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短編エピソード15『信吾の好き嫌い克服作戦・アゲイン』

短編エピソード15『信吾の好き嫌い克服作戦・アゲイン』


「美沙さん……今日こそ、勝つ」


 朝食の準備をしていた美沙が振り返ると、信吾はテーブルに両肘をつき、やたらと真剣な顔をしていた。


「また? 今度は何で挑戦するつもり?」


「今日はトマトスープだ。昨日の夜、敗北のあと布団の中で考えたんだ。スープにすれば、やつ(トマト)の存在感を薄められる」


「やつって……野菜相手に何言ってるの」


 その横で、ゴンちゃんがカウンター越しにこちらをじっと見ている。

 尻尾が小刻みに揺れているのは、間違いなく「観戦モード」だ。



 鍋にオリーブオイルを熱し、玉ねぎとにんにくを炒める。

 そこにざく切りのトマトが投入され、じゅわっと赤い香りが広がった。


「……この時点で、すでに敗北の匂いがする」


「弱気になるなって」


 美沙がスープを煮込みながら、鶏肉と野菜を加えて味を整える。

 完成したのは、見るからに美味しそうなトマトスープだった。



「では、いただきます」


 信吾はスプーンを手に、そっとひと口すする。


「……あれ?」


 眉がぴくりと動いた。


「美沙さん……これ、いけるかもしれない」


「ほんと?」


「うん、鶏肉と野菜の旨味が勝ってる。トマトは……おとなしくしてる」


 その言葉に、ゴンちゃんが小さく「きゅっ」と鳴いた。

 何かが始まる予感――。


 信吾は勢いづき、もうひと口。さらにもうひと口。

 だが、三口目を飲み込んだ瞬間、表情が変わった。


「……やっぱり、最後にトマトが牙をむいた」


「そんなホラーな言い方しなくても」


 美沙が笑う横で、ゴンちゃんはスープの香りに鼻をひくつかせている。

 信吾が「飲むか?」と差し出すと、ぺろりと舐めて満足そうにしっぽを振った。


「……ゴンちゃん、完全勝利だな」


「次はどうするの?」


「……まだだ。次はトマトをソースにしてパスタで挑戦する」


「終わりが見えないね」


 その朝、信吾は静かに「トマト討伐計画・第四章」の開幕を宣言した。



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