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僕は殺されれば殺されるほど、強くなる  作者: 三毛猫乃観魂


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第十二章 獣人戦士

 何か冒頭が弔いばっかりになってます、流れ的になってしまいました。

 今回の戦いではレジスタンスたちには被害者は出なかったが、攻め込んできたトロールは全滅した。

 シデルはトロールの遺体を広場に集め、並べる。

「敵なのに弔うのですね」

「ああ」

 リックに頷くシデル。

「志は違えども、この者たちも信念で戦った」

 言ってしまえば、トロールはドルフ・シィーに利用されたようなもの。

 ゆっくり、シデルはトロールの遺体に火をつけた。

「シデルさんのその思い、私も見習いたいものです」

 敵にも敬意を見せる。簡単そうに見えて、そう簡単には出来ないこと。

 トロールの遺体は炎に包まれ、煙となって天へと帰っていく。


 ベルトラーターの居城を護る結界がまた一つ消えた。これで残る結界は一つ。


 ドルフ・シィーとトロールの一件がある。ドルフ・シィーにこの町のことを知られたなら、最後の邪怪五魔王に知られても不思議はない。

 襲撃の可能性は十分にある。ならば対応できるようにレジスタンスたちはオーガの町をこれまで以上に警護し、武形も入り口に配置。

 油断して欠伸なんかすることも無く、しっかりと2人のオーガは見張っていた。

「あっ!」

 見えた。猫耳犬耳うさ耳など、獣人たちを引き連れた黒い皮マントを纏った男の姿、フードで顔はよく見えない。


 1人が残り、もう1人のオーガは急いで町に戻り、

「この町に多数の獣人たちが向かってきています!」

 みんなに聞こえるように報告。

 報告を聞いたオーガは日常モードからレジスタンスモードへと切り替え、各々の武器を取りに向かう。

 翔とエデ、リックと各国の兵士たちも同じ。


 町の外へ飛び出す翔とエデ、レジスタンスたち、各国の兵士たち、武形。

 黒い皮マントの男率いる獣人たちは歩みを止めた。

 しばし、睨み合う両者。

 黒い皮マントの男が前に進み出て、フードを下ろす。

「私は邪怪雷魔王、シビク・ハン」

 黒い皮マントの男、シビク・ハンは名乗る、その顔は豹。

 これから戦いが始まるかと思われた矢先、突如、シビク・ハンが跪き、獣人たちもそれに続く。「“獣人たち”一同をレジスタンスに入れてもらいたい」

 予想外の行動にレジスタンスたちはあっけにとられてしまう。

「ほん――」

 本気なのかと聞こうとしてシデルは止めた。本気なのはシビク・ハンがと獣人たちを見れば十分に伝わって来る。何より、全く敵意が感じられない。

「解った」

 来る者が信頼できる者なら、断る必要は無い。それがシデルのやり方、そうやってレジスタンスを大きくしていった。

 シデルが受け入れるなら、レジスタンスたちも反対はしない。翔とエデ、リックと各国の兵士たちも文句なし。

「恩に着る」

 立ち上がるシビク・ハン。

「私が生きている限り、最後の結界は解けない。そして私は邪怪五魔王が一人」

 シビク・ハンただ一人から戦意が発せられる。

「代表者同士の一騎打ちを望む」

 そこには何の裏も思惑も無い、純粋な真剣勝負の申し込みのみ。

「解った、その勝負、受け入れよう」

 申し出を受け入れるシデル。

「では……」

 シビク・ハンの視線が翔とエデ、レジスタンスたち、各国の戦士たちを見回し、翔の前で止まる。

「その少年と戦いたい」

 少年と言っても、その言葉には子供と舐めてかかる意思などない。

 いきなり、指名を受けて翔はドキリとはしたが、他の者たちは一度だけ顔を見合わせたものの、満場一致で納得。

 何せ、翔には例の能力がある。

 レジスタンスを代表し、前に出る翔、そこには緊張は微塵も無し。

「名を教えてくれ、少年」

 その言葉には、翔を1人の戦士として認めていた。

「桃崎翔」

 相手の気持ちを読み取り、素直な気持ちで名乗る。

「私は邪怪五魔王が1人、邪怪雷魔王、シビク・ハン」

 戦士と認めた相手が名乗ったので、こちらも名乗る。

「始めよう」

「はい」

 シビク・ハンに頷き、翔は魔導剣を抜く。


 睨み合う翔とシビク・ハン。シビク・ハンの8本の髭がバチバチと火花を放ち、全身り体毛が逆立つ。

「!」

 翔に驚く間など与えず、体当たりを仕掛けてくる。

 ギリギリで躱す、革の鎧の掠った部分が焦げる。今、シビク・ハン全身に纏っているのは高圧電流。

 体当たりを警戒して翔は距離を取る。

 突き出したシビク・ハンの手から放たれる高圧電流。

「わあっ」

 間一髪、躱すことが出来た。高圧電流の直撃を受けた地面が焦げる。

 シビク・ハンは容赦はしない、接近戦での高圧電流を纏った体当たり、遠隔攻撃の高圧電流波。流石は五魔王が一人、邪怪雷魔王。

 魔導剣に炎を纏わせ、斬りかかる。

 シビク・ハンは避けようともせず、左手で魔導剣を掴んで止める。左手は切り裂かれ、纏う炎で焼かれても表情一つ、歪めることなし。

 残っていた右手で翔の腹に拳をねじ込み、全身に貯めこんだ高圧電流を放つ。

「がああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


 全身に熱と痺れと激痛が一瞬で駆け巡る。

 高圧電流により、全身内も外もくまなく焼かれ、煙を上げ黒焦げになって倒れる。

 死んだ、確実に死んだ、ほぼ即死状態。2度と起き上がることは無いだろう、普通の人間なら。


 起き上がる翔、黒い焦げが剥がれ落ち、傷一つない肌が露になる。そこには高圧電流の被害は見受けられない、唯一被害と言うならば焼けて無くなった装備。

「――やはり、そうだったのだな」

 豹の爪を伸ばし突っ込んでくるシビク・ハン。

 咄嗟に落ちていた魔導剣を拾い、反撃に転じる。刀身に霜が着く、氷の魔法を発動させた証。

「我が力を受け取ったな、桃崎翔! 我が身を持って、お前の全てを受け止めて見せようぞ!」

「えっ」

 魔導剣がシビク・ハンを貫く。

「まさか、僕の力のことを知っていて……」

 豹の顔で微笑むシビク・ハン。

「私では従うことでしか獣人たちを守ることが出来なかった。だが、お前なら……」

 シビク・ハンの右手が翔の肩を掴む、力強くでもあり優しく。

「獣人たちのことを頼む――」

 肩を掴む手にから力が失われ、シビク・ハンが倒れる。


 最初から、シビク・ハンの真意を聞いていた獣人たちは翔を憎むことも怒ることも無く、ただ主君を見送る。

 それを見たエデ、シデルとレジスタンスたち、リックと各国の戦士たちも目を閉じ頭を下げ、シビク・ハンに敬意を称した。




 邪怪五魔王、最後の一人との戦い。

 最後の一人に相応しい、戦士。


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