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僕は殺されれば殺されるほど、強くなる  作者: 三毛猫乃観魂


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第三章 王国への招待

 就寝前、エデに連れられて翔は町の近くにある林に来た。周囲に2人以外の姿は無い、魔物もいない。

 何でここにと聞こうとする前に、

「最初に誤っておこう、すまん」

 いきなり、エデは謝罪。

 謝った理由を尋ねようとした寸前、翔は斬られた、魔導剣で。

 剣で斬られると同時に、叩き込まれる魔法のダメージ。痛いなんてレベルではない衝撃、たちまち、意識は闇に飛ばされた。

 すぐに意識は戻り、魔導剣で斬られた傷は、もう治っている。

 翔の頭は悪くない、したがって、何故、エデがこんなことをしたのか、もう理解していた。

 何も言わず魔導剣を手渡すエデ。受け取ると同時に解った魔導剣の使い方が。

 柄を握って魔法を注ぎ込む。注ぎ込まれた魔法は刀身に流れる。

 専門の職人に鍛え上げられた魔導剣。火風水土雷の魔法を込めることにより、斬ると同時に魔法を叩き込む。

 それが魔導剣術、それを振るう者が魔導剣士。

 翔は目の前の木を目掛け、魔導剣を振り下ろす。

 ものの見事に斬られた木は倒れ、木の葉と土煙を舞い上げる。

 木の切断面は凍結状態。

「やっぱり、スゲーな、お前の能力は。私が何年も修行して身に着けた魔導術を一瞬で会得しちまいやがった」

 と拍手。ちょっぴり嫉妬心はあるものの、殆どの気持ちは祝福。

「それと引き換えに、死ぬ思いはしましたけどね」

 実際、死んではいるけど。

 泰道とは違って悪意などなく、ただ不器用に翔を強くしようとしてくれただけ。

 その思いは解るけど、出来るならば二度とはしてほしくない、それが翔の正直な気持ち。

 そんな気持ちを持ちながら、魔導剣をエデに返す。



 悪名高きモノクトイ率いる盗賊団を倒した翔とエデのことは話題になり、翌朝には町中の話題となった。



 まずは手に入った報酬で翔の装備を買うことに。

 装備品についてはド素人の翔、選ぶのはエデに任せることにした。

 最初に入ったのは防具屋。ここで防御強化の魔法の施されたレザーアーマーを購入。

 次に入った武器屋では魔導剣を購入。どこか日本刀に似た片刃の剣で、翔の体型に合わせてエデの物より、軽めで短め。

 少々、値は張ったが、たっぷり報酬を貰った後なので無理なく買えた。

 それに、“死ぬ”思いまでして会得した魔導剣術、魔導剣を買わないと損である。

 銃も使えるので、小型の拳銃も一丁買っておく。


 その他、必要なものを買いそろえ、手ごろな店で翔とエデは昼食を取る。

 この世界に来て初めての食事、最初こそ抵抗はあったものの、空腹と美味しそうな匂いにはあらがえず、口を付ける。

 これが本当においしく、みるみる間に腹の中に納まる。


 翔の特訓も兼ね、次の予定が決まるまで、しばらく、この宿場町に留まることに。

 その間、特訓がてらと資金稼ぎに、町周辺の魔物退治の依頼などを受けたりもした。



 今日の夕食を終え、食後のお茶を楽しんでいると、

「少し、話をしてもよいでしょうか」

 フードで顔を隠した人物が話しかけてきた。声からして若い男性と解る。

 怪しいと言えば怪しいけど、翔もエデも危険は感じなかったので、

「解った」

 エデは話を聞くことにした。

「ここでは何ですので、場所を変えましょ」

 エデも応じ、食事代を払って店から出る。

「あっ、待って」

 翔も後を追う。


 やってきたのは町で一番立派な宿屋。

 最上階の部屋に入り、一呼吸の間を置いて男はフードを下ろした。金髪の整った顔の青年。

「私の名前は、リック・フェリ・ゾナアマス」

 ゾナアマスの名を聞いた時、ピックとエデの眉が動く。

「ゾナアマスだと、ゾナアマス国のことか?」

 この世界に来たばかりの翔、ゾナアマス国と言うことは国ことと言うのは何となく理解できた。。名前にその国が付いていると言うことは――。

「私はゾナアマス国の第一王子です」

 机の上に一振りの短剣置く。豪華な装飾はされていても、成金趣味な嫌味たらしさは無く、むしろ高貴な感じが漂っている。

 エデの目を引いたのは装飾ではなく、鞘に刻まれた紋章。

「確かに、その紋章はゾナアマス国の王家のものだな」

 この短剣を所有していると言うことが、リックがゾナアマス国の王家のものと言う証。

 王子となれば護衛の1人や2人いるのが当然なのに、姿が見えない。お忍びで翔とエデに会いに来た、自ら危険も顧みず。

 そこまでの思いを持って、翔とエデに会いに来た。

「ゾナアマス国か……、一二を争う軍事大国で、王のギュスターヴは勇猛果敢で知られるな。で、そこの王子様が私たちに、何の用だ」

 ゾナアマス国ことを翔にも解るように話してくれる。

「これまで我がゾナアマス国は先陣を切って、邪怪族と戦っていたのですが……」

 リックは非常に辛い顔になる。

「突然、私の父親、ギュスターヴ王は変わられた。邪怪族との戦いを止め、邪怪族の将軍、ベカケノと手を結び、ゾナアマス国の安定を図ると。反対する者もいたが、その者たちは――」

