第八話 勇者、魔王の趣味にドン引く…
きっかけは、またしても王妃からの伝書鳩だった。
『魔王殿下の様子を見てきてくださいませ』
……おれ、勇者からパシリに格下げされた?
というか、最近まったく勇者っぽいことしてない気がする。
……いや、気にしちゃダメだ。
***
「殿下〜、入りますよー?」
ノックして扉を開けた瞬間——
魔王の顔が、見たことないくらい固まった。
「……っ!? ま、待て勇者! ここはまだ片付けが——!」
手遅れだった。
机の上にずらりと並ぶ勇者アクリルスタンド。
壁一面のポスター。
そして、部屋の空気より濃厚な「愛」。
「……殿下、これは……?」
「ふ、ふふっ。余の“記録室”だ。深い意味はない……はずだ」
「いや、深すぎるでしょ!?」
魔王は苦し紛れに話をそらすようにアクスタを指差した。
「ちなみにこの等身大のものだけは特注だ。余の“本命コレクション”だ」
「どの口が言ってるんですかっ!!」
ふらふらと机に歩み寄り、両手でドンとつく。
「もう……ツッコむ気力もない……」
そのとき——“カチリ”。
壁がゆっくりと回転し、奥に隠し部屋が現れた。
棚にはぎっしりと並んだアルバム。
「……これ、風呂上がり!?」
「うむ。湯けむりが美しかった」
「……こっちは……俺? 寝相悪い?」
「ふっ、動きが激しいのも愛らしいな」
「褒められてる気がしないんですけど!?」
「もう……ダメだ……!」
頭を抱えた俺は、手に持っていた大量の写真を放り投げた。
「処分! とにかく全部捨てるからな!」
「ま、待て勇者! 余のコレクションが——!」
「はいはい、思い出は心の中に!」
(山積みになったゴミ袋がどっちゃり)
「は〜スッキリした!もっと捨てたかったけど、ゴミ袋使い切っちゃったし、まぁこんなもんだよね」
「鳩さん、これ、ゴミ捨て場まで運んでおいて!」
鳩:クル〜(鳩がゴミ袋を見つめて)
「……勇者、鳩使い荒いな……」
(魔王、肩を落として空を見上げる)
「……まぁ、再発注すれば良いだけの話だ」
鳩:クル〜「……ところで魔王殿下、再発注リストはこれでよろしいですか?」
「え、もう!?」
「仕事が早いな」
鳩:クル〜(記録:魔王、反省ゼロ)
***
♬ BGM:『Every Breath You Take』 / The Police
(サビ「I’ll be watching you」で鳩カメラ映像が流れる)
【あとがき:王妃の執務室にて】
「——ついに、完璧に準備が整いましたわ」
王妃は満足げにティーカップを傾けた。
この日のために、グッズの売上はもちろん、
魔王殿下からもスポンサー契約を取り付け、
王国民、そして魔界民にまで“特別な装置”を配布済み。
「ふふ……これで、“愛”は世界を包みますわね」
鳩:クル〜(記録:王妃、世界規模の“何か”を起動)
──次回、『***************』
鳩:クル〜「え? まさかのタイトル伏字!?」




