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短編エピソード18『信吾の好き嫌い克服作戦・ファイナル』

短編エピソード18『信吾の好き嫌い克服作戦・ファイナル』


「美沙さん……これで決める」


 夕食の支度中、美沙はキッチンで首をかしげた。

「またその顔。今度は何を思いついたの?」


「トマトソースパスタだ。これがダメなら……もう一生トマトと和解はできない」


 ダイニングテーブルでは、ゴンちゃんが姿勢よくお座りしている。

まるで「最終決戦の審判」を務めるかのように、目をまんまるにしていた。



 オリーブオイルでにんにくを炒め、玉ねぎを加える。

 刻んだトマトが投入されると、湯気とともに赤い香りが立ち上った。

「……おのれ、来たな」

 信吾は眉間にしわを寄せる。

「集中して!」と美沙が笑いながらパスタをゆでる。


 ソースが煮詰まり、塩とバジルで仕上げられると、皿の上に赤いパスタが完成した。



「いただきます」

 信吾はフォークで麺を巻き、慎重に口へ運んだ。


 一口、二口……。

「……うん?」

 意外そうな表情。


「どう?」美沙が身を乗り出す。

「……いける。トマトが、他の旨味とちゃんと仲良くしてる」

 感慨深げにつぶやく信吾。


 ゴンちゃんが「きゅるっ」と声を上げ、しっぽをぱたぱた。

立会人の判定は――どうやら合格らしい。


 三口、四口。気づけば皿はほとんど空になっていた。

信吾はフォークを置き、深く息を吐く。


「……勝ったな」


「ほんと? もうトマト嫌いって言わない?」

「……いや、好きとまでは言えない。でも、戦える相手にはなった」


 ゴンちゃんが満足そうにテーブルにあごをのせる。

その姿を見て、美沙はくすりと笑った。


「つまり、和解成立ね」

「……まあ、停戦協定ってところだ」


 その夜、信吾の長き戦い――『トマト討伐計画』は、ゴンちゃんの立会いのもと、静かに幕を閉じた。



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