデは戸惑いから抜け出せない。

「えっと、シデルーグさんですね」

 一早く、戸惑いから抜け出した翔が話しかける。

「私のことはシデルと呼んで欲しい」

 女性のオーガ、シデルはにっこりと微笑む。オーガとは思えない明るい笑顔。

 なんとか、エデも戸惑から抜け出すことが出来た。


 オーガの町に案内された翔とエデ。町の入り口でシデルは一団と別れる。

 家は煉瓦で作られていて、見るからに頑丈そう。

 町を行き来しているオーガ、その様子は人間の町と変わない。

 ゾナアマス国の王の間で戦った筋肉質のオーガもいれば細身のオーガもいるし、シデルのような女性もいる。

「この町は人間と仲良くしたいと思っている穏健派の町だ。警戒しなくてもいい」

 町のオーガたちは翔とエデ、シデルを見ると会釈、帽子を被っているオーガは帽子を取って、頭を下げる。

 確かにみんなからは、敵意をまるで感じない。

 シデルは一軒の家の前で立ち止まる。

「私の家だ遠慮はいらない、どうぞ」

 シデルはドアを開け、翔とエデを招く。


「この町の特産品だ、取りえず寛いでくれ」

 琥珀色の飲み物と茶色い食べ物を机に置く。

「何だこれ?」

 見られない飲み物と食べ物をエデは、しげしげと見つめる。

「これは……」

 翔は見た目と香りで解った、コーヒーとチョコレートだと。

 エデの人を見る目は本物、それは相手がオーガでも変わらない。だから、シデルが毒を盛るような奴ではないことは解る。

 警戒することなく、コーヒーとチョコレートに口を付けた。

「ほー、甘いお菓子に苦い飲み物がぴったり合っているじゃないか」

 翔も口を付けてみる。確かにコーヒーとチョコレートの味、それも混ぜ物のないシンプルなコーヒーとチョコレートの味。

「では、話に入る。食べながらでいいから、聞いてくれ」

 言われた通り、遠慮なくコーヒーとチョコレートを楽しみながら、翔とエデは話を聞くことにする。

「この世界はベルトラーターに支配されている。だが、それは万人が望むものではない、圧政に苦しめられている者も少なくない」

 “圧政に苦しめられている者も少なくない”この世界に来るまでは思ってもみなかったこと。はっきり言えば、喜んで邪怪族はベルトラーターに服従している。そうエデは考えていた。

