第四話 実は全て裏で繋がっていた?
王城のサンルーム。
昼下がりの陽光が磨き上げられた白い床にやわらかく反射している。
金縁のティーカップからは、甘く深い香りが立ちのぼっていた。
「それにしても、今日の紅茶は……やけに香りが良いな」
カップを傾けた王が、満足げに頷く。
「あら、陛下、お分かりになりまして? その茶葉は魔王殿下からのお土産ですのよ」
「ま、魔王殿下から!?」
「ええ。あの方、意外と香りにこだわりをお持ちでしてよ。
このブレンド、魔界では大人気だそうですわ」
「……そもそも、なぜ魔王殿下からお土産を?」
「まぁ、あらためて聞かれると説明が必要ですわね」
王妃は紅茶をひと口飲み、涼しげに笑った。
***
「陛下、勇者召喚のことは覚えていらして?」
「もちろんだ。勇者を呼び出すはずが、なぜか魔王まで出てきて大騒ぎになったあの一件を忘れられるものか」
「それなら話は早いですわ。あの召喚——実は、魔王殿下からのご提案でしたのよ」
「……は?」
「“余の恋人を召喚してくれたら、人魔戦争を終わりにしてやる”と。
陣は自動的に“魔王殿下に最も相応しい存在”を召喚するようになっていたそうですの」
「お、おい待て、それってつまり——」
「ええ。召喚陣が選んだのは、今の勇者様というわけですわ」
「…………軽っ!」
***
「陛下、召喚陣から魔王殿下が出てこられたとき、驚かれたでしょう?」
「そりゃあ驚いたとも!」
「その後、あの方からすぐにお手紙が届きましてね。“うまくいった”と一言だけ」
「……“うまくいった”!?」
「結果的に、戦争は終わりましたし。陛下、良いことづくめではなくて?」
「……まぁ、確かに平和にはなったが……納得していいものか……」
***
王が頭を抱える横で、王妃は穏やかにカップを置く。
その視線の先、ベランダの手すりには一羽の黒い鳩がとまっていた。
「この子、覚えていらして? 数年前、羽を痛めて私の部屋に迷い込んできた鳩ですの。
放っておけなくて手当をして差し上げたのですけれど、後にわかりましたの。
この子、“魔界鳩”だったのですわ」
「……魔界鳩?」
「ええ。魔王殿下が飼っておられた唯一の使い鳥。
あのときは人の言葉で“ありがとう”と申されましたのよ」
「鳩がしゃべるのか!?」
「そうですの。それが縁で魔王殿下と文通を始めまして、今でも時々お茶を贈ってくださるのですわ」
「……つまり、魔界との国交は鳩経由で始まったということか?」
「あら、言われてみればそうなりますわね。
この子が全ての始まりだったのかもしれませんわ」
(鳩:クル……ま、俺が世界平和の立役者ってわけだな)
【あとがき:王妃の執務室にて】
王妃:「最近、鳩さんたちが少しふっくらしてきた気がいたしましてね。
他で摘み食いしていないかを尋ねてみましたの」
王:「……尋ねてみた? 誰にだ?」
王妃:「鳩さんたちに決まっておりますわ。言葉が通じますもの」
王:「は!? 鳩と会話できるのか!?」
王妃:「あら、そんな些細なことはどうでもよろしくてよ。
それよりも……魔界で餌付けされているみたいでしたわ」
王:「……ちょっと待て、何を言ってるのか全然わからん……」
(鳩:クル〜……魔界の餌もなかなか美味いんだよな)
次回──『ドッキリ!うふふ♡魔界温泉旅行』
王妃の「たまには羽を伸ばしてきなさいな」という一言で始まった温泉旅行。
だがその裏には……とんでもない仕掛けが!?
(鳩:クル〜……湯加減、異世界基準です)




