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僕は殺されれば殺されるほど、強くなる  作者: 三毛猫乃観魂


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新7章 二度目

 二度目になります。

 岳人が市外の警察署に自首をしたのは廃ホテルの一件の翌日のこと。

 岳人はネットに流れは情報は全て真実であり、主犯は泰道であるが自分も関わっていたことを話す。

 おまけにこのタイミングで佐和子が同じく市外の警察署に泰道がこれまで行ってきた悪事の証拠の入ったUSBメモリーを持ち込む。

 ちなみに警察署まではエデが護衛で付いてきてくれていた。

 市外にもそれなりに名の知られた門敷泰道の悪行、その中には殺人も含まれているために洒落にならない程の騒ぎになる。

 市外にも悪行が広まったことにより、いくら泰道の権力を使っても揉み消すことは不可能。



    ☆



「あの馬鹿息子がっ!」

 毒づきながら、泰道は旅行鞄に荷物を詰め込む。

 自首して全てを自白した岳人、佐和子が警察に渡したUSBメモリー。市外に悪事が知れ渡った以上、これまでのように握りつぶすことは出来ず逮捕は時間の問題。

 この状況に陥っても泰道には罪を償う意思は微塵もなく、高飛びの準備を始めていた。

 蛇の道は蛇、非合法に海外へ脱出させてくれる業者とは繋がりがあり、資産の何割かは海外の隠し口座に入れている。

 しばらくはどっかの国で身を潜める計画。

「見ていろ、儂はこんなことで終わったりしないからな」

 欲望と憎悪に満たされた顔を歪める。必ず戻ってきて、こんな目に合わせた者たちに復讐してやる気持ちはMAX。

 いきなり部屋のドアが開いた。一瞬、警察が来たのかとドキリとして見てみればドアの前に立っていたのは、なんと郷介。

 ピンピンしている郷介を見て、込み上げる怒り。

「郷介っ! 貴様ら“影”がちゃんと始末しておれば、儂は高飛びなぞせずに済んだのだ!」

 己の悪事のことは棚上げにして詰め寄り、郷介に罵倒を浴びせかける。

「一体、何のために今まで飼ってやった思って――」

 更にに罵倒を浴びせようとする泰道の口を郷介が掴んで黙らせた。

「お前はもう用済みだ、最後の役目を与えてやる」

 郷介の目は飼い主を見る者の目ではなかった、それはまるで虫けらを見る目付き。



    ☆



 柄九巣市には泰道の息のかかった奴ら、言ってしまえばおこぼれを貰ったいた連中がごろごろいる。それも警察署内や報道機関、市役所に学校までも。

 トップの悪事がバレたことにより、その連中たちも芋づる式に逮捕されていく。

 市外から来た警察が泰道を逮捕に邸宅に向かったがそこはもぬけの殻、高飛びも疑われたものの荷物の詰め込まれた旅行鞄やキャッシュカードや現金がなど残されており、高飛びの可能性は低い判断された。

 では一体、泰道は何処へ消えたのだろうか?



 男の子の姿に戻った翔。

 今は空き地になっている桃崎家の家のあった場所に翔とエデと佐和子は来ている。空き地のままなのは、その手の噂が流れて買い手がつかないため。

「喋り方もだけど、メイドの姿も肩が凝るんだよ」

 ラフな格好に戻ったエデが肩をグルグル回す。

「翔くん、これからどうするの?」

 佐和子も15年前から姿の変わっていない翔をあっさりと受け入れてくれた。

 異世界にいていたことは話してある。にわかには信じられない話だけど、佐和子は信じた。翔もエデもこんな嘘は吐かないと解るし、何よりも嘘を吐くならもっとましな嘘を吐くはず。