 リックは口籠ってしまう。

「まさか、処刑されてのですか」

 つい口を挟んでしまう翔。

「処刑された方が、どれだけマシだったか……」

 これまで以上に辛そうな顔になる。

「……そうか」

 エデは言葉の意味を察する。

 この部屋の中で、翔だけが意味が解らなかったが、かといってあんな表情をしている人に対し、詳しく聞く事は出来なかった。

「ゾナアマス国が邪怪族と手を結んだとなると、人類にとってはかなりの痛手になるな」

 エデの言う通り、これまで先陣を切って戦っていたゾナアマス国が邪怪族に寝返ったなら、人類にとって、どれ程の大きなショックになることか。

 辛そうだったリックの表情が引き締まる。

「父親のことは私が何とかします。ですから、あなた方にはベカケノを倒していただきたい」

 一国の王子様が深々と頭を下げる。

「ベカケノか、邪怪族の中でも最強と呼ばれる将軍だな。どうする、翔」

 さりげなく、ベカケノのことを教えてくれる。

 一応、翔に聞いてはいるがエデの答えは、もう決まっている。

 何となく、それを察した翔は了承の意味を込め、頷く。

「解った、その依頼、引き受けよう」

 その返事を聞いたリックは、

「ありがとうございます」

 一国の王子にも関わらす、再び、頭を深く下げた。


 自分たちの宿屋に戻った翔とエデ。

「名だたる強敵がいる邪怪族の中でもベカケノは最強と呼ばれる将軍でな、厄介この上ない相手で、私でも1人じゃ勝てる自身がない」

 詳しくベカケノのことを教えてくれる。あんなに強いエデが1人じゃ勝てる自身がないなんて、どれ程の相手なのか。

 そんな相手と戦うこととなると、否が応でも不安を抱えてしまう。

「心配する必要なんないぞ、言っただろ、私でも1人じゃ勝てる自身がないってな。今は頼りになる相棒がいるんだから」

 自信を持ちなと、笑顔で翔の肩を叩く。

 エデの笑顔が消える。

「邪怪族と戦うに際し、言っておかなければならない」

 あまり気持ちのいい話じゃないのは、エデの表情からして何となく解る。

「リック王子の言っていた“処刑された方が、どれだけマシだったか……”のこと、屍骸(しがい)のことだ」

 屍骸、その話は本当に気持ちのいい話ではなかった。はっきり言って胸くその悪くなるレベル。


 早朝、エデが目を覚ますと、隣のベットで寝ていた翔が魔導剣を片手に部屋から出ていくのが見えた。

 こんな朝早くにどこに行くんだろか、気になったエデは跡をつける。


 翔が来たのは魔導剣の試し斬りをした林。

 地面に落ちていた枯葉を掴んで周囲に撒き散らすと、

「はっ!」

 気合一閃、鞘から魔導剣を抜き放ち、魔法を発動、散らばる枯葉を斬り刻む。

 斬られた枯葉は凍結して、地面に落ちる。

 翔が次の枯葉を撒き散らすため、掴もうとしたところ、

「何をしている」

 思わず声をかける。

「あっ、エデさん、鍛錬をしているんです」

 枯葉を掴み取る。

「鍛錬? 確かに鍛錬をすることは大切だが、こう言ったら何だが、翔、お前が鍛錬する必要があるのか?」

 何せ、殺される度、敵を倒す度に強くなるのだ。鍛錬なんかしなくても、強くなって行くのに。

「父さんに言われたんだ。“強い力を持っているから言って、それに胡坐をかいていてはいけないんだぞ”“常に練磨は欠かさないように、それも体だけじゃない、心も鍛える必要がある。強い力は使うものであって、使われるものではないんだ”って」

