第十五章 最終決戦後
邪怪魔帝王ベルトラーター・ツペシュ・フーンを倒しした後の話。
邪怪魔帝王ベルトラーター・ツペシュ・フーンが討たれた。この情報は瞬く間に、邪怪族の世界を駆け巡る。
最初こそ、半信半疑な者もいたが時間が経つにつれ、それが真実だと否が応でも理解していく……。
ベルトラーターによる強制徴兵は無くなり、庇護も無くなる。
圧政に苦しめられていた者たちは大喜び、逆に崇拝していた者たちは嘆き悲しむ。
亡くなった者の葬儀を終えた後は勝利を祝う宴、しかも今回は宿敵であるベルトラーターを倒し、勝利を完全なものにした宴。
レジスタンスの関係者以外にも、ベルトラーターの圧政に苦しめられ、虐げられた者たちもオーガの村にやってきて宴に参加したことで、今まで以上の大きな宴になる。
楽器が得意な者が奏でる音楽に合わせ、歌が上手な者が歌い、それに釣られダンスを披露する者。
数々の料理に人間も邪怪族も関係なく、舌鼓を打つ。
ただベルトラーターを信仰している者たちの報復の危険性もあるが武形は全部、自爆させたので籤で当たり、もしくははずれ? 引いた者が見張りの任を負う。正し交代制なので、時間が来れば見張り役も宴を楽しめる。
しみじみと酒を飲んでいるリックに、
「帰るのか?」
シデルが簡潔に聞いた。
「そうですね、落ち着いたら、帰るつもりです。向こうは私の帰りを待っている民がいますので」「そうか……」
そう呟くシデルは寂しそうにリックの隣に座る。
「私と共に人間の世界と邪怪族の世界の懸け橋になってくれませんか」
エッいった顔になるシデル。
「人間と邪怪族の間には、まだまだ大きな溝があります。でも私たちが協力し合い、ベルトラーターを倒したように手と手を取り合えばえば、どんな困難も乗り越えると私は信じています、いえ、確信しています。だから、シデルさんと共に歩みたい」
非の打ち所がない真剣な眼差しで見つめくるリック。
「そうだな、私たちならば人間と邪怪族の共存共栄が叶うだろうな」
差し出されたシデルの手をリックは掴む。
まだまだ宴は続く。
リンゴを絞って作った果汁、いわゆるジュースを飲んでいる翔。誰とも話すことなく、静かに考えている。
「元の世界に帰るつもりか?」
唐突にエデが話しかけてきた。
何で解るのか、もろに顔に出る。
「ベルトラーターから会得した“次元転移”を使えば、翔の元いた世界に帰れるんだろ」
その通りである。まだ試してはいないが、確実に帰れることは間違いないだろう。
「ベルトラーターを倒したことで、翔がこの世界でやるべきことはやり遂げた。まだまだ残っていることはあるが、まっ、それは“私たち”じゃなくとも十分に出来ることだしな」
帰れるなら、帰りたい、そしてやりたいこともある。忘れたくとも、忘れられない、家族が殺された日のことを。
家族を奪われた恨みはある。何よりあいつらを野放しにしていたら、自分と同じ奪われる者たちがどれ程出ることだろうか。
それを親友がやっていると言うなら、尚更、翔自身の手で止めたい。
「やりたいことがあるなら、私も手伝わせてもらうぜ」
驚いてエデの顔を見る。冗談を言っている顔ではない。何より、エデはこんな冗談は言わない。
「お前は私たちに力を貸してくれた、何の見返りも求めずにな。なら、今度は私が力を貸す番だ」 翔の隣に座り、頭をわしゃわしゃと撫ぜる。
「それに――」
エデの視線が前を向く、翔も同じ方向を見ると、そこにはリックとシデルが立っていた。
「私たちは翔さんの世界に行くことは出来ませんが、私たちの出来ることならどんなことでも協力します」
迷うことなくリックは言ってくれ、隣にいるシデルも私も同じだと顔が言っていた。
次回から、新章になります。