「まだ決めていない、何より泰道がまだ見つかっていない」

 あの狡猾な泰道を野放しにしていると何をするか解らない。泰道が捕まるまでは復讐は完遂しない。


 佐和子と別れた後、翔はエデと町の中を散歩。

「この町で翔は育ったんだな」

 街並みを見て回るエデ、翔にとって辛い思いでもあるが楽しい思いでもある町。

 日も暮れて夜。本来の姿に戻った翔とエデはタワーマンションを出てビジネスホテルに泊まっている、表向き姉弟として。

 道路の脇に一台の車が止まっている中古のセダン。

「これ、ずいぶん前から止まっているな」

「違法駐車だね、それに放置しているみたいだし。その内、レッカー移動されられるんじゃないのかな」

 そんな話をしながらビジネスホテルを目指して夜道を歩いていると、道路に1人の立っていた。

「!」

 翔が見間違えるはずのない相手、泰道だ。しかし何か様子が変。以前は纏っていた欲望にまみれた覇気は無く、表情にも乏しい。

 翔に続いてエデが近づこうとした時、踵を返して泰道が逃げ出す。

 様子がおかしくても泰道は泰道、ここであったら百年目とばかりに翔とエデは後を追う。


 泰道の走るスピード、とても高齢者とは思えない。

 ようやく止まったのは廃工場。泰道のご機嫌を損ね、潰されてしまった会社の所有物件。

 ギッギギギッと不気味な音を立てて、泰道は振り返る。

「この音は……」

「おいおい、この音って」

 不気味な音に翔もエデも聞き覚えがあった。

 音の正体に気が付いたエデはスマホで連絡。

 開いた泰道の口の歯は金属製の鮫型、真っ二つに割れた両手首から三枚並んだ鋭い剣が出てくる。

 間違いない屍骸だ。しかし屍骸に改造する技術はこの世界にはないはず。ならば何者が泰道を屍骸に改造したと言うのだろうか?

