救世主C
その笑みは不気味。
「お前は俺に……何をさせようとしてる……!?」
玄関での怒鳴り声はアパートの廊下中に響き渡った。
「まあ、まずは中に入れてくれるか?」
「入れねえよ……俺はお前が信用できなくなった……」
女は呆れたような溜息を吐いた。そして、呟く。
「金さえ手に入ればそれでいい。そう予想してたんだけどなぁ……やっぱり、人を動かすのって上手くいかないものね」
女の口調が老人のものから普通の女性の口調に変わった。
「演技……だったのか……?」
「あれ? 気付いてなかった? 私の演技力も捨てたもんじゃないわね」
皮肉を漏らすその口だが、表情は笑っていない。
「お前は……何者なんだよ……名前は……?」
そう。俺はこいつから名前さえ、聞かされていない。そして、女は尋ねられた瞬間に考える素振りをみせた。
「本名を言え」
「声のトーンを一定にしないでくれるかな? 怖いわ」
「だったら、本名を名乗ろうとしろよ!」
俺がそういったのにも拘らず、考え出す女に俺は腹が立って話題を変えた。
「何が世界の救世主だ!? Time is money制度なんてものを創ったら、世界は急変する! しかも、負の方向へ!」
「いいえ。ただ、差が大きいだけよ。優れている人はどんどん優れていき、莫迦な人はずっとそのまま。こんなに単純な世界はないんじゃない?」




