表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は殺されれば殺されるほど、強くなる  作者: 三毛猫乃観魂


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/25

第五章 辺境のオーク

 オークも定番のモンスターですね。

 辺境にある町の一つ。元々は人間の町であったが、今、町を我が物顔で闊歩しているのはオーク。この町は邪怪族に支配されてしまった町。

 やせ細り、ボロ衣を纏った人々が強制労働を強いられている。

 日が昇れば炭鉱や農場で働かされ、仕事が遅れれば鞭打ちなどの暴力、強制労働は日が落ちるまで続く。

 農園で収穫された作物は大半が搾取され、人が口にできるのはほんの僅か、やせ細るのも当たり前。

 最初こそ抵抗する者もいたが、今、大半の人は抵抗する意思など失って等しい。

 抵抗していた人たちは全員、屍骸に改造されてしまった。それは抵抗の意思を砕くのに、十分な効果を発する。


 辺境の町の中に輿(こし)に乗ったオークがやってきた。担いでいるのは12人のボロ布を纏った人間。

 普通のオークでもメタボ体型なのに輿に乗っているオークは更に倍以上に太っているので、担いでいる人は油汗を流しながら運んでいる。

 輿に乗っているでかいオークには、オークの部隊が付き添っていた。このように囲まれていては逆らうどころか、輿を落とすことさえ出来ない。

 辺境の町の人々の前で止まる。

「今年の作物の運搬の準備は済んだかしら」

 輿の前に老人が進み出る。町が占領される前は町長を務めていた人物。

「それがですね、今年は不作で予定通りの作物が採れませんでした。どうか、お許しください、ムスターワ様」

 地べたに額を擦りつけ、土下座。

 輿に乗ったオーク、ムスターワは手を上げると、輿が下ろされた。物凄い重量から解放された担でいた人たちは肩で息をしている。

 元村長の前まで来ると、ムスターワは足を上げた。

 エッと言う間など無かった。ムスターワは元村長を踏み潰す。

「あなたたちのやることはアタシに言われたことをやるだけ、邪怪族にご奉仕するのみよ。作物の出来が悪いなら、あなたたち自身が肥やしになって作物を育てなさいよ」

 ムスターワの怒号が飛ぶ、辺境の町の人々は震えあがり、許してくださいと土下座することしか出来なかった……。


 掘っ立て小屋の方がまだましなボロ小屋の影にいた青年が激高し、鍬を持って飛び出そうとしているのを初老の男が必死に取り押さえていた。

 青年は村長の息子、初老の男は村長の幼馴染。

「我慢しろ、お前まで殺されてしまうぞ」

 今にも飛び出しそうな村長の息子を村長の幼馴染はムスターワが町から出ていくまで、何とか押さえることかできた。



「くそっ!」

 ボロ小屋の土むき出しの床を村長の息子が悔しそうに殴りつける。

「ゾナアマス国が対邪怪族に立ち上がり、幾つもの町が邪怪族から解放されたと言うのに、俺たちは助けてくれないのか!」

「この町は辺境だから、見捨てられたんだろよ」

 村長の息子と同じ年頃の青年2人が怒りを露にする。

 誰も助けてくれないのなら、このまま虐げられて生きていくと言うのか? それは人として生きていると言えるのだろうか?