 ファンタジー小説や漫画やアニメ、ゲームてはモンスターは何の疑いを持つことなく、魔王に従っている。だから翔も、そんな風に考えていた。

「人間世界征服のためにと、多くの邪怪族が強制徴兵されている。残念なことにベルトラーターに共感し、志願兵になる奴もいることはいるが……」

 辺境の町で戦ったオーク、ハイドの引き連れていたのと孤島にいたゴブリンやリザードマンに感じた違和感。なるほど、強制徴兵されたならば、あの態度も納得出来る。

「だから私たちは立ち上がった、邪怪族の自由を取り戻すため」

 シデルが嘘を吐いていないことはエデどころか、翔にも解った。それだけ、心が伝わってくる。

「ベルトラーターの元に行くには、邪怪五魔王が護る結界を破壊しなくてはならないが、悲しいことに私たちでは魔王1人にも勝てない」

 邪怪“五”魔王この意味することは……。

「そんな時、征服のために人間世界に派遣された邪怪五魔王の1人、邪怪炎魔王ダマン・ラーサが倒され、さらにベルトラーターを倒すため、邪怪魔界来ると話を聞いたんだ」

 話の元は逃げ帰ってきたゴブリン。

 レジスタンスの中にはガセを疑っていた者もいたが、本当に翔とエデはやってきた。

 翔とエデを見るシデルの目には期待と希望が宿っている。

「頼みたい、私たちと一緒に戦ってくれ」

 頭を下げる。

 断る理由などない、最初から翔もエデもベルトラーターを倒すため、邪怪魔界に来たのだから。

「勿論だ、共にベルトラーターを倒そうじゃないか」

 立ち上がり、エデは手を差し出す。その手を嬉しそうにシデルは握る。

 そこに翔も手を添えた。


 他のレジスタンスのメンバーと合流点に向かう途中、

「協力するには、言っておかなければならないことがある」

 エデは神妙な顔で話しかけた。

「私はこの手で沢山の邪怪族を殺した。あなた方の事情を知った今でも、その事に関して後悔はしていない」

 例え人類を守ると言う大義名分があったとしても、婚約者の敵討ちと言う個人的な目的があったとしても。

 後悔するなら、最初から邪怪族との戦いなんか始めてなんかいやない。

 翔も邪怪族を殺している。人類の敵だと思っていたなんて言うのは、ただの言い訳にしか聞こえないだろう邪怪族には。

 隠しておけば良かったかもしれないが、これから共に戦う仲間に隠しておくことは出来なかった。

「気にする必要は無い。強制徴兵されたとはいえ、邪怪族も沢山の人間を殺している、お互い様だ」

 気休めで言った理由では無い。今更、このことでいがみ合っても意味の無いこと、むしろ、強敵との戦いの前では愚の骨頂。


 しがないレストランの地下がこの町にあるレジスタンスのアジト。

 オーガの他に、ゴブリン、オーク、リザードマン、コボルトなどファンタジーやRPGのお馴染み敵役が集まっていた。

 でも、ここにいる皆は敵ではなく味方。

「桃崎翔です、よろしくお願いします」

「私がエデ・アテニャンだ」

 それぞれ、自己紹介をした。

「噂は聞いています」

「仲間になってくれて嬉しい」

「共にベルトラーターを倒しましょうぞ」

 様々なモンスターが握手を求めてきる。モンスターと言っても、こんなところは人間と変わらない。

「集まってくれ」

 シデルの前に集まる一同。

「?」

「あつ」

 エデはシデルの後ろにある物に首を傾げるが、翔には見覚えがあった。見慣れた物だけど、この世界では初めて見る物。

 シデルはモニターのスイッチを入れた。画面には地図が映し出される。

「うぉっ、何だそれはよ」

 初めて見るモニターに驚きを示す。

「気にすることは無い、これが邪怪魔界の技術だ」

 考えてみれば屍骸を作る技術があるなら、モニターを作る技術があっても不思議はないかかも。

「皆も知っていることだが、ベルトラーターの居城は邪怪五魔王の結界に護られている。まずはこれを破壊しなくてはダメだ」

 モニターの地図には簡素化されたベルトラーターの居城や邪怪五魔王の拠点が映し出される。

「翔さんとエデさんによって邪怪五魔王の一角、邪怪炎魔王のダマン・ラーサが倒され、結界が1つ消滅した」

 モニター上の邪怪炎魔王、ダマン・ラーサの結界が消える。

 一同の目が翔とエデに集中する。羨望の眼差しにさらされ、照れる2人。

「残るは邪怪風魔王、邪怪水魔王、邪怪土魔王、邪怪雷魔王の4体」

 残る4体は聞くまでもなく強敵、ダマン・ラーサが最弱の者かは解らないけど。

「我々のやるべきことは一体ずつ、確実に撃退していくこと」

 レジスタンスのやるべきことは、最初から決まっている。だが、レジスタンスだけの戦力ではベルトラーターどころか、邪怪五魔王さえの相手も心もとない。

 でも今は翔とエデが来てくれた、強力な戦力が。

「これから、倒すべき相手は……」

 シデルが指示した最初に討伐する邪怪五魔王は……。


「エデさん、奇妙なことになったね」

「ああ、全くだ」

 邪怪魔界に来るまでは邪怪族を絶滅させることも考慮していたのに、今は共闘することになったのだから。

「まぁ、人間の中にも真っ当な奴もいれば、外道な奴もいるんだ。邪怪族の中に良い奴がいても、おかしくは無いよな」

 軽く笑う。

「そうだね」

 “人間の中にも真っ当な奴もいれば、外道な奴もいるんだ”この言葉が翔の胸に突き刺さる。実際に外道な人間を目の当たりにした身なので。

 今でも忘れたことは無いことないが、今のところ、不思議なことに憎しみは湧いてこない、異世界に来たからなのか?



 朝、町の入り口に集まるレジスタンスの面々、翔とエデも来ている。

 シデルは背中にライフルを背負っている。邪怪魔界にも銃器はあるんだなと、なんとなく、翔は思う。

 用意された馬、見るからに普通の馬ではない。

「その馬たちは機馬(きば)、馬を改造して強化した」

 屍骸の馬バージョンかなと思って翔が触れてみると、屍骸とは違って暖かい。どうやら、生きた馬を改造した様子。

 シデルが機馬に乗ると、レジスタンスたちも機馬に乗り始める。少し遅れて翔とエデも機馬に乗った。

「行こう」

 シデルの声を合図に、翔とエデとレジスタンスを乗せた機馬が走り出す。

 翔もエデも機馬に乗るのは初めてだったが、難なく走らせることが出来た。そのように調整されているのだろう。








 翔くんとエデさんが邪怪魔界に来ました。

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