第六話 偽グッズ現る!クオリティ高すぎるだろ!
どうして今日も、手を繋いで魔王と城下を歩いているんだ——。
きっかけは、またしても王妃からの伝書鳩。
『魔王殿下の視察に同行せよ』
の一文だけが添えられていた。
……いや、嫌な予感しかしないんですけど。
だが、気づけばこうして二人並んで歩いている。
まるで“デート”だ。いや、視察ですから!
***
「勇者、見ろ。これなどよくできておるぞ」
魔王が手にしていたのは、妙に薄い冊子だった。
表紙には、どう見ても俺と魔王の姿が——。
「よくできてるな……」
「感心してる場合じゃないですって! これ、内容まで描いてある!?」
ペラ……。
「……え? こんなことまでしても大丈夫なのか?」
「ダメですッ!!」
そう言って慌てて取り上げ、背中に隠す。
……ていうか、召喚されてまだ六日目だぞ!?
どこの職人がこの速度で原稿上げたんだよ!
鳩:クル〜(職人たち、睡眠を捧げて推し活中)
***
「なぁ、勇者。この店、なんだか賑わっているな」
「“魔勇フェア”……? え、俺たちのことじゃないですよね?」
看板には「魔王×勇者フェア開催中!」の文字。
店先に並ぶのは、カップルを模したぬいぐるみや、見覚えのある衣装のアクスタ。
「見よ、勇者。アクリルスタンド、キーホルダー、ブロマイド……」
「え?全部俺!? いや、殿下のもあるけど!」
「よくできているな……これは公式か?」
「違います!非公式です! っていうか、勝手に作っていいんですか!?」
「だが、クオリティが高い。職人の魂を感じるぞ」
「そういう問題じゃないって言ってるんですけど!?」
鳩:クル〜(職人魂、方向性が迷子)
***
「ちょっと休憩でもするか」
そう言って入ったのは、こぢんまりとしたティールーム。
テーブルに置かれたのは、まさかの——
勇者プリントクッキーと魔王ブレンドティー。
「……これ、完全に俺たちですよね!?」
「うむ。なかなかの出来だ」
「出来の問題じゃないですって!」
***
魔王が足を止め、ショーウィンドウを指さした。
そこには、二人が身につけているものとまったく同じデザインの指輪が並んでいる。
「……これ、どう見ても俺たちのですよね?」
「うむ。余が贈ったものとそっくりだな。……だが、よく見ると——ここ、違うぞ」
まじまじと並んだ指輪を見比べる魔王。その真剣な横顔が妙にずるい。
「ふむ。だが、造りは悪くない。むしろ職人の愛を感じるぞ。
それに——こっちの色のほうが、お前によく似合う」
満面の笑みでそういうこと言うの……ズルい。
「いやいや、そういう問題じゃないですって! これ、完全に偽物ですよ!? ……クオリティ高すぎですけど!」
「……おや、顔が赤いぞ。湯あたりか?」
「違いますっ! って、雰囲気で流さないでください! 情報流出してるんですよ!?」
魔王は腕を組み、少し考える素振りを見せた。
「ふむ……あぁ、推察するに——たぶん王妃の仕業だろうな」
「軽っ!!」
鳩:クル〜(記録:魔王、推察能力は高いが危機感ゼロ)
***
「……で、その両手に下げた大量の紙袋、なんですか?」
「うむ、余の戦利品だ」
「え? こっちは……薄い本!? え、こっちはグッズ!?」
「当然だ。余のコレクションは完璧でなくてはならん」
鳩:クル〜(記録:魔王、もはや公式超え)
【あとがき:王妃の執務室にて】
目の前には、勇者と魔王がプリントされたホールケーキとアクスタ。
手元には、今話題の“薄い本”。
紅茶を片手に、王妃はご機嫌でページをめくっていた。
王:「王妃……その本は? やけに薄いな」
王妃:「まぁ陛下ったら、ご存じないのですか? 今、城下で大流行しております“薄い本”ですのよ」
王:「……研究書か何かか?」
王妃:「うふふ。まぁ、似たようなものですわね。人の“愛”を研究する……そんな本ですの」
(勇者プリントのケーキをフォークでブスッ)
王妃:「それにしてもこのケーキ、美味しいですわ。少し顔が甘すぎますけれど」
鳩:クル(記録:王妃、公式グッズをフル装備)
──次回、『魔王、勇者の実家を魔界化する?』
久々の休暇で帰省した勇者。
のはずが——
魔王が持参した“アレ”を庭に設置した結果、
実家がまるごと魔界と化した!?
「いや、庭だから!ここ俺の実家の庭だからー!!」
母、息子の恋人に興味津々。
鳩、なぜかちゃっかり同席。
鳩:クル〜(鳩通信:王妃、なにやら“特許”を申請中)




