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僕は殺されれば殺されるほど、強くなる  作者: 三毛猫乃観魂


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新4章 崩

 短めになります。

「そうか、その件は手を打っておこう」

 自分の息のかかった秘書からの報告を受けた泰道はスマホの通話を切る。

「ふん、たかが飼い犬ごときが大人しくしていればよいものを」

 老いてもなお悪質さの滲み出る顔を歪ませ、スマホを掛けた。

 相手はすぐに出た。泰道を待たせることなど誰にもできない、この柄九巣市では。

「健司か」

 泰道は指示を出す、無慈悲な命令を。


「――解りました、そのようにいたします」

 健司は深いため息とともに、通話の切れたスマホをしまい込む。

 泰道は一回しか要件を言わなかったが、それでもしっかりと伝わった。

「あの馬鹿が……」

 悪縁とは言え長く続いた関係、敏夫に対してはそれなりの思いはある。だが泰道の要件には従わなくてはならない、従わなければやられるのは健司自身。

 しまい込んだスマホを取り出し、敏夫を呼び出す。



 翌日、健司の招待に応じ、のこのこ自宅を訪ねてきた敏夫。

「急に招待してくれるなんて」

 以前よりやつれてた顔をしているが、嬉しそう。

「ああ、いい酒が手に入ったんでな」

 健司はコップに日本酒を注ぎ敏夫の前に置く、おつまみはからすみ。

「最近はろくでもないことが続いてたからな、こんな時に頼りになるのは友達だよ」

 友達と言う言葉に健司の心がチクリと痛む。

 ニコニコ顔で敏夫は何の躊躇することも無く、日本酒を飲み干す。


 机に突っ伏し、敏夫は眠っている。

 健司が背中を叩いても反応なし、しっかりと薬が効いている証拠。

「すまんな敏夫、私も自分の命が惜しいんだよ」



「ここは……?」

 意識を取り戻した敏夫。薄暗い部屋にいて両手を鉄製の手枷で拘束具され、鎖で吊るされている。

 状況を理解した途端、敏夫は慌てふためく。

「君とは付き合いが長い、それなりの友情も感じている」

 淡々と言いながら、健司は厚めの革の手袋をはめる。

「な、何をするつもりだ!」

 それには答えず、淡々と机の上に道具を並べていく、それは見るだけでも恐ろしい拷問道具。

 見る見る青ざめていく敏夫をしり目に、革のエプロンを着ける健司。

「悪く思わないでくれよ敏夫、これも命じられた私の仕事なんだ。月並みなセリフだが、恨むならば身の程を弁えなかった、己自身を恨め」

 悲しそうな表情で先の尖った鉄のハンマーを手に取る。



「――吐きました、証拠品は柄九巣市の貸金庫にあると……」

 着けている革のエプロンに残る血の跡、飛び散り方から、どれ程の身の毛もよだつ拷問が行われたことだろうか。

「はい、解りました。遺体はこちらで処分しておきます。では今後ともよろしく、お願いします、泰道様」

 スマホを切る健司。

「……」

 良心や罪悪感を持っていたら、今、ここにいない。それでも嫌な気分は拭いきれない。



『――吐きました、証拠品は柄九巣市の貸金庫にあると……』

 息を引き取った後も、魔法技術の盗聴器は会話を伝えてくれる。

「裏切り者の末路か……」

 小さな声で澪が言う。恨みの感情も湧かないが喚起や哀れみの感情も湧いてこない。

「これが役に立つ時が来たな」

 アニはテーブルの上に複製した敏夫のマイナンバーカードと鍵束やカードキーなどの品を並べる。



 日が変わり、早速、柄九巣市内の銀行へ向かう健司。尋問(ごうもん)前に鍵束やカードキー類は取り上げている。

 ロックを解除して貸金庫の扉を開ける、中には悪事の証拠の品が入っているはず……。

「なっ!」

 中身は空、何にも入っていない。

 慌てた健司は近くにいた職員に役職を告げ、敏夫の貸金庫の件を問う。

「昨日、ご本人が来ましたが」

 それはあり得ない、昨日の敏夫は尋問(ごうもん)中だったのだから。

 すぐに警察署長の権限で半分脅しで、応対した職員を呼び出し、

「本当に倉野敏行だったのか」

 と問いただす。

「本人だと思います。ちゃんとマイナンバーカードも確認いたしましたし」

「顔は確認したのか?」

 再度、問いただすと職員は当時の記憶を何とか呼び起こし、

「確認したと思いますが……」

「本当か」

 まるで尋問、いや、尋問そのもので迫って来る。

「そう言われますと、しっかり確認したかどうかは……」

 つい目を反らしてしまう。

「防犯カメラだ、防犯カメラ映像を見せろ」

 完全に命令口調、それだけの焦りがあると言う証でもある。

 部屋を変え、防犯カメラ映像のチェック。

「何だ、これは……」

 昨日、いるはずのない敏夫が隠し金庫を開けているときの映像は乱れていて、誰が開けたのか確認が出来ないではないか。

 サーっと青ざめる。泰道は裏切りも許さないが失敗も許さない、敏夫は明日の我が身。到底、誤魔化しなんか通じるはずのない相手。

『バレる前に、何としても見つけださなくては』

 それしか道なし。



 隠し金庫から入手した証拠品、泰道の決してお天道様の下には出せない命令の音声データ、敏夫も関わっている裏帳簿やマネーロンダリングなど。

 銀行へ行ったのはアニ、敏夫に変装して。と言ってもどこかの怪盗ではないので防犯カメラの映像を乱す装置を持参。

「本格的に攻撃に移るよ」

 普段の大人しい表情とは真逆の表情になる澪。








 ゆっくりじんわりと。


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