 掴み取った枯葉を撒き散らし、魔導剣で斬り刻む。

「!」

 雷に打たれたような気分だった。こんな少年にこんなこと言われるなんて。

「すげえよ、お前の親父。その通りだぜ、目から鱗が落ちるっていうのは、こんなことを言うんだな」

 エデは魔導剣を抜く。

「私もつき合わせてもうらぜ」

 翔とエデは模擬戦を行うことで、お互いを鍛え合う。



 他者の目もあるため、リックとは別々にゾナアマス国へ向かう。

 旅費はリックが出してくれたので、旅自体は快適なものであった。

 日本にいた頃、翔は家族でキャンプや旅行、学校では修学旅行や臨海学校、林間学校の経験はある。だけど、乗合馬車の移動何て初めての経験。

 乗合馬車で移動し、宿場町で泊まる。ドキドキしてしまうのも仕方がないこと。エデもそんな勝を楽し気に見ている。

 それでも、翔とエデは毎日欠かさず鍛錬を行う。継続こそ力なり。



 5日後、翔とエデはゾナアマス国に到着。

 高く頑丈な城壁に守られた、いかにも軍事国家と言う見た目。

 乗合馬車は通用口を通り抜け、国内に入る。

 王子から預かった手紙、門番にも話が通っていたことで、問題なく国に入れた。


 翔がこの世界に来て初めて見た大都市、それこそ、ファンタジーに出てくるような街並み、地球で似ているとすれば中世ヨーロッパの街並み。

 日本の都会に比べれは低いけど、この世界では十分に高い建物が並ぶ。

 整備された道路には馬車が行きかい、歩道にはそれなりに身だしなみの整った人たちが歩き、軽装の鎧を身に着けた衛兵の姿も見える。

 様々な店舗、ところどころにある屋台。

 どうやら、かなり豊かな国のようだ。

「この様子だと、ギュスターヴの裏切りのことは知れ渡っていないな」

「うん」

 翔も同意。もし知れ渡っていたなら、あんなにも幸せそうな顔はしていないだろう。

「行くぞ、翔」

 リックと待ち合わせの約束をしている食堂へ向かう。


 町外れにある食堂。外観からして、そこそこ高級店だと解る。

 店内に入り、ドアの前にいた店員に、

「プティングオムレツを」

 とエデが注文すると、ハッとした店員が顔を上げ、

「では、こちらへ」

 店の奥の個室に案内してくれた。

 これもリックの手紙に、ドアの前にいる店員に『プティングオムレツ』を注文するように指示があったから。


 出された紅茶を飲み終えた頃、フードで顔を隠したリックが部屋に入ってきた。

 一礼の後、翔とエデの向かいの席に腰を下ろす。

 前置きは抜きにして、早速本題に入る。

「ベカケノは地下水路にいます」

 テーブルに広げられた羊の皮に描かれた地図。迷路のように入り組んだ地下水路、その中の赤い丸を付けられた場所。

 ベカケノのここに潜んでいる。

「まずはベカケノを倒してください。同時に私がクーデターを起こし、父上を――父上を幽閉します」

 自らの父親を幽閉することは、相当に辛いことだろう。それでも、実行しようとする、強い意志がリックから感じ取れた。

「解った」

 それだけ言って、エデは地図を手に取った。




 本当に継続することは大切ですよね。


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