 そんなことを考える間など与えてくれず、屍骸と化した泰道が襲い掛かってきた。

 三枚刃の剣を躱す翔、エデは躱すと同時にカウンターで蹴り。

 フッ飛ばされる泰道は、何事も無かったかのように起き上がり襲い掛かってきた。

 異世界で屍骸とは何度も戦ったので攻撃を躱すのは容易いが、魔導剣を持ち合わせていないために翔にもエデにも攻撃手段は限られる。

 手こずるかと思われた時、超高速で来た栗之介が廃工場に駆けつけた、魔導剣を2本持って。

 先ほど、エデがスマホで呼びつけた相手が栗之介。

 それぞれ、魔導剣を手に取る。戦いはここから。

 日本でも異世界でも屍骸に変わりはない。しかも素体となった泰道が高齢のため、異世界て戦った屍骸よりも弱い。

 魔導剣を装備した翔とエデの敵にあらず、あっさりと倒す。


 倒したのはいいが問題は誰が泰道を屍骸に改造したかと言う事。この世界の住人には出来ない、つまり翔とエデ以外に異世界から来ている奴がいることを意味する。

 では一体誰が……。

「やはり屍骸ごときでは、かすり傷一つも出来なかったか」

 廃工場の奥から1人の男が出てくる、翔とエデにも見覚えのある男。

「的場郷介」

 忘れようもない、家を襲撃してきた“影”のリーダーであり、父親に一撃を食らわせた相手。

「何で生きてんだ? 私がぶっ殺したのによ」

 佐和子を助けた時、確実に仕留めたはず。なのに生きていると言う事はただ者ではない証。

「的場郷介はこちらの世界での名前だ。向こうの世界での名前は――」

 郷介がオーラを纏う。そのオーラに翔もエデも心当たりがあった。

 まさか! 翔とエデ、同時に同じ相手を思い浮かべた。

「邪怪魔帝王ベルトラーター・ツペシュ・フーン」

 郷介が纏うオーラは正しくベルトラーターと同質のもの。

「何で死んだはずのテメーがこっちの世界にいるだよ、見た目も違うじゃねぇか!」

 間違いなくあの時、ベルトラーターは死んだ。にもかかわらず、今、目の前にいる、姿を変えて。

「生まれ変わったんだよ、この世界の人間に、お前と同じ“力”を持ってな」

 ベルトラーターが死ぬ前に願ったことが叶ったのだ。

「おまけにかっての配下の力も使えるのじゃよ」

 掌に炎を生み出す。それはまごうことなく、邪怪炎魔王ダマン・ラーサの力。

「生まれた時から、儂はベルトラーターとしての記憶を持っていたよ。大人になるまではただの人間としてふるまっていたがね。まぁ、その間も“力”の使い方を学んではいたがね」

 人相は違えでも笑い顔は同じに見える。

 後ろ盾として泰道が選ばれた理由は彼の権力と財力と強欲さと悪辣さ。

 うまく取り入り実績を積み、“影”設立まで至った。

「しかし……」

 郷介、ベルトラーターの視線が翔を見る。

「こっちの世界でお前に出会うとはな」

 “影”と共に襲撃してきたときには、郷介は翔のことを知っていた。

「あの時、殺しておけばあっちの世界に来ることは無いと思っておったのに……。何故に来ることが出来たのじゃ」

 皮肉なことに、その行為が翔が異世界へ行くきっかけになったとはベルトラーターは気が付いていない。

 睨み合う翔とベルトラーター、二度目の最終決戦。翔は魔導剣を握りなおす。

 ベルトラーターが右手を伸ばすと、白鞘の刀が飛んできて手に納まる。

 抜刀し、鞘は投げ捨てた。

 小次郎破れたりとは言わなかった、言う余裕などない。

 “僕と同系統の能力を持つ者に殺されたら、多分、生き返ることは出来ない、本当に死んでしまう”