 それが悔しくて悔しくて仕方がない。

 村長の幼馴染は青年たちを見ていることしか出来ないと思い、ただ黙っていたが、

「決めた、俺はやる」

 村長の息子は立ち上がった。

「もう、怯えて暮らすのはこりごりだ。俺はオーク共と戦う」

 自棄を起こした者の言葉ではない、虐げられる立場から立ち上がろうとする者の言葉。

「そうだ、邪怪族の連中に人間の意地を見せてやる」

「俺も一緒に戦うぞ」

 村長の息子と同じ年頃の青年2人も立ち上がる。

 やめるんだと、村長の幼馴染は言えなかった。それだけ青年たちは立ち上がろうとする、強い意志が見えたのだ。

 とてもじゃないが、そんな者たちを止めることなど出来はしない。

「なら、私も町の人たちに声を掛けよう」

 自分に出来ることをやるため、村長の幼馴染も立ち上がる。



 視察するため、再び辺境の町をムスターワが訪れた。前回と同じく、ボロ布を纏った人たちに輿を運ばせ、オークの部隊に守られて。

「あら?」

 辺境の町には誰の姿も見えない、今までは怯える人が沢山いたのに。

「人間共はどこへ行ったのかしら」

 ムスターワが辺りを見回していると、突如、矢が飛んできた。

「ひやっ」

 咄嗟に後ろに下がり、矢は輿に刺さる。矢じりは石を削って作られた物。

 姿を見せないと思われた辺境の人々がボロ小屋の屋根の上に現れ、一斉にオーク目掛けて矢を撃つ。

 ありあわせの物で作った弓と矢、それでも殺傷力は十分にあった。

 悲鳴を上げ、輿を担いでいた人たちがその場に伏せる。

 ムスターワごと、地面に落ちる輿。

 矢の攻撃の後、物陰に隠れていた人々が鍬や鍬や鎌などを手に持ち、一斉にオークの部隊に攻撃を仕掛けた。

 辺境の町の住民の殆どが、この襲撃に参加している。恐怖で人を永久に支配すること気出来ない。

 まさか逆らうとは思いもしなかった人たちの反撃、完全に虚を衝く形となり、おまけに輿を担いでいた人たちも倒れたオークの武器を取り、攻撃に参加。

 何故かオークの部隊の中には戦うことに戸惑いを見せているものもいたが、辺境の町の人々は気が付かなかったが。

「いい加減にしなさい!」

 輿から落とされたムスターワが、怒号とともに立ち上がる。

 固い固い樫の木を削って作った棍棒を振り回し、ムスターワが人たちに襲い掛かる。

 剛力から繰り出される棍棒の一撃、次から次へと人をふっ飛ばしていく。

 吹っ飛ばされるのは人間だけではない、仲間でいるはずのオークまで巻き込まれている。

 屋根の上にいた人々が矢を撃つが、石で出来た矢じりではムスターワの分厚い脂肪の層を貫くことはできず。

 見た目以上の強いムスターワ、どんどん、倒されていく辺境の町の人々を見て、

「これまでなのか……」

 村長の息子が呟いた時、ムスターワの攻撃が止まった。

 ムスターワの視線は町の外、そこには馬を駆け、やって来るもの2人の姿あり。

 馬に乗っているのは翔とエデ。

「たった2人で、アタシも舐められたものね」

 自分が出るまでも無いと、ムスターワが合図してオークの部隊を向かわせた。

 意気揚々と向かったオークもいたが、とどまって戸惑いを見せているオークもいた。そのオークたちもムスターワの一睨みで翔とエデに向かっていく。

 手綱を引き馬を止めて翔とエデが降り、魔導剣を抜き放ち、向かってくるオークの部隊に突撃。

 圧倒的な数の差をものともせず、翔とエデはオークを斬り捨てていく。

 2人の強さを目の当たりにした後発のオークたちが逃げ出す。

 逃げ出したオークたちは、ムスターワの棍棒の一振りで叩き潰される。

「あなたたち、やるじゃないの」

 ベロリと舌なめずり。

 エデとムスターワが地面を蹴り上げ、同時にお互いの間合いに飛び込む。

 怪力によって振り下ろされる棍棒の連続攻撃。常人ならばミンチになる攻撃をエデは完全に見切り、一撃たりとも命中させない。

 大きなお腹目掛けて魔導剣で斬りかかるが、柔らかくてボヨンとお腹に弾かれてしまう。

