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【完結済】異世界召喚されたら魔王を倒す勇者なのに何故か恋人になったんですけど、何か?  作者: ユズ(『ラジ裏』修正版・順次更新中)


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第七話 魔王、勇者の実家を魔界化する?

一週間ぶりに王都を離れ、俺は“実家”に帰ることになった。


……分かるから言うな。実家? そう、実家。


なぜかこの世界にも俺の実家が存在する。

というか——召喚された時点で一緒に転送されてきたらしい。


「あら、勇者さんの召喚の際に、ご実家も一緒に召喚しておきましたのよ」

「は!? 家ごと!?」

「だって、実家は必要でしょう? 心の安定、大事ですもの」

「いやいやいや……!」

「ちなみに、生活費などはすべて魔王殿下から出ておりますので、ご安心くださいませ」

「……え、俺の知らないところでスポンサー契約!?」


鳩:クル〜(記録:王妃、勇者の生活環境も完全管理)


***


リビングに入ると、母さんと——なぜか魔王が、すでにお茶していた。

テーブルの上には湯気の立つティーポット。

二人とも妙に打ち解けた雰囲気で、まるで旧知の仲みたいだ。


「最近、手を繋いでも怒らなくなったんですよ。もう、かわいくてかわいくて」


魔王、何の報告してるんだよ。


「まぁまぁ、あの子は昔からかわいかったんですよ。

 大事にしてたうさぎのぬいぐるみを、どこかに忘れてきちゃったことがあってね」


母さん、なに話してんの!?


「子どもはよく、どこかに置き忘れてしまうものですからな」


いやいや、なんでそこで相槌打つんですか魔王殿下!?


「その時、『もう、あのうさぎさんと会えないの?』って大泣きしちゃって」

「微笑ましいな。目に浮かぶ」


……やめてくれ、勝手に想像しないで。


「あら、魔王様。お茶のおかわりいかがです?」

「ありがたい。いただこう」

「いつも鳩さんもいろいろ届けてくださって、助かってますのよ」

「ふっ、あやつらはよく働くからな」


あの鳩、いつの間に家族公認になってるんだ!?


「て言うか、母さん、なに昔の恥ずかしいこと話してるんだよ!」

「あら、かわいい昔話じゃないの」


「この前のうさぎのぬいぐるみは気に入ってくれてるか?」

「え? なになに? 魔王様からうさぎのぬいぐるみ貰ったの?」

「実は、鳩から報告を受けたのでな。

 “アルバムの中の勇者がかわいかった”と聞いて、似たようなうさぎのぬいぐるみを贈ったのだ」


俺の知らないところで何の報告が行われてるんだ……。


「……あれか。 まぁ……ベッドに飾ってあるけど」


鳩:クル〜(記録:勇者、完全に母と魔王の会話についていけず)


***


「ところで、そろそろ良いか」

「……は?」

「母君にもぜひ魔界の温泉を堪能してもらいたくてな」


魔王がひらひらと説明書を振る。


「はい? 温泉?」

「そうだ。簡単温泉設置キット“いつでもどこでも魔界温泉・いい湯だな”をポンっと庭に投げておいたのだ」

「え? 投げる!?」


(ゴゴゴゴゴ……)


「……な、なんか庭の方から音してない!?」

「あら、温泉でも湧いたのかしら」

「ふむ、良い湯加減だ。うまくできたようだな」

「は!? やっぱりお前の仕業かぁぁぁ!!!」


 ♬ BGM: Fire / Scooter(冒頭 “FIIIRE!!!” シャウト入り)


(黒い湯気とともに爆発音。庭の地面が赤黒く光り、温泉がドォォンと湧き上がる)


「ちょ、ちょっと!? 火柱上がってない!?」

「まぁまぁ、いい湯気ねぇ〜。夜には綺麗に見えそうだわ」

「ふっ、成功だ」

「どこが!? 何が!? 誰が!?」


庭の木々が黒く染まり、奇妙な花が咲き始める。


「なにこれ!? 庭の草まで黒いぞ!?」

「あらあら、素敵ねぇ。この色合い、アレンジメントに使えそうだわ」


……母さん!? なにその反応。


「この子は何をびっくりしてるのかしら。母さんのお仕事、フラワーアレンジメントの先生よ?」

「そうだぞ。今、魔界で大人気なんだぞ。

 ちなみに、あの温泉は本物の魔界と繋げておいた。いわば“ミニ魔界”だ」


……サラッと何言ってんの!? この家もう帰れなくならない!?


気づけば、母も魔王もすっかり意気投合している。

リビングどころか、もうこの家ぜんぶ魔界に飲み込まれてる気がする。


鳩:クル〜(記録:実家、魔界支部どころかフランチャイズ化)


(庭の上を鳩たちが飛び交う)


「……っていうか、さっきから鳩、多くない?」

「ん? まぁ、鳩はどこにでもいるしな。あまり気にしない方がいいぞ」

「いや、でも今の鳩……カメラ構えてなかった?」

「気のせいだろう」


鳩:クル(記録:任務継続中)





【あとがき:王妃の執務室にて】


「鳩さん、最近はお届け物をするたびに、

 勇者さんのお母上からアルバムを見せてもらっているみたいですのよ。

 ほんと、かわいくて……魔王殿下がメロメロになるのも分かりましてよ」


(紅茶を口にしながら、微笑む王妃)


「ふふ……それに実家も無事、魔界と繋がりましてよ。

 これで勇者さんも、より自然に魔王殿下との距離を縮められるはず」


「……それにしても、“魔界温泉キット・いい湯だな”シリーズ、思ったより売れておりますのね。

 次は“お風呂で読める薄い本”でも出してみようかしら?」


鳩:クル〜(記録:王妃、愛と商才で世界を回す)




──次回、『勇者、魔王の趣味にドン引く…』


魔王の執務室を訪れた勇者。

そこで目にした“ある光景”に、言葉を失う——。


「……殿下、これ、いったい……」

「ふっ、これは余の——趣味だ」

「いやいやいや、趣味ってレベルじゃ……!?」


勇者、ついに知る。

魔王の“愛”は、想像のさらに斜め上だった。


鳩:クル〜(記録:勇者、心のHPゼロ)

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