14/35
救世主Be
そんな女が取り出したのは一冊の本。
「なんだ? これ?」
俺は女が突きつけてきた本をパラパラとめくりながら尋ねる。
「まあ、読んでおくのじゃ」
「……俺、活字とか苦手なんだけど?」
「おお! それは良かったじゃないか! 苦手を克服できるチャンスじゃぞ!?」
いや、マジでその笑みがムカつくんだけど? 殺していい? ねえ、殺しても良いですか!!
その言葉を必死に飲み込みながら、俺は本に目を落とした。
電子回路? 何? 意味不明……
専門的な用語がずらりと並んでおり、目眩がした。
「じゃあ、今日からそれを読んだりして過ごすのじゃ」
手を此方に向けて、颯爽と去っていった女の背中を見た後、次の瞬間にはその背は玄関のドアに包まれた。
はぁ……一千万……
俺はしぶしぶ、その一千万を手放すためにその会社の株を買った。
俺の手元に残っているお金の残高は三十万前後。一週間、生きていく分には十分なお金。
「溝に捨ててしまったのかな……一千万……」
まあ、考えても意味ないか。後はキリストや釈迦にでも祈るしか道はなさそうだ。マホメットでもいいかな?
人生を投げ捨てようとした奴が、神頼みだ。
キリストは許しちゃくれないだろうな。生きることこそが天国なんだから。
と、そんな事を考えながら、俺は女から渡された本を読むのを避けた。