 大きなお腹に弾かれ、僅かにバランスの崩したエデの頭を目掛け棍棒を振り下ろそうとした。

「はっ」

 気の砲弾を放つ翔。

 真っすぐ飛んだ気の砲弾はムスターワの大きなお腹に直撃。

 魔導剣さえも弾くムスターワの大きなお腹も、脂肪を通過して内部からダメージを与える気の砲弾では大した防御を発揮できない。

「そ、そんなベカケノ以外に魔気孔を使える者が存在しているなんて」

 血を吐くムスターワ。

 今だとばかり、エデは魔導剣をムスターワの口、脂肪の無い口の中に突き立て、同時に風の魔法を発動。

 魔導剣を引き抜くと、ムスターワの巨体が倒れた。


「ムスターワが倒された……」

 村長の息子の一言をきっかけに、人々の歓声が辺境の町に歓声が響き渡る。

 抑圧からの解放。その抑圧が辛かった分、解放された喜びは大きい。

「ありがとうございます!」

 翔とエデは辺境の町の人々に取り囲まれ、感謝を述べまくられる。

 この状況、つい照れて翔とエデは戸惑ってしまう。


 微かに息が残っていたムスターワ、最後の力を振り絞り、懐から小箱を取り出す。

 小箱を開けると、中から黒い小鳥が飛び出し、誰にも気付かれることなく、大空へ飛び立つ。

 最後に、ニヤリと笑いムスターワは息絶えた。



 辺境の町の人々が感謝の宴を開く。と言っても、これまで搾取され続けため、碌な物は残っていなかったが、それでも精一杯のおもてなし。

 歌を披露する人、ダンスを披露する人、翔とエデの肩を揉む人。

 この様な歓迎は規模はどうであれ、嬉しくなるもの、翔もエデも楽しく宴に加わる。



     ☆



 飛んでいた黒い小鳥はハイド・イウンの肩に降り立つ。

 耳元で黒い小鳥は呟く。

 ハイドの向いた方向は、今、翔とエデのいる辺境の町のある場所。

 手を上げ合図、ハイドの背後には屍骸とゴブリンの部隊が控える。



     ☆



 宴の翌日、馬を前に旅立ちの準備を始める翔とエデ。

「翔さん、エデさん、また町に来てください。その時には町を復興させ、思い切り、おもてなししますので」

 村長の息子が話しかけてきた。

「そこまで気を遣う必要は無い、昨夜ので十分だぞ」

 昨夜の宴は素朴なれど、十分に町の人々の気持ちが伝わってきた。それは翔も同じ。

「それでは私たちの気持ちが収まらないんです」

 いつの間にか村長の幼馴染や他の人々も来ていた。皆、村長の息子と気持ちは一緒。

 ここまでの気持ちを伝えられたのなら、断ることが失礼。

「解った、世界が落ち着いた頃、また来るよ」

 握手しようと手を出そうとした時、背後に只ならぬ気配を感じた。

 振り返り、気配の感じた方角を見る、続いて翔も。

 隊列を組み、やってきたのはハイド率いる屍骸とゴブリンの部隊。

 近づいてくる部隊が見え始め、辺境の町の人々が慌て始めた。折角、オークから解放されたと言うのに、平和は1日も持たなかったのかと。

 エデは馬に乗り、部隊に向かう。すぐに翔も馬に乗り続く。

 ハイド率いる屍骸とゴブリンの部隊の前に来た、翔とエデ。

「戦うなら、場所を変えよう」

 エデの申し出に、ハイドは頷いて応じる。

 エデとハイド率いる屍骸とゴブリンの部隊は去っていく。

 一度、翔は町の方を振り返り、一礼してから、去っていく。

 残された辺境の町の人々が出来ることは、翔とエデの勝利を祈ることだけ。


 出来るだけ、辺境の町から離れた場所までやってきた翔とエデ。ここまでくれば、辺境の町は巻き込まれることは無いだろう。

 馬から降り、翔とエデはハイドたちに向き直る。

 ここであることに気が付く。ハイドや屍骸はピンピンしているが、ゴブリンたちはへたばっているように見えた。

 翔とエデも知らないことだが、ハイド率いる屍骸とゴブリンの部隊は夜通し走ってきている。すでに死体である屍骸ならまだしも、ゴブリンたちが疲労しているのも仕方がないのこと。

