少年は決意表明した
俺の銃で……人が傷ついた……
畳に敷いた布団に横になっている千原康太はその目を閉じれずに天井を見つめていた。
そんな彼は意味もなく、右手を天井に翳してみる。そして、その右手の甲を落下させ、自分の額に着けた。
銃の訓練がカリキュラムが入った学校なんて、やめときゃ良かったな……こんな事になるなら……
康太の頭にそんな考えが過ぎった時、康太はその首を横に激しく振った。
もう! 寝よ寝よ!
そう心中で言った康太は毛布を深く被って、その顔を天井から横に向けた。
☆
次の日。学校へと普通に登校する康太だったが、彼には周囲から冷たい眼差しが注ぎ込まれる。
“あいつの銃が盗まれたらしいぜ?”
“あの子の銃で誰か撃たれたんだって?”
“やばっ!”
“近づいたら、次の標的にされるかもっ!?”
“なんで、学校来てんだよー。警察行けよ”
聞こえてくるはずの無い声が頭の中で勝手に作り出され、響いていく。
その周囲の眼差しが飛び交う中、康太は拳を握り締めながら、自分の教室へと向かった。
教室に来ても、学校での道中で向けられた眼差しと何ら変わりの無いものが康太に向けられる。
「おい、康太! お前……」
鞄を置いた康太の席へと拓也がその身を近づけた。
「大丈夫なのか?」
「ああ。退学にはならなかった」
「いや、そういう問題じゃなくて……精神的な面だよ……」
康太から目を逸らして言った拓也の様子を横目で見ながら、康太は鞄の中のものを引き出しへと押し込む。
「精神的な面……ねぇ……」
全ての教材を机へと入れ終えた康太はその言葉を繰り返し、嘲笑った。
「そんなもん気にしちゃいないよ。けど……俺の銃を使って誰かが怪我したってのは気に食わない……」
康太は自らの席を離れ、黒板の前まで歩み寄り、教卓を叩いて、まだ、全員揃ってはいない教室で決意表明する。
「俺が犯人捕まえてやるよ!」
そう息巻いた康太を一人の人物が笑ってみせる。
「犯人を捕まえる? それは無理だろうな」
このクラスの学級委員である久田武彦はその顔に笑みを浮かべたまま、立ち上がってみせる。
「相手はこの学校のセキュリティの全てを投入した銃の訓練所から銃を奪った奴だろう? そんな頭のいい奴にお前みたいに頭の悪い奴が敵うわけがない。被害者は増えるばかりだろうよ」
そのまま、康太のいる教卓のほうへと向かった久田は康太の胸倉を掴みかかった。
「お前みたいに頭の悪い奴は授業中だけその小さな脳みそを使ってりゃいいんだよ」
教室の何人かの女子が騒ぎ出し、胸倉を掴みかかった久田を何人かの男子生徒が止めに入った。
「おい! どうしたんだよ、久田! お前らしくねえぞ!」
「そうだぞ!」
止めに入った男子生徒が叫ぶ中、久田は言葉を続ける。
「俺はこういう現実見ない奴が一番嫌いなんだよ!」
「だったら……頭良くなればいいんだろ……?」
康太のその言葉を聞いた久田は反応を見せた。
「分かったよ……今度の中間で俺は――――この学年のトップになってやるよ!」
「……それが現実見てねえって言ってんだよ!」
康太に殴りかかろうと暴れだす久田を必死に止める男子生徒を他所に康太はその教室を後にした。
☆
おいおい……この莫迦はとうとうやってしまいましたよ……犯人を捕まえる、中間テストで学年トップになるなんて言ってしまった……
屋上に来た康太は俯瞰風景を眺めながら、後悔の真っ最中であった。
やばいよ……どうすりゃいいんだよ……『Time is money制度』使わない限り、学年トップなんて無理だよ……だけど、意地でもあんなもの使いたくねえし……
「どーすりゃいいんだぁぁぁぁぁああああああ!!!」
と康太が叫んだ瞬間にチャイムは鳴り響いた。
いやだぁー……教室に戻りたくねえよー……
涙目になりながら、屋上を去ろうと出入り口の扉を開けた瞬間、そこには一人の女子生徒が康太を待ち受けていた。
えっ……? ちっさ!?
身長一五○くらいの女子生徒がそこにはおり、康太はそれを見下している状態であった。
「あー!!」
康太のことを指差して急に叫びだしたその女子生徒に驚きながら、段々と詰め寄ってくる女子生徒に気おされ、康太は後ろへと退いていく。
「銃盗まれた人でしょー!! すげー! マジでー!」
と後ろに退いていくうちに、その女子生徒の片手に持っているものに康太は気付いた。
「パソ……コン……?」
学校には持ってきてはいけない、というか普通は持ってこないノートパソコンを女子生徒は片手に抱えていた。
その康太の言葉を聞いて、やっと詰め寄らせてきたその動きをやめて、女子生徒と康太は立ち止まる。
「うん。そだよー。パソコン。でさぁー! なんで銃奪われたのか、理由とか知らないのー!?」
その尋ね掛けに対して、康太は戸惑いながらも首を振る。
「あーそーなんだー……残念」
しょぼんと落ち込む女子生徒はその場に座り込んで、ノートパソコンを屋上の地面に置いた。
「うーん……どうやってあんなセキュリティ抜けられたんだろうねぇー全然わっかんないやー」
パソコンの電源をつけ始める女子生徒を見ながら、康太は尚も今の状況が良く掴めておらず、尋ねかける。
「えっと……なっ名前は?」
「名前ー? 忘れちゃったなー……なんてのは嘘でー羽田亜由って言うのー。一年一組だからよろしくねー!」
一年一組……ちょっと待てよ……クラスってのは一組が頭良くて五組が頭悪いんだろ? なら、この子、頭良いのか……
優等生というイメージが浮かんだ康太。それと同時に疑問に浮かんできた。
「で……なんで、HR始まってんのに屋上でパソコンなんかしてんの……?」