 この戦いに負けたら、本当に死んでしまう。

「こいつは儂がこっちの世界で手に入れた妖刀でな、かなりの業物だよ」

 それは翔にも解った。刀身からは何か怪しい妖気が出ている。

 白鞘の刀に魔力を送り込む、ますます怪しさを増す刀身。

 先に動いたりはベルトラーター、振り下ろされた妖刀を魔導剣で受け止めた。

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

 翔も刀身に雷の魔法を注ぎ込む。

 轟く雷鳴、薄暗い廃工場を一瞬雷光が走る。

 突き出した左手から竜巻を放つベルトラーター。

 ふっ飛ばされた翔は空中で体制を立て直し、着地と同時に炎の魔法を放つ。

 ベルトラーターは氷の魔法を放つ。

 炎の魔法と氷の魔法はぶつかり合い、お互い砕けて散らばる。

 翔とベルトラーターは土埃を巻き上げながら床を蹴り、魔導剣と妖刀を打ち合う、それも激しく。

 双方、業物であるがため刃こぼれ一つせず。

 あまりにも凄まじい戦い、歴戦の英雄のエデてさえも目で追うのが精一杯。

「くそっ」

 ろくに助けることはできない、助けようとすれば逆にベルトラーターをパワーアップさせてしまう。

 何もできない自分にいら立ちを見せるエデ。

「!」

 この時、天啓のごとく妙案が思い浮かぶ。

 そっと、エデは廃工場を抜け出す、ある場所に向かうために。


「お前の相棒は逃げ出したようじゃぞ」

 想像を絶する速さでの妖刀攻撃。

「エデさんは逃げるような卑怯者じゃない」

 妖刀攻撃を魔導剣で捌く。

「人間は愚かなのだよ、儂と同じ力を持ったお主にそれが解らぬのか!」

 振り下ろされる妖刀の一撃。

 真横に移動し躱す、外れた妖刀の一撃はコンクリートの床を切り裂く。

「人間は愚かではない。負けたのに何故解らないんだ、ベルトラーター!」

 横一直線に魔導剣で斬りつける。

 高くジャンプ、翔を飛び越えて背後に着地。

 魔導剣の一撃の起こした突風が床の土埃を払い、転がっていた新聞紙や空き缶などのゴミを巻き揚げる。

 すぐさまに翔は振り返り、振り下ろされた妖刀を魔導剣で受け止める。


 廃工場を抜け出したエデの向かった先は違法駐車されたセダンの前。

「確かあのアニメと映画では……」

 以前に見たアニメと映画を思い出し、拳で窓を叩き割りロックを解除してドアを開け運転席に座る。

「映画でも……」

 ドアを閉めながら、映画の内容を思い出す。

「そうだ、ここをこうするんだ」

 ハンドルの後ろを壊して配線プラグを出して千切って接続させてみる。

 バチバチと火花飛んだ後、エンジンがかかる。

「おっ、かかったかかった、あの映画通りだな」

 早速、セダンを走らせる。

「そう言えば……」

 運転しながら、あるシーンを思い出しサンバイザーを動かしてみた。

「あっ」

 サンバイザーからは鍵が落ちてきた。


 ベルトラーターの放つ炎の魔法を翔は雷の魔法を放ち打ち消す。

 次にベルトラーターから打ち出された高重力の魔法を翔は風の魔法で切り裂く。

 気合とともに妖刀で斬りかかるベルトラーター。

 妖刀の斬撃を魔導剣で払い反撃。魔導剣で払い反撃を妖刀で受け止め、力技で翔ごと弾き飛ばして斬りつける。

 瞬時に体制を体制を立て直し妖刀を躱す。

 お互いの魔法を打ち消し合い、お互いの剣劇を弾き合う。

 翔は引かない、ベルトラーターは引く気無し。ほぼ同じ“力”を持つ者同士の戦いは激しさを増すばかり。

 翔とベルトラーターは同時に氷の魔法を放つ。

 ぶつかり合い弾ける氷の魔法。廃工場の気温は一気に下がり、2人の吐く息は白く染まって周囲に霜が降りる。


 エデはアクセルを目一杯踏みしめ全開。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 中古のセダンが廃工場に突っ込んでくる。

 異世界では共に戦った相棒、直感に近い感覚でエデの意図を読み取った翔は真横に飛びのく。

 行動の遅れたベルトラーターを中古のセダンは直撃、ブレーキをかけていないままの勢いで。

 体をくの字に曲げ、吹っ飛んでいくベルトラーター、手を離れ落ちる妖刀。

 それを見てエデはブレーキをかけ、中古のセダンを止める。

 摩擦により、煙を上げ軋むタイヤが耳障りな音を鳴らす。

 中古のセダンから出てくるエデ。

 落とした妖刀を拾い上げる翔、回復して立ち上がる隙は与えるつもりなど無し。

 一撃目の妖刀一閃、二撃目の魔導剣一閃、続いて同時にベルトラーターに深々と妖刀と魔導剣を突き刺す。

 妖刀と魔導剣にありったけの魔力を注ぎ込む。

「バ、馬鹿な……儂の体が……」

 ベルトラーターの体が崩れ始める。

「儂は不死身になったはず……」

 殺されれば殺されるほど生き返り強くなる、翔と同じ“力”をベルトラーターも手に入れたのに。

 エデも思い出す、異世界で初めて翔と会った時のことを。

『でも、この能力は無敵じゃないんだ……』

『僕と同系統の能力を持つ者に殺されたら、多分、生き返ることは出来ない、本当に死んでしまう』

 それはベルトラーターにも言えること。

 分解されたベルトラーターの体が純粋な糧として、翔に吸収されていく。

「この儂が二度も破れるとは……」

 必死に伸ばしたベルトラーターの手が崩れ去り、翔に吸収された。

 跡形もなく消えたベルトラーター、彼がそこにいた名残は着ていたスーツのみ。








 エデの見たアニメと映画は好きです。

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