 それでもゴブリンには闘志をむき出しにしている奴らがいる中、怯えていゴブリンもいる。

 オークの中にも戸惑いを見せているものがいた。ハイド率いるゴブリンにも何か違和感を感じる翔とエデ。

 たが、いちいち考えている余裕などない。ハイドが右手を上げると、屍骸とゴブリンの部隊が襲い掛かってきた。

 魔導剣を抜き、翔とエデは応戦。

 屍骸は金属製の歯と両手首の三枚爪で攻撃。ゴブリンの武器はイメージ通りの棍棒。

 屍骸の攻撃は激しくて恐れ知らずで疲れ知らず。多少傷ついても痛みを感じないので衰えることなく随時全力で襲い掛かってくる。

 しかし、地下水路で戦った時と同じく、攻撃パターンは変わらないので、簡単に攻撃が読めてしまう。

 好戦的なゴブリンもいることはいるが、疲労困憊の状態、歴戦を積み重ねたエデ、自分の能力に溺れることなく鍛錬を欠かさない翔の敵ではなかった。


 屍骸は全滅、ゴブリンが半分以下になったところでハイドが口笛を吹き、片手を上げた。

 その合図を見たゴブリンたちが逃げてった。気のせいか嬉しそう。

 翔とエデの前に来るハイド。

 エデも進み出る。翔も一緒に戦おうとしたが、エデが片手を出して止めた。

「お前、屍骸だな、それも特別製の」

 無言のまま、両手の籠手をハイドは外す。そこにあった手は金属で出来ていて、鏡のような表面が周囲の景色を歪んで映していた。

 エデが魔導剣に魔法を注ぎ込む。

 ハイドの金属の両手が変形して伸び、剣の形に。

 魔導剣と二つの手剣が衝突。


 一刀対二刀、普通、一刀の方が不利に見えるが、エデは全ての攻撃を捌いて見せた。

 どうゆうわけなのかハイドの左右の腕の長さが違うため、攻撃の間合いとタイミングを読み辛く、カウンターを打ち込めない。

 一進一退の攻防、翔も助太刀の隙を見いだせず。

 戦いの最中、エデは妙な既視感を感じた、初めて戦った相手のはずなのに。

「カイン」

 何故、このタイミングでこの名前を口にしたのかエデ自身にも解らない、自然と出てきたのだ。

 カイン、その前を聞いた途端、今の今まで激しかったハイドの動きが止まる。

 今だとばかり、エデは魔導剣を突き刺し、ありったけの雷の魔法を叩き込む。

 ハイドの全身に雷の魔法走り抜け、目も鼻も口も無いのっぺらぼうの仮面が弾け飛ぶ。

 さらされたハイドの素顔を見たエデ。

「カイン!」

 懐かしい名前を叫び、魔導剣を抜く。

 晒された素顔の目が動き、エデの顔を捉える。

「強くなったな、エデ」

 倒れるハイド。



 カイン、エデの婚約者だった青年。

 同じ師匠の下、修行し合った中。鎬を削るっている内に愛し合うようになった。

 そんなある日、村が邪怪族の襲撃を受ける。

 当時、今ほどの力が無かったエデを庇って死んだと思われていたカイン。

 婚約者の仇、邪怪炎魔王ダマン・ラーサと邪怪族を叩き潰すため、過酷な修行を重ね、何度も戦闘を重ね、さらに強くなり、今のエデがいる。



 つい魔導剣を落とし、倒れたハイド、否、カインに駆け寄るエデ。

 黙ってみている翔、2人の間に割って入る真似などしない。

「俺の鎧を剥がしてくれ」

 涙を流しながらも、言われた通りに鎧を取る。そして、

「これは……」

 絶句する。

 鎧の下の体は縫い目だらけ、それは痛々しいほどに。

「俺の体は手首以外、複数の遺体を繋ぎ合わせて作られてる」

 複数の遺体を繋ぎ合わせて作られた特別製の屍骸、それが今のカイン。

「エデ、君の雷の魔法のお陰で俺は俺を取り戻している。だから、今のうちに伝えることがある」

 傍から見ていても、カインが残された力を振り絞っていることは解る。流していた涙をエデは拭き取る。

「トリフーイの港から、真っすぐ南へ迎え、その先の孤島がある。そこの中央の洞窟にダマン・ラーサがいる」

 赤く輝く球を取り出し、

「孤島の周囲には目くらましの結界が張ってある。霧が出てきたら、この球を掲げろ、そうすれば道は開ける」

 エデに手渡す。

「最後の頼みだ、俺が俺でいるうちに眠らせてくれ」

「解った」

 小さな声で答えた。

 愛する人を自分の手に掛けなければならない。思わず翔が出ようとしたが、無言でエデが止めた。

 落とした魔導剣を拾い、カインの前へ。

「安らかに眠ってくれ、カイン」

 一気に魔導剣を振り下ろす。







 なんか翔くんが、いつもエデさんの一歩後ろにいてしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